第150話

「省吾の盾、大丈夫か?」

「……わ、分からん」


 頑丈にすればあの光弾に耐えれるのか?

 なら検証すればいい。


「セリスッ。アクリルシールドを出してくれ!」

「あれで防ぐって言うと? 無理ばいっ」

「いいからっ。分身で検証するんだ。アクリルシールド何枚か重ねて、それでもダメかどうかっ」

「そ、そういうことなら分かったばい」


 ささっと広げたポケットからアクリルシールドを取り出したセリス。

 それを受け取って急いで分身を使う。


『っしゃーっ! 行くぞ』

『重ねろ重ねろっ』


 10人の俺が持つアクリルシールドで、合計10枚。

 これを重ねて厚さ30センチにし、地面に突き立てるようにして分身が構えた。

 何人かが竜神を撹乱させる。


 カパっと口を開く動作が見えたら──


『こっちだ!』


 誘導して、盾の前に全員集合。

 どうせなら回避可能かどうかも検証しておきたい。そう思って分身したからだろう。


『カッ──』


 放たれる光弾。

 横に避けようとしたが、距離が近すぎたようで全員消滅。

 一直線に飛んでアクリルシールドに直撃すると、分身が後ろに吹っ飛んだ!?


 地面をごろごろ転がる分身。


「おいっ」

『ぐ……衝撃、が……骨……やられ……』


 そこまで言うと、分身は白煙を上げて消えた。

 アクリルシールド10枚なら蒸発は防げた。

 だが衝撃で全身骨折は免れない。


「浅蔵の図鑑ならいけるんじゃないか?」

「構えてるところに飛んで来てくれたらな。けど……」


 回避の検証をしようとした分身は、まったく反応できずに消滅した。

 距離が近かったからだ。

 光弾がアクリルシールドに当たるよう誘導したし、構えていたところに飛んできたわけだ。

 それなら図鑑で確実に防げる。


 だがそうなると、60秒ごとに図鑑を構えていなきゃならない。

 俺の所に飛んでくるならいい。

 そうじゃなかったら……可能性としては省吾だ。

 省吾が耐えれることを考えなきゃならない。


「くそっ。木村が持ってたシールド……あれがあれば」

「木村? あぁ、黒曜石の盾か……それだ!!」


 黒曜石の盾──図鑑に載ってるんだから、コピーすればいい!

 超劣化じゃなく、ここは劣化版でコピーだ。


 問題は所持者が限定される装備かどうか。

 一応検証しなきゃならないしな。


 まぁいい。もし限定装備だとしても、またコピーすればいい。

 出し惜しみをするな!


 ポチポチと図鑑を操作し、出てきたのは実際に見せて貰った盾よりも小さい。

 小さいが、元が150センチぐらいだったからな。劣化は性能がオリジナルの半分ってのを考えると、大きさも半分なのか?

 だとしたら75センチ。うん、そのぐらいの長さだと思う。


「"分身"の術! 今から黒曜石の盾の劣化版で試す!」

「なるほど。お前の図鑑のコピー機能か!」


 装備してみて分かった。

 これ、限定装備だ。

 問題ない。消費ポイントは1万。余裕余裕。


『性能はどうなんだよ?』

「虎鉄。鑑定できるか?」

『にゃっ──衝撃を半分吸収するにゃ。光を反射させるにゃ』

「半分でもいいっ」

『おし、行くぞ!』

『あれ? 光反射って……竜神の攻撃って──』

「「「あ」」」


 全員が分身その1に視線を集中させる。

 言った本人はハッとなって竜神へと向かった。


『こいやーっ!』






「"ガード・ボディ"!」


 いつの間にかまた防御系スキルを手に入れている省吾は、俺がコピーした劣化黒曜石シールドを構える。

 その省吾が相手の注意を強制的に引き付けるスキルで、竜神の攻撃を一手に引き受けた。


 分身が行った結果としては──耐えれた。

 だが光弾が当たった場所が悪いのか、被弾した瞬間に盾が跳ね、その衝撃で腕の骨が折れてしまった。

 そこはしっかり体全体で支える必要はありそうだ。


 そうして盾をもう一つコピーし、それを省吾へ渡して開戦だ。


 他のメンバーには分身を付けてある。

 省吾にはつける必要がないので、ひとりはストップウォッチ係だ。


『55!』


 分身がそう叫ぶと、省吾以外が盾を持つ分身の傍へと移動。

 接近職の芳樹やセリス、虎鉄は下がって警戒。


「うおおぉぉぉぉっ!」


 省吾が吠え、竜神の注意を引き──奴の口が開いた。

 背中を見せているからと、この時奴を攻撃するとくるりと振り向く。

 これも分身が犠牲になることで知った。


 カッと放たれた光弾は弾かれ、撃った本人へと直撃した。

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