第137話
『相殺』
拳で触れることで、相手の力を相殺することが可能。
なお、カウンターと違い相手にダメージを与えるものではない。
ステータス板で確認した結果、こんなことが書かれていた。
難しいな……。
スキルの不発……付与された武器を殴ったら、解除されたりするんだろうか?
試すにしてもビームはヤバイ。もし違ってたら俺の手が溶けてポロリしてしまう。
「試すなら聖付与だな。セリスさん、薙刀にエンチャント・ホーリーをかけてくれないか?」
「え? いいけど、どうするん?」
そう言いながら手にした薙刀にエンチャントを施す。
ぽぉっと白く輝く薙刀。
ボス狩りに参加したメンバーも俺たちの動向をじっと見つめていた。
「"相殺"」
拳を作ってそう唱えると、ほんのり握った拳が赤く輝いた。
特に勢いをつける訳でもなく、セリスさんの薙刀に拳を当てると。
バシッ――。
静電気が弾けるような音がして、薙刀の光が消えた。
これ……バリアミイラ……いけるんじゃないか?
「"相殺"!」
『"相殺"!』
『"相殺"!』
高僧ミイラ一体に対してこちらも
俺が俺を俺でと、わけの分からない状況になりつつあるのは、分身レベルが8になっているからだろう。
合計9人の俺に指示を出すのは面倒くさい。
なのでカラー腕章をつけるようにした。
オリジナルの俺は何もつけず、あとは赤だの青だの黄色だの。
分身したらすぐにそれをつけてもらい、色で呼ぶことにしている。
相殺役は主に俺と赤。高僧の数が多いときは青、黄色、緑、ピンクの順番で補充する。
思った通り、相殺でバリアをあっさり破壊することができた。
あとは虎鉄やセリスさん、俺自身が止めを刺し、高僧ミイラさえ倒してしまえばあとは無双状態に近い。
46階層の攻略に乗り出して2週間以上。
ようやく47階へと続く階段を見つけることができた。
できたが……。
「これ、他のパーティーも誘導してやらなきゃダメだよな」
「浅蔵さんの相殺スキルがないと、厳しいでしょうね」
『あっしも行くにゃー。レベル上げたいにゃからぁ』
「私は上で留守番しとっていい? 人数多いと混戦になるし、頼まれ物もあるけん……大丈夫?」
「頼まれ物?」
「な、内緒やけんっ」
内緒とか言われると、余計に気になるんですけど?
まさか俺に内緒で他の男から何かを頼まれたのか!?
い、いや、頼まれるぐらい別にいいさ。うん。
でもそれだと内緒にする必要もないわけだし。
いったんセリスさんを自宅に送り届けてから、階段で動かないメンバーに声をかけ47階への階段を目指す。
その日のうちに階段までは到着しなかったが、進めるだけ進むことで明日はその続きからスタートなので攻略も早く済む。
全員を地下1階に送り届けてから、明日の攻略順番を話し合った。
「俺のパーティーは階層ボススキルから『ディスペル』を貰った奴がいるし、自力で何とかなりそうだ。地図は欲しいけどな」
「リーダーはそう言うけどさ、スキルで消費するMPが多いからひとりだと不安ではあるんだよ。浅蔵さんの分身って、効果時間は1時間だっけ?」
「人数が増えるばかりで、効果時間は変わらないようなんだ。レベル10で変化あるといいんだけどなぁ」
「分身の人数増えるのも戦力としていいが、増えすぎるのも考え物だな」
そうなんだよ。
もともと3人パーティーだから今はまだいい。分身8人と足して11人だ。
それに俺自身は意思の疎通ができてるというか、まぁ自分自身だから考えてることは割と同じなわけで。
とはいえ、正直10人以上はいらない気がする。
それなら効果時間が10分ずつでもいいから、増えてくれるほうがありがたい。
そんなことを考えている間に、明日の攻略方法が決まった。
まず2パーティー単位で行動することにする。
パーティー数は俺のところも含めて全部で7パーティーだが、俺のところは除外するので6パーティー。
これを2パーティーずつ組ませるので3チームになる。
ディスペルが使えるチームには分身を二人、他に3人ずつ配置してそれぞれのチームで最も47階階段に近いルートからピンポイント転移でスタートすることになる。
1時間で効果が切れるため、その前に再分身してそれぞれのチームに俺が送り届けることになる。
「階段に早く到着したパーティーから、47階の探索を進めよう。敵の特性とか、そっちのほうを優先にしてくれ」
「「オッケー」」
地図は正直、俺の方で何とかなる。
DBPの無駄使いもしていないし、ポイントも結構余ってる状態だもんな。
今現在、DBPは17万を超えた。
設備の設置も出来るが、それをしてしまうと残り7万……。
必要な地図は46階のも含めて、あと5枚分だから5000ポイントあればそれでいい。
だけどこの先、攻略で有用なアイテムが出たらどうする?
例えば回復ポーションとか。
今現在確認されているのは、傷に直接かけるタイプのポーションがある。
効果はポーション瓶の大きさで違うが、その理由は液体の量によるものだ。
液体を傷にかければ治るが、量が少ないと傷全体にかけられず中途半端な回復になってしまう。
最小量だと20ml。正直これだと数センチの傷ぐらいにしかぶっかけることはできない。
じゃあこれを複数本分、一本にまとめればいいという話が昔あったが、これもダメだった。
ポーション瓶から別の瓶に移し替えると、そのまま気化してしまうからだ。
以前大戸島さんがなんか言ってたな。
ズルをしたらダメだとかなんとか。
そういうことなんだろう。
ポーション瓶の中で重宝されるのは500mlのペットボトルサイズだ。
もしこれがゲットできたとして、俺の図鑑に載るとしよう。
超劣化だとしても100ml。劣化なら250mlぐらいの物がコピーできる。
劣化コピーで1万DBPを使ってしまうんだ。
施設は一つきり。しかもどこに設置するかで状況も変わる。
ほいほいとはいかないよなぁ。
「浅蔵、何やってんだ?」
図鑑とにらめっこをしていると、芳樹がやって来た。
「あぁ、溜まってるポイントをどうしようかと思ってな。まぁどうもしないって結論になるんだけどさ」
「まぁ必要なのは地図だしなぁ。そういや図鑑スキルのレベル、結構上がってんじゃないか? 40階から下はモンスターの種類も増えてるしよ」
「そうなんだけどな……」
図鑑の中表紙はマスキングテープで隠してある。
それを確認するためにはこれを剥がなきゃならないわけで。
俺と芳樹はテント隣の自宅へと向かい、部屋へと入った。
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