第180話:コピー忍〇
「きゃあぁぁっ」
「か、佳奈さんっ。ぐうぅっ」
「あ、頭が割れるように痛いっ」
『あにゃにゃにゃにゃあっ』
『キチチチチチチチチチチチッ』
俺たちを──いや、俺以外のメンバーを苦しめているのは、25階層のボスだ。
コウモリの姿をしたそいつは、超音波ならぬ怪音波で攻撃してくる。
とにかく耳障りで、頭が痛くなる音だ。
そう思っていたのも最初の内だけ。
音に
それは分身たちも同じこと。
『あぁーっ、うるさい!』
『キンキンするだろうっ』
ひとまず全員をコウモリから遠ざけて、それから戦闘開始だ!
とはいえ、相手は25階層のボス。
対する俺たちのレベルは55だ。
怪音波で行動不能にさせて、その間に獲物を捕食──ってことなんだろうけど。
順応力で音にも慣れてしまえば、なんてことはない。
ものの数分でコウモリを倒してしまうと、
【大分02ダンジョン25階層ボスモンスターを討伐したよ】
【討伐完了ボーナスとして『コピー』スキルを獲得したよ】
というアナウンスが頭の中で流れた。
……今度はなんのコピーだよ!
「スキルの……コピー?」
『うにゃ。他者がスキルを発動中、それを目視して「コピー」と唱えることで、そのスキルを完全コピーすることが可能。にゃ』
「凄いスキルですよ浅蔵さんっ」
「そうだな。使いどころの難しいビーム兵器より、そっちのほうが火力として安全性も高いだろう」
ビームのことは言わないで。
あのスキル。パーティーを組んでる限り使えないんじゃないかとすら思える。
しかしスキルのコピーか。
ますます忍者っぽくなってきたな。
さっそく効果のほどを試すべく、甲斐斗に『サンダー』を使って貰った。
「"サンダー"」
単体攻撃のこのスキルを、甲斐斗は左右の手で同時に二つ発動させる。
つまり二回攻撃みたいなものだ。
パチパチと鳴る電気の塊みたいなそれを見つめ──
「"コピー"」
すると俺の両手にも、甲斐斗と同じ電気の塊が出現した。
「おお! す、すげ──なんだこの数字?」
と言った瞬間、雷が消えた。
だけど甲斐斗の雷はそのままだ。何故俺だけ?
「浅蔵は魔力が低かったな?」
「あぁ。甲斐斗はどうなんだ?」
「俺の魔力はB+だ」
うわっ。たっけーなやっぱり。
「魔力が低いと、持続力がないと?」
「そうだと思う」
「いや……たぶん違う」
甲斐斗のスキルをコピーした時、視界にタイマーみたいな数字が浮かんでいた。
一瞬だったが、『00:01』ぐらいだったかな?
いや、気づいたのがそのタイミングだから、もうちょっと長いはずだ。
で、『00:00』になったら雷は消えた。
「これ、時間制限付きだ。しかもめちゃくちゃ短い」
「短い? どのくらいだ」
「分からない。もう一回使ってみる。"コピー"」
……何も起きない。
『一回ぽっきりかにゃ?』
「うえ、マジかよ……甲斐斗ぉ」
「……"サンダー"」
「"コピー"」
出来た。
どうやら消耗品みたいなものだな。
うぅん、制限が厳しいなぁ。
その後もいくつか検証をして分かったのは。
「制限時間は3秒。誰かがスキルを使っている最中にそれを見て『コピー』しなきゃならない。コピーの瞬間から発動。そして一度切り……かぁ」
「浅蔵、前言撤回だ。使い勝手が悪い」
「くそぉーっ! もっとシンプルで安全な攻撃スキルはないのかよっ!!」
------------------------------------
*本日20時にもう1話更新します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます