第122話

 約束げんまん。

 子供の頃よく言ってたな。

 しかしこんなスキルまであるとは……。

 効果は歌にあるアレとは少し違って、相手と約束を交わす際に破った場合のペナルティーも設定できるという。

 そう。約束を破るとそのペナルティーを課せられるのだ。


「命に関わるようなペナルティーは設定できません。しかしダンジョンでそのペナルティーが発生すれば、命に関わる場合もあります」

「それで、俺たちに何を約束させたいんだ? その約束をして、なんのメリットを得られるんだ?」


 集まった各パーティーのリーダーたちは怪訝な顔をしていた。

 まぁそうだよな。妙なスキルで約束させられるんだし。

 だが内容を話しては意味がない。


「これからのダンジョン攻略でみなが少しでも楽になる方法がある。だがこの方法はお主らだけでなく、全ての冒険家に有効な手段じゃ」

「ですから、この方法を他に公言しないこと。これが約束です。それで、約束を破った場合なんですが――」


 会長と小畑さんの説明のあと、女性がひとり前に出た。

 この人がスキルの所持者か。


「私のこのスキルは、約束した内容を少しでも破ろうとしたら発動します。例えば今回は、情報の公言になりますが」


 誰かに話そうとして口を開き、一言でも発するとペナルティが発動する。

 ペナルティの内容はスキルレベル依存で、今彼女が選択できるのは――


「48時間こちょこちょの刑。48時間蚤の刑。48時間下痢の刑――です」

「「うわあぁぁ……」」


 直接的に命に関わらないかもしれないが、ダンジョン内だと確実に死ぬな。


「パーティーメンバー全員に意見を聞き、受け入れるパーティーだけもう一度この家に来るがいい。期日は……今日の夜20時まで……でよいか?」


 誰にとではなく会長は口にする。

 俺が小さく頷くと、


「では20時までじゃ。解散」


 と、大戸島会長は締めくくった。

 残ったのは会長と小畑さん、約束げんまんスキルの女性、そして芳樹だ。


「じーさん、俺のパーティーはどうすんだ?」

「お前んところはいいわい。浅蔵とは友達じゃろう。友達を困らせるような孫なんぞ、わしゃ持った覚えはないわい」

「へいへい」


 まぁ今更だもんな。


 さて、何組のパーティーが来るだろうか。






 久々にのーんびり――は出来なかった。


「二日酔いでバイトがダウンしてるもんだから……」

『モキャーッキャッキャッキャ』

「すっごい五月蠅いばいね」

『ッファーッ。ッファーッ』

「レタスさんの笑い声ってぇ、昔テレビでみたお笑い芸人に似てると思いません~?」

『そうかにゃー?』


 いや、お前は知らないだろ、その昔のお笑い芸人って。

 昨日はパーティーで収穫を忘れ、今日は二日酔いでダウンしてるバイトが多く収穫量が減り……。

 結果、化け野菜だらけになった。

 これからの攻略に役立つだろう。


 化け野菜だけ収穫すれば、今実っている野菜が数時間後に化ける。

 結局全部収穫しなきゃならなくなり、元気な冒険家を新鮮野菜お持ち帰りを餌に呼び集め、みんなで収穫頑張った。


 夕食は福岡名物もつ鍋。

 みんなで食べて、また収穫して――夜にはようやく二日酔いのバイトが復活した。


 そして20時。


 ゾロゾロとやってくる冒険家たち。


「あの、さすがに全員は入りきれないんですけど」

「あぁ、そうだね。パーティーごとに一組ずつ入って来てくれ」


 小畑さんの指示のもと、一パーティーずつ中に入ってくる。

 彼らに図鑑での転移のことを話し、それを公言しないという約束を取り付ける。


「便利すぎだろ、その図鑑」

「俺もダンジョン生成に巻き込まれたかった」

「おい、不謹慎だぞ。出れない奴の苦労も考えろ」

「あ……悪い」

「いや、気にしないでくれ。まぁ出たいのは出たいけどね。その為にもみんなが最下層を目指して、何でもいい。出れるヒントを探してくれると有難い」

「分かった。協力するよ」

「ありがとう」


 まず一つ目のパーティーのリーダーと握手をし、次のパーティーと交代する。

 結局全パーティーが集まっていた。


 最後に各リーダーに再集合して貰い、転移の順番を決めることにした。

 その結果――


「じゃあ全パーティー、ダンジョン内で二泊して、翌々日の18時に各階段集合ってことでいいかな?」

「異議なし」

「日帰りは確かに嬉しいが、探索時間が短くなるもんな」

「一日地上でゆっくりして、その間にお互い探索ルートの報告会とかあるとよくないか?」

「あぁ、それいいね」

「43階まで地図も出来てるし、すぐ追いつけると思う」

「では君らが集まれるよう、大型のテントを用意しておくよ」

「じゃ、出発は――」


 明後日12月27日。

 もうすぐ年末か。

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