第23話

「さぁ、出発だ! スピード出し過ぎないように」

「「はい」」


 ダンジョンへと落ちて、今日で16日目。

 昨日は午前中のうちに自転車の整備、午後は俺が爆睡。

 睡眠時間がずっと短かったからな。さすがに疲れも出てしまったわけだ。

 そんな訳で、再出発が今日になってしまった。

 この2日間で、セリスさんの顔真っ赤事件もようやく落ち着き、おかげで俺もいつも通り話せるようになった。


 マウンテンバイクでの移動は快適だ。

 特にカタツムリナメクジゾーンは、一切戦闘をせずに走る抜けることが出来た。

 ウォーターリザードンも、ホーンフロッグも足は速くない。

 ただ長い舌を伸ばしてくる蛙は注意が必要だった。

 奴は倒しながら進み、ハンドルに固定した地図を頼りに階段まで一直線。


「ふぅ。まさか半日で階段まで来れるとはね」

「最初から自転車持ってくればよかったですねぇ」


 だってダンジョンで自転車とか、普通考え付かないから!

 それに二度目は道も分かっていたし、迷うことなくここまで来れたってのもある。


 階段で野宿をし、翌日は23階を探索。

 階段を見つけられればラッキーだと思っていたんだけど――。。


「22階の階段、見つけましたね」

「わぁーい。あ、ステータス版見てもいいですかぁ?」

「どうぞどうぞ」


 前回、少しだけマッピングしていたのはあった。

 24階より23階のほうが自転車で走りやすかったのもあるし、スケルトンの数が思ったほど多くも無い。

 奥に進むと他のモンスターもいたが、ふよふよと浮く火の玉と赤いスライム、ビックリ箱。

 火の玉は水に弱く、ペットボトルの水を掛けるだけで倒せたし、スライムは遅いので無視。箱はそもそも動かなかった。

 気になって近づくと襲って来たので、ミミック系モンスターだろう。


「わっ。レベル10になってるぅ」

「え? 私も見る!」

「浅蔵さんは~?」

「んー、じゃあ見ておこうかな」



∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

浅蔵 豊 捕らわれのダンジョン人 23歳

 レベル:17

 筋力:D+  肉体:E+  敏捷:D

 魔力:F  幸運:C+

【スキル】

 感知4

 順応力2

 ダンジョン図鑑2

 



セリス・時籐 捕らわれのダンジョン人 18歳

 レベル12

 筋力:E+  肉体:F  敏捷:E+

 魔力:F  幸運:F

【スキル】

 ラジオ体操2

 跳躍力1




大戸島 瑠璃 捕らわれのダンジョン人 18歳

 レベル10

 筋力:G  肉体:F  敏捷:F

 魔力:E+  幸運:D+

【スキル】

 どこでも睡眠2

 料理1


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 



「この捕らわれの~って、なんですかねぇ」

「なんだろう? 俺もこういうのは聞いたこと無いな。名前の横に年齢があるっていうのは知ってたけど」

「職業とかじゃないんですか? 普通だと」

「いや、以前は名前と年齢しかなかったよ」


 新しく実装されたのか?

 だったら誰がそんなことを……。






 22階へと一度上がり、図鑑を更新。1階の次が22階、そして23階24階25階と続く。

 22階は何故か建物内のような構図になっている。しかも床はレッドカーペット。

 自転車で走りやすそうなんで有難いね。

 


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

     【福岡02ダンジョン22階】

 昔の西洋建築をモデルとした、建物型の階層。

 廊下に敷かれた絨毯は、ダンジョンへと訪れる人間の血を啜たかのように赤い。

 廊下の両サイドにはさまざまな種類の扉がある。

 その扉を開いた先にあるものは、お宝か……はたまた……

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽



 はたまた……なんだろうなぁ、この文章の締め方は。

 まぁ俺たちは地上に出るのが目的だ。この際部屋は無視して進もう。

 だいたい「お宝」なんてのが怪しいんだよ。早々手に入る物じゃないのは、ネットの冒険者サイト見ていれば分かる。

 そもそもモンスターからアイテムをドロップする確率もあまり高くない。

 5~6匹倒して一つ何か拾う程度。それだって、大きすぎる物はアイテムポケットに入らないので、泣く泣く捨ててきている。


 今日の野宿場所は22階へと上る階段だ。1日1階のペースで登れれば悪くない。いや上出来だ。


 だが20階には問題がある。階層ボスモンスターだ。

 正確には、中ボスになるんだけどな。

 25階の時みたいに、俺の愛車で轢き殺す……なんてことも出来ない。

 だって俺の愛車、25階に置いて来たもんね! あれ絶対動かない。廃車だよ廃車!


 まぁなんとかするしかない。

 一番いいのは、遭遇しないことなんだけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る