第185話:久々の
『にゃー、まずは裏面に行く条件を、検証するのかにゃ?』
「そうだ。パーティーAとBで挑み、Aが全力で戦う。ボスが弱ってきたら、止めはBで刺す」
「この場合、どっちのパーティーが裏に行くかやね」
福岡02の時は、たぶんダメージ貢献度も止めも、俺たちのパーティーでやったんだ。
裏ステージのリベンジは2回まで可能で、トータルで3回挑めることになる。
今回は検証を兼ねているが、もしクリアできそうなら裏も──とはなった。
「だがやはり3回と上限が設けられている以上、万全の態勢で挑んで確実に裏ボスを倒す必要もある」
「甲斐斗の言う通りだ。大戸島会長は、パーティー上限のメンバーを揃えつつ、更に分身で補強できる俺を組み込みたいみたいだけどな」
俺ありきでこの先のダンジョン攻略は考えないで欲しいんだけどなぁ。
このままだと、全国のダンジョン巡りをやらされそうで怖い。
「それで、私たちはどうすると?」
「ん。検証パーティーがそのまま裏もクリアできるならそれでよし。出来ない場合は裏フィールドの特徴や、ボスを見つけたらそれの観察もして貰って──」
時間制限いっぱいになったら出てくるだろう。
その時には表の最下層ボスが再登場するのを待つことになる。
だいたい数日は掛かるはずだ。
「だから福岡01の地図作成を進める!」
「あ、やっぱりそうなるんやね」
福岡01ダンジョンは33階までクリアした。
「もう少しで40階だな。その先の地図はあったりするのか?」
「一番深く潜っている冒険家パーティーでも42階だな。41階までは比較的正確な地図だが、42階は現在進行形で攻略している階だ。逃げながら描く地図に、信憑性があると思うか?」
と甲斐斗に問われ、ないわなと答えるしかない。
しかも図鑑持ちの俺が攻略に乗り出したとしって、下層攻略をしていた上位パーティーが地図が出来るのを待って攻略をストップしているらしい。
俺も楽したかったんだけどなぁ。
愚痴りつつ34階へ。
前回チラ見したが、ここは福岡02の地下19階と似たような街並み風景が広がる。
「あぁ、ここもパターン化した家が並んでいるだけなんだな」
「しかも5パターンしかない。外壁も屋根の色も同じだぞ」
「でもこういうのって、ある意味統一感があって街並みとしては整ってますよね」
「俺もそう思っていたところだ佳奈さん」
嘘つけ!
『リア充爆ぜるにゃ』
そうだっ!
「ごほんっ。い、行くぞ」
「そ、そうですね」
甲斐斗と上田さんがしれーっと歩き出す。
が、すぐに止まった。
「時籐は聖属性を付与した方が良い」
と指示を出す。
セリスが首を傾げたが、直ぐに言葉の意味を理解した。
「ここの階層の敵もゾンビかよ」
「あぁ。全てゾンビ系だ。だが福岡02のアレと一緒にしない方が良い。もっとエグいぞ」
前方からやってくるのはゾンビ一行。
ただ見た目はいたって普通で、ぼろぼろの白いシャツ、ジーパンと、全部同じ格好。顔も同じだ。
と思ったが、ちょっとだけ大きい奴がいるな。
「大きいのはグールだ。毒をまき散らすし、パワーもゾンビの倍以上ある。気を付けろ」
「オケ。じゃあ久々にこれを使うかあ、まずは"分身"っと」
『よーっし。"ビーム・ウェポン"だ!』
分身たちの鞭がバチチっと発光する。
みんなの前に出て、ゾンビ軍団に向かってソレを振るった。
『お゛……ぁ』
『ぐぉ……あ゛』
ジュワッ、ジュワッと音を立ててゾンビが真っ二つになっていく。
おぇっ。ちょっと気持ち悪い。
そして相変わらず痛覚がないせいか、ぶった切っても反応が鈍い。
「……じゃあ浅蔵軍団を前後にしてサクっと行くか」
「私、エンチャントいらなさそう?」
「時籐、すまなかった」
「あ、いいんです。甲斐斗さんが誤らなくても」
え、じゃあ俺が悪いの?
その後、戦闘の度にビーム・ウェポンを使い、分身も頻繁に取り換え進んだ。
「あ、乱発しすぎてちょっと疲れてきた」
「馬鹿だな。なら吸え」
「は?」
甲斐斗がちょっと不気味なことを口走った。
いや、甲斐斗はセリスを指さしている。
吸え……はっ!?
「え、あ……」
「……き、休憩すれば平気だから」
「い、いいばい。浅蔵さんのサポートのおかげで、こっちは全然疲れてないし」
「え、そう? あ……その、じゃあ……」
「さっさとそこの塀の陰で吸ってこい」
ぐっ。甲斐斗の奴……GJだ!
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