第134話
検証は大事だ。
あと面白がって見物している奴らもいるので、スキルの効果を試すことになった。
「"ビーム・ウェポン"!」
右手に鞭、左手に図鑑。だが効果が現れたのは鞭のほうだけ。
鞭の表面が青白く発光し、ブォンという音がほんの僅かに動かすだけでも聞こえる。
「昔、そういう武器持ったアニメあったよな。ロボットの奴」
「でもあれ、剣じゃなかったか?」
「映画でもあったろ。SFの有名なのがさ」
どっちも知ってる。
あとビームの鞭っぽいのだってあったからな!
「じゃああとは威力だよな。浅蔵、その辺の牛をしばいてこいよ」
「分かったよ……いや、俺一人だと怖いんですけど?」
「分身だせば?」
「あぁ、なるほど。"分身"」
ビームを纏った鞭を持った状態で分身をすると、こうなります。
『みんなビーム鞭持ってるんだな』
『あ、分身レベル6になったぜ』
『光り輝く鞭使い7人』
『ラッキーセブンじゃん』
「いいから浅蔵、威力調べろよ……」
分かったよ。急かすなよ。
分身が増えて7人になった俺は、階段から離れてモンスターを探す。
後ろからセリスさんや虎鉄、そして芳樹や他のパーティーの人までぞろぞろと。
そして検証用実験モンスター発見。
46階への階段側エリアにはゴーレムタイプの『レンガ・ゴーレム』が徘徊している。
レンガってだけあって、体の構造は本当にレンガだ。で、硬い。
ゴーレム系モンスターは、ネットの情報サイトだと「体のどこかに核がある。その核を潰せば簡単に崩れる、スライムと同じようなモンスターだ」と書かれてあった。
しかも見た目の種類ごとに核の場所は同じなんだけど、土や砂のゴーレムはいいが、石だのこのレンガだのは分かったところで硬くて倒しにくい。
「援護頼むぞ~」
『ビームってどのくらいの出力だろうな』
『高出力って書いてたし……触ると溶けるとも』
『味方との乱戦だと危ないな』
さて、まずは一振り。
「ふっ――」
俺が鞭を振るうと、それに合わせて分身の俺も鞭を振るう。
すると――
ジュウウゥッ。
という音と共にレンガゴーレムの体にヒビが入った。
7本の鞭がゴーレムを何度も打ち付けると、一部がガラガラと音をたて崩れ落ち――たかと思ったら、ゴシャっと崩壊してしまった。
俺たち7人が振るった鞭はゴーレムのレンガを僅かに溶かしながら削ってゆき、そして誰かの鞭が核を焼き切ったんだろう。
「うげぇ……なんだよその超火力」
「やっべーな、あれ」
「頼むから俺たちの近くで振り回さないでくれよ……」
なにこれコワイ。
ビーム・ウェポンの効果時間は3分と長くはない。
しかもこのスキル。気を抜くと効果時間前でも消えてしまうという残念仕様。
常に集中していなきゃならないのは、なかなかに辛い。
逆に意識しすぎて鞭の精度が落ちてしまってミスが目立つ。
あと誰かが言ったように、他の人がいる場所では使えない。うっかりぶつければ火傷――当たり所が悪ければ悲惨なことになるからなぁ。
的に当てる自信はあるし、それ以外に当てない自信だってある。あるがビームに集中しすぎてこうミスが出ると、いつか誰かをバッサリやるんじゃないかと不安で使えやしない。
まぁ使うなら初撃だけだな。
まだ誰も俺より前に出てない状態で、ブォンっと一振りして終わり。
いろいろ考える余地のあるスキルだ。
威力もそこそこ期待できるし、俺の必殺技になると思ったんだけどなぁ。
この日も何人かを地下1階に連れて行き、テントで眠って貰うことに。
その前にホームセンターから二十日大根の種を持って来て、44階の階段で袋栽培をする。
対ダンゴムシ用だ。
その手伝いをみんなにもしてもらって、地下1階の畑で栽培されている大根も今夜は収穫しないでくれと頼んでおいた。
翌朝、元気に笑う大量の大根を収穫し、44階の階段にまとめておいておいた。
使い方のメッセージボードも添えて。
それから46階の攻略へと向かう。
食堂からみんなの分の温かい弁当も受け取り、そこで全員一緒に朝食をとった。
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