第186話:分身分身

「ん……ふぁ……ぁん」


 身体能力強化のせいなのか、最近結構スタミナが増えた。

 そのせいで疲れることもなく、エナジー・チャージの機会もめっきり減ったな。

 福岡02の攻略後……初めてじゃないのか?


 久々なのもあって、どのくらいの吸引力でいいのか忘れてしまった。

 加減してすこーしずつ吸おう。


 そう。

 ゆっくり

 時間をかけて

 セリスの首に吸い付く。


「んぁっ……」


 セリスが俺の頭と、そして背中に手をまわして抱え込む。


 くっ。こ、この体勢……お、落ち着け俺。理性を保て!

 疲れているから元気を分けて貰っているだけだ。それだけだ!


『リア充、爆ぜるにゃか?』

「ぶふぉっ!?」

「きゃっ」


 突然、塀の上から虎鉄の声が。

 

 俺とほぼ同じ目線の高さにいた虎鉄が、首を傾げてこちらを見ていた。


「それも翔太か?」

『にゃぁ~』


 にっこり笑う虎鉄。悪びれた様子はない。寧ろあまり意味は分かってないんだろう。

 虎鉄的には構って貰っている──の延長だ。


 くそぉ。翔太めぇ。

 おかげで正気を保てたよ……。


「あ、ありがとうセリス。じゃあ行こうか」

「あ、はい。こ、虎鉄も行くばい」

『んにゃぁ~』


 塀からジャンプして俺の肩に乗る虎鉄。

 最近成長したのか、ちょっと重くなったな。


 気を取り直して再出発。ビーム・ウェポンは分身に任せて、俺はスキル量産に専念した。

 その結果──


「"分身"」

『"ビーム・ウェポン"×11』

「……」

『……あ×11』


 ついに、分身の人数が増えてしまった。


「あ、浅蔵さん100人計画は生きとったばい!」


 なにその恐ろしい計画!?






「ぶわっはっはっは。あ、浅蔵……ふ、ふえ、増えたっ」

「笑うな芳樹!」

『おい翔太。お前、虎鉄に変なこと拭き込むのやめろっ』

『無垢な虎鉄を穢すなっ』

「ひぃー、11人で僕を囲まないでよぉ」


 止めると誓うまで囲ってやる。


 福岡01から帰宅すると、02に芳樹たちが来ていた。

 検証パーティーの結果が出るまでは待機だが、体が鈍るのでせっかくだから畑仕事を手伝いに来たと言っている。

 ここだと風呂もあるし、泊まる場所だってある。


「言っとくが、うちには泊めないからな」

「分かってるさ。泊めてくれると言っても、泊まらない。ベッドも布団も足りないだろ」

「その通り」

「浅蔵先輩。今の分身レベルっていくつなんですか?」


 木下に尋ねられ「13だ」と答える。

 11、12では分身能力の拡張だったから、そっち方面で強化されるかと思ったのに。


『まさかまた人数が増えるとは思わなかった』

『俺もだ』

『いや、お前は俺なんだから、俺がそう思っていたらお前もそうだろ』

「浅蔵、なんか混乱するから消してくれねーか?」

「俺も今そう思った」


 分身は解除。


「でも人数が増えるなら、最下層裏ステージのボス討伐も楽になってきますよね」

「上田さんのスキルで甲斐斗の火力も倍増するしな」

「ん? 甲斐斗の火力倍増?」


 あぁ、芳樹たちは上田さんの新しいスキルのことを知らないのか。

『追撃』スキルのことを話すついでも、俺のコピースキルについでも説明しておいた。


「浅蔵。お前の進む方向性がよく分からなくなってきてるな」

「鞭の攻撃力を底上げできるスキルが欲しいんだけどなぁ」

「鞭は捨てないんだね」

「当たり前だろ翔太」

「追撃は確かに甲斐斗先輩専用みたいなものですね。ただでさえ高火力だし。でも──」


 木下が俺を見る。


「浅蔵先輩のスキルで『追撃』をコピーして、上田さんと浅蔵先輩のダブル『追撃』とか、出来るんですかね?」


 え、何それ。


 面白そう。

 


*****************

夜20時頃にもう1話更新しましす。

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