第132話
午前中に中断した場所へピンポイント転移して探索を再開。
地図を見ると他のパーティーも行動を開始したようでパーティーメンバーの丸い印がうねうね動いている。
飯を食べている間も観察していたが、やっぱり少し進んでは止まって、また進んでは止まって――モンスターとの戦闘で立ち止まる回数が多いようだ。
まぁその点は俺たちも同様で――
「ようやくミノタウロス以外のモンスターが出てきたけど……出てきたけど単純に追加されただけとか勘弁してほしい!」
「数多いばい! きゃっ」
『セリスさん!?』
『ぐっ』
『俺ぇーっ、大丈夫か!?』
ミノタウロス3体セットに、やたら動きの素早いダンゴムシが追加で襲ってくるようになった。
大きなミノタウロスに比べてダンゴムシは両手の平サイズ。
このギャップのせいで、俺の鞭もうまく当たらない。
だからってダンゴムシに気をとられていると、当然のようにミノタウロスの攻撃が飛んでくるし。
「痛っ――こんにゃろうっ。じっとしていやがれ!」
と言ってもじっとしてくれる訳もなく。
『ならこれでどうだ! くらえ、ヘチマローション!』
分身のひとりがきゅうりを投げた。
そしてヘチマになると、地面にローションをぶちまける。
ローションの上を滑るようにして転がってくるダンゴムシ。
いや、速度増してないか?
潤滑油の効果でダンゴムシの転がる速度、増してないか!?
「うわあぁぁっ、あっぶね!」
『ダメだ! ローションは逆効果だ!!』
回転しながら移動するダンゴムシは、その速度を増し突進してくる。
ただ……
『真っすぐ進むだけにゃよー。早すぎて曲がれなくなったにゃねー』
唯一その動きについていけていた虎鉄が、突進してくるダンゴムシをひょいと躱し、振り向いてダンゴムシの末路を見届ける。
自分の身体能力をはるかに超えた回転速度についていけず、ダンゴムシはそのままミノタウロスの群れへと突入。
ソフトボール大の丸まったダンゴムシによって、ミノタウロス1体が吹っ飛んだ。
破壊力凄すぎるだろ。
ミノタウロスを吹っ飛ばしたダンゴムシは、そのまま壁にめり込んで動けなくなった。
残ったミノ2体、壁にめりこんだダンゴムシに止めを刺し、俺たちは先へと進んだ。
とりあえず、きゅうりはやめておこう。
2時間ほど探索を続け、ダンゴムシには大根が効果的だと分かった。
とりあえず遭遇したらすぐに俺たちの前方に大根を投げる。
丸まって高速回転しながら突進してくるダンゴムシは、そのまま桂剥き大根に捕まって身動きが取れなくなった。
大根越しにセリスさんが薙刀で突けば安全に倒せる。
今夜は大根を大量に植えておこう。後続組の到着に間に合えばいいんだけどな。
『んにゃ~。ガリガリのミノタウロスにゃよ』
「ガリガリ?」
虎鉄が前方のミノ一行を指さし、にんまりと笑った。
ガリガリのミノタウロス?
いや違う。
ムキムキマッチョ牛のミノタウロスは武器を持っていない。攻撃手段は主に蹄パンチに、全身を使ったタックルだった。
そんなミノタウロス一行の中に、一匹だけ武器を持った奴がいる。
長い柄に湾曲した刃――鎌だ。
しかも死神のイラストなんかで見る、あの鎌だ。
それを持つのは牛ではなく――
「あれ、山羊なん?」
「あぁ……ファンタジー漫画や小説で見るあれと同じと考えるなら……バフォメット。虎鉄、鑑定!」
『にゃー。"鑑定"するにゃね~。おにょ~、あさくにゃー凄いにゃ。バフォメットで正解にゃよぉ』
出来れば正解して欲しくなかったな。
外国でバフォメットの目撃情報はあるが、炎の魔法を使う強力な悪魔モンスターだ。
だけど悪魔だ。
セリスさんのエンチャント・ホーリーが効果絶大!
「セリスさん、薙刀にエンチャントを。虎鉄は毛づくろい!」
『俺たちは浅蔵スペシャル・紫電ウィップを装備だ』
全武器装備して分身すれば、全武器が見事にコピーされる。
まぁそれもまた分身なので、一定時間で消えるとかダメージ与えると消えるとかいろいろあるけど。
そうこうしている間にバフォメットたちは俺たちに気づいてやって来る。
ダンゴムシはいないが、バフォとミノ同時はきつい。
まずはきゅうりを投げ込み滑らせ、そこにピーマンパプリカ、そしてカボチャの爆弾を投入!
『ブモオオォォッ』
『メエェェッ』
い、今のメェーって……バフォメットの声、普通に山羊!
今の爆弾攻めでミノもバフォもそれなりにダメージを食らってはいるが、倒しきることはできないか。
だが足元がふらつく程度にはダメージを与えられている。
「畳みかけるぞ!」
『『おう!』』
『にゃにゃー』
虎鉄が跳びだしミノタウロスにシュババする。
分身が鞭でミノを痺れさせ、俺が伸ばした鞭の先端で奴らの喉元を切り裂く。
セリスさんも同様に、分身が痺れさせたミノへと止めを刺した。
バフォは二人の分身が足止めしてくれている。
ミノを倒し終え全員で奴を囲う。だが距離は一定を保ったまま。
「炎の魔法を使うという情報がある。気をつけろ」
「どんな魔法なん?」
「いや、そこまでは……単体での攻撃魔法なのか、それとも範囲なのか……」
そんな会話をしていると、なら見せてやろうとばかりにバフォメットの口が動いた。
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