第133話

『メェ、メェメメェー。ンメェェェェーッ。"フレイム・シュート"』


 おい待て!

 なんでスキルの所だけ日本語なんだ!?


 一瞬そうツッコミそうになったが、飛んでくる火球を慌てて開いた図鑑シールドで防ぐのに必死だった。


『げふっ』

『分身の俺が――ぐはっ』

『うげっ。一撃でやられるとか、ヤバイだろっ』

『にゃんとーっ!』


 いつの間にやら虎鉄は俺の背中にしがみつき、難を逃れている。

 火球の数は8つ。

 もしかして人数分?


「セリスさん!?」

「はい!」


 呼ぶとすぐ後ろから声がした。


「あ、そこにいたのか」

「ご、ごめんなさい。こ、ここが一番安全かなと思ったけん」


 俺の背後に立っていた彼女は、頬を赤らめ申し訳なさそうに言う。


「いやいや、正解だと思うよ。図鑑シールドは最強だからね!」

『じゃあ次は俺たちも』

『とりあえず二人減ったし、補充しとこうぜ』


 分身を唱えなおしてリセットすると、残っていた分身も一度消え、再び俺が5人現れる。


『よし。次に同じのが来たら、図鑑持ってる本体の後ろに一列で』

『『よし!』』


 ……電車ごっこでもする気か?


『ンメェーッ』


 バフォ様ご立腹だ。

 そりゃそうだろうな。

 二人減ったはずなのに、また元の人数に戻っているんだ。


『メェ、メェメメェー。ンメェェェェーッ』

「来るぞ!」


 ざざざっと、一瞬にして俺の後ろに並ぶ、そしてセリスさん。虎鉄は肩に捕まっている。


『"フレイム・シュート"』


 そこはやっぱり日本語なんだな。

 全員が一列に並んだせいか、火球は一直線になって俺へと飛んでくる。

 ちゃんと相手の位置に飛ぶようになっているのか。

 だが直線的に飛ぶため、躱すことは可能――と。


 ドンドンドンッと、8発の火球が図鑑にぶち当たる。

 だが音に反して衝撃はまったくない。強いて言えば、図鑑に当たった際に少しだけ火花が飛び散り熱い程度か。


 火球がやむと同時に鞭を振るい奴の首を絞める。


『メッ、ブ……ブォアァッ』

「ちょ、変な声で鳴くなっ。わ、笑うだろおいっ」

『ブォアアァァッ』


 こ、こんな山羊見たことある。変な声で鳴く山羊だ。

 あれとそっくり!


『にゃにゃっ"奥義・爪とぎスラッシュッ"にゃよっ』

「はあぁぁっ!」

『フッ――』


 俺が笑いを堪えている間に、虎鉄が必殺技を出し、セリスさんが聖属性を付与した薙刀で奴を突く。

 それでもまだ倒れないバフォメットに、次々と5本の鞭が絡まった。

 そして同時に電気が流れる。


『ブボアッ、ボッボッボッボッボッアッアッアッ』


 ビクビクと跳ね上がるバフォメット。

 奴の首に巻き付けた鞭を解放し、そして二度振った。


「落ちろ!」


 鞭の先端に取り付けた刃がヒュンっと音を鳴らし、電流によって焦げた額に――突き刺さった。

 その瞬間。


【福岡02ダンジョン45階層ボスモンスターを討伐したよ】

【討伐完了ボーナスとして『ビーム・ウェポン』スキルを獲得したよ】


 というアナウンスが脳内に響いた。






「くっそぉぉっ! 浅蔵たちに先を越されたかぁっ」

「はっはっはっは。まぁまぁ、そう落ち込むなよ芳樹」

「落ち込むなといいつつ、先に笑ってるんだもんなぁ。性格悪いよ浅蔵ぁ」

「翔太に言われたくないな」


 夜になって芳樹のパーティーを回収。地図を見ると偶然、俺が歩いた通路にいたのでピンポイント転移で迎えにいけた。

 三田さんのパーティーは44階へと上る階段に引き返しており、そこで合流。

 ボスのバフォメットは俺たちが倒したと知らせると、ここでも悔しがる姿が見れた。


「あぁ、悔しいなぁ。それで、どんなスキルだったんだい?」

「あ、まだ確認してなかった。名前からするとエンチャント系なんですけどね」


 ステータス板でスキルの確認をすると、案の定、エンチャント系だ。

 だが何をエンチャントしてくれるのか、いまいち分からない。それに物騒な説明が書いてある。



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【ビーム・ウェポン】

 某有名ロボットアニメのあれに似せたエフェクト効果をもたらす。

 暗闇では光ってカッコいいぞ!

 熱効果も付くので触ると危険!

 火傷しちゃうぞ♪

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 エフェクト効果ってなんだ!?

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