第14話
五日目の朝。
今日はモンスターを取り出しての戦闘訓練はしない。
連日ナメクジとカタツムリを出し過ぎて、残りDBPが14000にまで減ったからだ。
地下24階のモンスターは、DBPの消費が24になる。
10匹で240DBP。100匹なら2400DBP。
出来れば1万は残したい……と言ったが、この図鑑にどんな機能が隠されているのか分からない。
戦闘慣れはしたし、温存していく方がいいだろうなと思ったから。
「これからは節約します」
節約の理由は他にもある。
100匹超えのモンスターを倒しているというのに、ドロップアイテムが皆無だということ。
もしかすると図鑑モンスターは、ドロップ率ゼロなのかもしれない。
戦闘経験は出来るが、実入りが他にないならこれ以上は必要ないと感じたからだ。
「いいと思います」
「はーい、異議ありませぇん。でもそうすると、どうしますか?」
うん。とりあえず二人のアクリルシールドを作り直そうと思う。
多数同時戦闘の訓練で、水弾を何発かアクリルシールドで受けている。
結果、ちょーっとひび割れを起こしている。
「重さ的にどう? 重くない?」
「うぅん、このぐらいは全然平気ですね」
「私もです。どうせなら、重ねてみたらどうですかねぇ?」
「俺もそのつもりなんだけど。試しに二枚同時に片手で持って貰っていいかな?」
重ねたシールドを二人にそれぞれ持って貰う。
「少し重い……かな」
「うぅん。これ持って走るのは辛いかもです」
「俺の感知があるから、移動中は俺が持ってもいいんだ。感知してから渡せばいいしね」
でも逃げるときには咄嗟の判断だから、荷物の移動は厳しいだろう。
大戸島さんは重ねない方がいいのか?
アクリル板の厚みは5mmのA3サイズだ。これで重量は900g超え。3mm厚にすると500gを少し切るぐらい。
意外と重いのだよ。
じゃあ5mm厚で作って、3mm厚のワンサイズ小さいのを重ねるか。
まずは試作品を作って重さを確かめてもらう。
それまでに半日掛かった。
「これぐらいなら大丈夫です」
「私もぉ、頑張って持てますぅ」
重量は1.15キロぐらい。
手首に負担が掛からないよう、今度はベルトを二か所つけて腕そのもので装備するように作った。
他にも盾を入れられるリュックを用意。
背負えば持ち運びもしやすくなる。
欲を言うとなぁ。アイテムボックス系のアイテムが欲しいところ。
探検家が絶対手に入れたいアイテムランキング、堂々の一位!
大容量なのに中に入れた物の重さも感じさせない、夢の四次元ポケット!!
それがあれば自力脱出の時も、食料にテントに毛布コンロなんでもかんでも詰め込んで、ホームセンターごと脱出! も夢じゃないんだが。
ま、それが無くても食料を切らさず進む方法はあるんだけどな。
本日の夕飯は、福岡県民の誰もが愛する――。
「とんこつラーメンたい!」
3食入り!
「クラスの子にとんこつ嫌いな子ぉ、いますよぉ?」
「ねー」
「ねぇー」
「……せ、せからしか! とんこつ嫌いとか、福岡県民やなか!」
「あ、おかずはこれにしましょう。真空パックの宮崎地鶏、炭火焼き」
「おぉー、いいねぇ。酒のつまみにピッタリじゃん」
お湯を沸かしフライパンの用意もする。
何やらセリスさんが箱を持ってきたぞ。
「ビール、ありますよ? たまには息抜き、してください」
そう言って350mlの缶ビールを俺にくれた。
「……ごめん。俺……下戸なんだ」
場の空気が凍り付く。
「なん言っとーと! 九州男児がお酒飲めんと? 情けなかとねー」
「そう言えば浅蔵さん。コーヒー缶にも手をつけてませんよね? お子様ばい」
「止めてっ。二人して福岡弁で俺をなじるのは止めてぇ」
「「情けなかとー」」
うっうっ。
俺の味方はお前だけだぞ、とんこつラーメン。
ほんのり塩味の利いたとんこつも、また美味しゅうございました。
「じゃあ行って来る」
「大丈夫ですかぁ?」
「あぁ。行くと言っても、向こうの壁際までだしね」
「それでも……気をつけてくださいね」
「ああ」
夕食後、二人が寝る前に俺は図鑑のマッピング性能を確認するために外に出た。
目視で見える左側の横穴も、図鑑の地図には載っていない。
どのくらいの距離をマッピングしてくれるのか、それを確かめる必要がある。
図鑑片手に感知の精度も上げ、足早に左の壁へと向かった。
お、図鑑の地図が更新し始めたぞ。
駆け足から徒歩へと移行。
横穴が地図に表示されたら足を止める。
俺の位置から横穴まで、僅か5メートル。
マッピングは、俺を中心に半径5メートルを円形で表示していくようだ。
感知に反応はないし、右側の横穴方面を振り向いてもモンスターは見えない。
感知より、目視の方が先に見えることもある。まぁ100メートル以上の先まで見れるような、広い空間ではだが。
横穴にもう少し近づこう。
その入り口に立つと、奥はすぐカーブになっていてその先が見えない。
感知に反応は無いが、入った後に右側からモンスターが出てきたら俺が気づけない。
やめておこう。
壁際をぐるっと回って帰るか。
すると、壁で見えないはずの、向こう側が地図に表示されていくじゃないか!
尺で考えると、壁は厚さ1メートルぐらいか。
どうもぐねぐねした道が多いみたいだなぁ。
右側の横穴まで来た時――なんと!
「その奥が下り階段になってた……」
二人の所へ戻ってそう報告。
唖然としてるよ。
うん、俺もビックリだね。
愛鞭失ってまで上ってきたのに、まさか直ぐ近くが階段だったなんてね!
「明日、行きませんか?」
「え? 25階に? いやいや、モンスターの強さがランクアップするから、お勧めしないよ」
「いえ、階層入り口にあるんでしょ?」
階層入り口にある物……ああ!
「ステータス板か」
「はい。私、自分が何のスキルを貰ったのか、知りたいんです!」
「私もぉ」
うん、まぁ俺も二人のスキルを知りたいとは思うよ。
思うけど、十中八九……アレとアレだよ。
それを知った時の二人が、ちょっと心配でもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます