第127話

本日更新分は小説家になろうの「あとがき」を間違ってコピペしておりました。

既に読まれた方には混乱させてしまい申し訳ないです。


**************************************************************


「大掃除ばい!」


 年末と言えば大掃除。

 そんなもの、施設を出て一人暮らしをするようになってから一度もしたことありませんけど?


「こ、ここさ、新築じゃないか。しかもまだ2か月ちょっとしか住んでない。必要?」

「ここやないと。ホームセンターの大掃除ばい!」


 え……そこ、必要?


 そんな12月30日。

 大戸島さんは食堂の大掃除が忙しいと、武くんと食堂スタッフさんとで頑張っている。

 俺とセリスさん、あと役に立つのか微妙な虎徹とで、まずは24階のホームセンターへとやってきた。

 出迎えてくれるのは、いつもにこにこ元気な化け野菜たち。


「あとで収穫してやるから、待ってろよ」

『ケーッケッケッケ』


 しかしホームセンターを俺たちだけで大掃除?


「じゃあ始めましょうか。浅蔵さん、まずは発電機を探すけん」

「発電機? ガソリンなんて無いぞ?」

「カセットボンベで動くタイプもあるんばい。前はそのことに気づかんかったけど、この店でも売っとらんやろうか?」


 カセットボンベ……そんなので動くものもあったのか。発電機といえばガソリンだとばかり思っていたな。

 売り場を探すと、確かにあった。

 カセットボンベもまだ売り場にもバックヤードにも在庫はある。


 この発電機を使って、業務用掃除機でまずは床をブラッシング。大きなゴミはセリスさんが箒で片づけていった。


「ここを休憩所変わりに使っている冒険家も多いな。床に足跡がいっぱいだ」

「靴の裏の泥がそのまま店の中まで付いとるね。泥を落とすためのマットを、非常口と裏口のところに敷いたほうがいいんやなかろうか」

「そうだな。どうせ売り場にいくらでもあるんだし、敷いておくか。虎鉄、手伝ってくれ」

『仕方ないにゃー』


 虎鉄を連れてマットコーナーへ。

 泥落とし用を俺が3枚、虎鉄が1枚持って、まずは裏の従業員出入口へ。

 外側に4枚を並べて敷いて、また同じようにマットを持って非常口へ。ここでも4枚並べて敷くと店内へと戻る。

 一通りブラッシングしたら、次はモップがけだ。

 虎鉄には雑巾がけをしてもらう。


『にゃにゃにゃにゃにゃーっ!』

「あれ、人間だと腰が痛くなるんだけど、虎鉄は四足も普通に出来るから腰を痛めるなんてこともなさそうだな」

「そうやね。雑巾がけは虎鉄の得意分野かも」

『にゅふふー』


 褒められてご満悦の虎鉄に床掃除を任せ、俺とセリスさんで店内の棚を大移動することにした。

 客が商品を見やすくするため、カートを持った人同士がすれ違えるように。そういう意味で通路の幅を設定しているだろうが、客がこないんだからもう関係ない。

 人一人が十分通れる幅があればいいので、全体的に真ん中へ寄る感じで動かしていく。 


「"分身"」

『さて、やるか』

『分身レベル100とかだったら、作業も早く終わるのにな』

『100人の俺とか怖いからやめようぜ』


 そんな話をしながら一つの棚を三人がかりで運ぶ。

 棚に乗った商品によってはかなり重い。場合によっては棚から降ろして移動させることも。


『そっとだぞ。そぉーっとだ』

「食器やべーな」

「ちょっと待って! やっぱり食器は全部降ろしたほうがいいやない?」

『でもそれすると、かなり時間かかるしなぁ』

『割れても誰も困らないし、よくないか?』

「そうやけど……ううん、じゃあそうーっと」


 で……。


『あぁぁぁっ』

『いかーんっ』

「きゃあぁぁぁっ」


 ガシャーンと、やるわけだよね。うん。

