2章:ダンジョン暮らし

第37話

 ダンジョン生活37日目。


「今度はルーから手作りしたカレーを3人で食べようねぇ」


 大戸島さんの言葉を合図に、俺たちは地上へ向け再出発した。

 前日の地図埋めもバッチリ。サクサク進んで18階へと到着すると、そのまま18階の地図埋めを開始する。

 18階は極平凡な洞窟ダンジョン。若干足元が凸凹しているものの、歩く分には支障が無い程度。つまりマウンテンバイクにとってなんら障害にならない道だ。


 地図埋めをするだけのつもりだったが、結局その日のうちに17階へと上る階段を見つけ今日はここで野宿する。


「1日で2階上がれたなぁ。この調子でサクサク進めればいいが」

「今日は普段より疲れなくて、自転車漕ぐスピードも安定してましたしね。階層上がると疲れにくくなるんですかね?」


 いや、そんな話は聞いたことない。というか俺はいつも通り、まぁまぁ疲れてるけど。

 正直言うと、度重なる自転車行軍で微妙な筋肉痛だってある。だからこっそり湿布を貼っているんだが。

 あぁ、若いっていいなぁ。


「あぁ! ステータス板、ずっと確認し忘れてる~。ちょっと行ってくるねぇ」

「瑠璃! ひとりじゃ危険よっ」

「そうだぞ。3人で揃って行こう」


 女王蟻を倒したときに、ボス討伐報酬のスキルを貰っている。

 スキル効果をあとで確認しなきゃなと思いつつ、階段を見つけると上の階層が気になって上り、そしてゾンビに追われて戻れなくなってしまった。

 18階へと上る階段を見つけたときも、近くに居たゾンビから逃げるようにさっさと上ってきてしまったしな。


 ここ18階には黄色いスライムとゲジゲジ、そしてダンゴムシの3種類が生息する。ゲジゲジとダンゴムシは当然ダンジョン仕様なので大きい。

 まぁ数匹程度倒したが、ほとんどはスルーして自転車で突っ切って来ている。レベルはそれほど上がってないだろう。



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浅蔵 豊 捕らわれのダンジョン人 23歳

 レベル:20

 筋力:C-  肉体:D-  敏捷:D+

 魔力:F  幸運:C+

【スキル】

 感知5

 順応力3

 ダンジョン図鑑3

 サポート1

 



セリス・時籐 捕らわれのダンジョン人 18歳

 レベル15

 筋力:E+  肉体:F  敏捷:D

 魔力:F  幸運:F+

【スキル】

 ラジオ体操3

 跳躍力2

 フットワーク1




大戸島 瑠璃 捕らわれのダンジョン人 18歳

 レベル13

 筋力:G  肉体:F  敏捷:F

 魔力:D-  幸運:D+

【スキル】

 どこでも睡眠2

 料理1

 スリープフォッグ1


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 DBP増やすためにひとりで24階モンスターを200匹以上倒してるから、その分で結構レベル上がってるな。あとは女王蟻か。

 

 二人は「あまり疲れてない」のは、どうやら俺の新しいスキルの効果みたいだ。



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     【サポート】


 周辺に居る敵対関係にない相手の身体能力を向上させる。

 また肉体疲労なども軽減。


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 なぁ……これってスキル持ち本人には効果ないんですか?

 そうですよね? だって俺、疲れてるもん。

 なんだよこの(俺個人に対して)ゴミスキルは!


 それに引き換え二人のスキルは優秀だ。

 セリスさんのフットワークは、足取りが軽やかになり、機敏な行動が可能となる。そんなスキルだった。

 格闘系に走って行っているなぁ。でも格闘技の経験がある分、いいスキルを貰っている。


「慣れるまでは難しいかもしれませんが、私、頑張ります!」

「セリスちゃんカッコいぃ~」

「だけどあまり無茶はしないように。スキルの力を過信し過ぎないようにね」

「はい」


 そして大戸島さんだ。地味に魔力ステータスが上がってきてるなと思ったらコレだよ。



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     【スリープフォッグ】

 眠りをもたらす霧を発生させる。スキルを使う場合は利き手を突き出し

 声に出す事。尚、眠った相手は僅かでもダメージを与えれば目覚める。

 霧は30秒ほどで晴れ、眠らせることが出来る時間は120秒ほど。


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 これ、いいスキルだよ。囲まれてもこれで敵を眠らせれば……でも有効範囲はどうなんだろう。

 また敵と味方の区別は出来るのかな?

 まぁ眠ってる時間も120秒だっていうし、俺たちで実験するか。


「大戸島さん、ちょっと踊り場でスキルを使ってくれるかい? いろいろ検証したいからさ」

「いいんですか! わぁ~い」


 な、なんか喜ばれたよ。どういうこと?






「Zzz……――はっ! ど、どうなった!?」

「浅蔵さん、ぐっすりでした~」

「ぐ……敵味方関係ないのか」


 踊り場で行われた魔法の検証は、見事俺を眠らせたことで一つの事が分かった。


「もう一回やっていいですかぁ?」

「え? まだやるの?」

「はい。なんていうのかなぁ、もうちょっと霧の形を自由に変えられないのかなぁと思って」

「霧の形……か」


 俺が意識を失う寸前に見たのは、紫色のもやぁっとした霧だ。それが彼女の手の先からぶわぁっと出て、だいたい畳2畳分ぐらいに広がった感じだったか。

 要は彼女の前方に展開する形だ。

 その形を変えられるのかどうか、その実験をしたいという。俺で。


「いやそこ、別に俺必要なくない?」

「"スリープフォッグゥ"」

「え、聞いてる? 聞いて――Zzz……――聞いてないよね!?」

「おはようございます~。形、少し変えられましたよぉ」

「え? そうなん?」


 出来るのか!

 大戸島さんとしては、ドーナツ形にしたいようだ。

 そうすれば俺たちを取り囲むモンスターを、一網打尽に出来るからだと。

 なるほど。


「そのための必要な犠牲なのです~"スリームフォッグゥ"」

「いや犠牲無くてもスキル使えZzz……」

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