第159話

 捕らわれのダンジョン人の称号が消えてどうなったのか──



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浅蔵 豊  23歳

 レベル:54

 筋力:C+  肉体:C-  敏捷:C

 魔力:F  幸運:C+

【スキル】

 感知20  順応力15  ダンジョン図鑑24

 サポート11  エナジーチャージ5  分身10

 武器改造5  ビーム・ウェポン2  相殺2

 身体能力強化2 



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 ただ称号が消えただけ。

 はぁ、それにしても50階の表裏のボス倒して、レベルがかなり上がったな。

 50階でステータス見た時はレベル48だったが、それから6も増えているんだ。

 40階超えてからレベルの上りも悪くなっていたはずだが、ボス2体と雑魚でこんだけって……。

 絶対ボスの経験値だろ。


『にゃーにゃー。あさくにゃ、邪魔にゃ』

「うぉ。お、お前、人を邪魔扱いしやがって」


 地下一階のステータス板に手を触れ、確認をしていた俺を押しのけようとする虎鉄。

 夜も11時を過ぎれば、大人気ステータス板も閑散としてくる。その時間を狙ってここに来た。


 俺はまだ、ここに住んでいる。

 普通に居心地がいいから。

 ここなら家を出れば誰かしら、その辺をうろうろしているし、朝は畑仕事の手伝いもある。

 ご近所さんと毎日お喋りもできるし、化け野菜の面倒もあってなかなか忙しい。


 要はひとり暮らしでも寂しくないってことなんだよチクショー!


 先日、セリスの家にお邪魔したけれど、なんか緊張しまくって何をご馳走になったのかもよく覚えていない。

 なんせあちらのご両親が、二言目には「娘をよろしくね」「娘はどこへも嫁にイカセーンッ。言ってみたかったデス」だもんなぁ。

 なんで俺は時籐家夫婦のコントを見せられていたのか。


『あさくにゃー。あっしレベル上がったにょ』

「あぁ、お前も上がった──はぁ!?」



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 虎鉄 ケットシー  0歳

 レベル:30

 筋力:D-  肉体:E  敏捷:B+

 魔力:C+  幸運:A

【スキル】

 奥義・爪磨ぎスラッシュ10  シュババ7  鑑定2

 毛づくろい2  奥義・スペシャル爪磨ぎスラッシュ1

 タイム・ストップ1  肉球1



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 こ、虎鉄のレベルの上がり方……エゲつない。

 50階に下りた時のレベルは16だったが、今見たら30だと。14も上がってるって……。


「なぁ虎鉄……お前のこの新しいスキルって、効果はなんなんだ?」

『うにゃ? 鑑定するにゃか?』

「いや、ステータス板触ってんだから、スキル欄触れよ」

『にゃー』

 


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【肉球】

 肉球に触れた者の心身を癒す。

 混乱・失神・呪いの解除可能。


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 ま・た・か。

 いやお前、良いスキル貰いすぎだろ?


「これ、レベル30になって貰ったスキルか?」

『にゃ~』


 ボスを倒してもスキルを貰えて、レベル10の倍数でスキルを貰えて、レベル上がるとポイント貰えてそれ貯めてもスキル貰えて。

 貰いすぎじゃないか!


 そう思いつつ……俺はいったい何をしているのか。


 ぷにぷにぷにと、虎鉄の肉球を触って癒されていた。






 福岡02ダンジョンを攻略して二週間が過ぎたある日。


「浅蔵さぁーん。温泉行きましょうよぉ~」

「お、大分行きませんか?」


 旅行鞄を持ったセリスと大戸島さんがやってきた。

 二人がここに来るのは、ダンジョンを攻略したあの日以来だ。


「はぁ、もうやぁーっと終わりましたよぉ」

「終わった?」

「いろんな手続きですぅ。学校関係ですけどね」

「在学していたのかい?」

「パパもママもそうしろって。いつか出られたら、もう一度3年生すればいいじゃないかってぇ」

「私は退学していましたけど、学校の友達とかといろいろ会ったりしてて。なかなか帰ってこれんかったんばい」


 大戸島さんは少し不貞腐れた感じに、セリスは苦笑いでそう話した。


「春から3年生やるのかい?」


 大戸島さんにそう尋ねると、彼女は大きく首を振る。

 高校にはもう行かず、調理師免許を取るための専門学校へ行くそうだ。

 今までは「外に出れないから」ということで免責されていた面もある、彼女の食堂。

 だが外に出られるようになっては話は別。


「でも誰も文句言わないだろう?」

「来ますよ~。2階の露店屋さんとかから」

「あー……なるほど」


 だから文句を言われないために、調理師免許を取るのだと言う。


「もともと高校を出たら調理系の学校に行くつもりでしたからぁ」

「そういえば、ここの食堂を続けるのかい?」

「はい! だって初期投資ゼロなんですよ!!」

「地上にお店出したいって言ったら、絶対瑠璃のおじいさまが立派なお店建ててくれると思うけどね」


 俺も同感だ。

 しかも大衆食堂とは思えない、高級レストランが建つだろうな。

 メニューはにくじゃがとか唐揚げ定食なんだぜ。


「それでね浅蔵さん。瑠璃のその学校が4月の7日から始まるんたい」

「あと3週間ぐらいしかゆっくりできないんですぅ」

「いや、3週間なんじゃ」

「とにかくぅ。約束してたでしょ~」


 約束──三人で大分の温泉に行こうっていう約束か。


「浅蔵さん、運転免許の申請は?」

「あぁ。再発行は可能だからね。でもこっちも手続きがいろいろあったよ」


 まず──死亡届を無効にする手続きだ。

 お役所仕事なもんで、去年、生存が確認されても、俺自身が手続きに来なきゃ認められないって。

 会長の圧もあって、保留状態にまではされていて、今回正式に手続きを終わらせた。

 

 実は俺、書類上では生死不明になっていたんだぜ。

 たぶんこれはセリスや大戸島さんも同じだっただろう。


 それから今度は住所だ。住所が無ければ免許証の再発行もさせて貰えず。

 住所の獲得はここに住む他の人に聞きながら市役所に書類を提出。


 あっち行ったりこっち行ったりと、結構忙しかった。


 最後に免許センターに行って、その日のうちに再発行も完了。


 部屋に置いてある財布を取りに行って、再発行された免許証を彼女らへと見せる。


「有効期限。今年じゃないですか?」

「そうなんだ。6月生まれだからさ、再発行して貰ったけど約二カ月後にはお別れする免許証です」


 そういえば。今回地下に落ちたのは事故になるんだろうか。

 無事故無違反でゴールドになるハズなんだよなぁ。

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