 お岩さんもびっくりな枚数のお皿や茶わんが散乱し、俺たちはしばらく呆然とその惨状を見つめた。


『にゃー。ここも拭くにゃかぁ?』

「あ、虎鉄っ。ダメばい、危ないけん」

『にゃあ?』

「割れ物は拭くんじゃない、まずは箒で――」


 ばたばたと割れ物を片付け、少し軽くなった棚を移動させる。

 残りの棚はさすがに……。


「なぁセリスさん。ここの割れ物、上に持っていかないか? 正直いらないだろうここだと」

『むしろ紙皿とか割りばしを補充させたいな』

「それもそうですね。じゃあポケットに入れますか?」

「そうしよう」


 売り場から小さめのダンボールを持ってきて、ぷちぷちのエアパッキンも大量に用意。

 レジに行けばテープカッターがあるので、これも持ってきてどんどん包んでいく。包んだお皿や茶わんをうまくダンボールへと入れ、それをセリスさんのポケットダンボールへ。

 隣では虎鉄はエアパッキンを爪でプチプチ割るのが聞こえた。


「ふぅ。終わったなぁ」

『おなかすいたにゃよあさくにゃー。これ食べたいにゃー』


 そう言って虎鉄は売り場にあった猫缶を持ってきた。

 お前……プチプチして遊んでただけだろ!

 まぁ拭き掃除は頑張ってくれたしー。いいんだけどー。


「浅蔵さん。久々にここでご飯たべん?」

「え? お昼をかい?」


 こくりと頷いた彼女は、カセットボンベとコンロを用意してご飯を作るという。


「も、もちろんここにあるので作るけん、大したものは出来んけど……」

「ここの食材かぁ。いいねぇ、懐かしいじゃないか」

「じ、じゃあ作るけん、浅蔵さんはテーブルとか用意しとって」

『オッケー』

「いや、お前じゃないから」


 分身を消してバーベキューコーナーへ。

 ここのアウトドア用品もあっちこっち持っていかれてるなぁ。

 ここを休憩所として使う人の中には、ちゃんと元の位置に戻す人もいるが、使ったら使いっぱなしも多い。


 いっそ綺麗に並べてしまって、食事はここ、寝るのはここって場所作りしてしまったほうがいいんじゃなかろうか。

 棚を寄せ終えたら宿泊コーナーみたいに作ってみるか。


「お待たせ浅蔵さん」

「お、待ってました。いやぁ、セリスさんの手料理かぁ」


 愛情たっぷりの手料理。ふふふ。ふふふふふふふふ。

 用意されたのは焼うどん。


「にんじんとピーマンだけあったけん、使ったんよ」

「他は全部化けてたか。けど野菜があったってことは、誰かが収穫したばかりだったのかな」

「まだダンジョンで頑張っとるんかなぁ」

「どうだろう? まぁ食べようか」

『あっしはこれにゃー』


 虎鉄の分もお皿に出してやり、ホームセンターで久しぶりとなる食事を堪能した。

 ちょっとソースが濃かったけど。






「はぁ、終わった」

「終わりましたねぇ。宿泊所……」


 ジョイントマットをつなげ、だいたい10帖ぐらいのスペースを6か所作った。

 ここにカーペットも敷き、横にはスチールラックを設置して荷物を置けるようにした。シューズラックも忘れない。

 バックヤードから毛布も出してきて、スチールラックに置いておく。

 それぞれのスペースはパイプハンガーとカーテンを使ってお互い見えなくし、多少はプライバシーに配慮できる形にしてある。

 さらにアウトドアで使う、折り畳み式のテーブルもそれぞれのスチールラックに置いて……。


「スチールラックに『使ったら元の場所へ』『あなたが綺麗に使ってくれるから、清潔に保てます』と張り紙もしたし、これで少しはマシになるだろう」

「私たち、大掃除しに来たはずやったのに」

「う……」

「まぁいいけど。それじゃあ明日は19階のホームセンターの掃除と宿泊所作りやね」


 ……え。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る