第22話 魔族と失墜1

「まおうさまはね、クヨとサリアにこう言ったの。魔王軍のね、裏切り者、フナーラマをころしたら、最高幹部にしてくれるって」


「最高幹部……クヨは、魔王軍の中でも上の地位、幹部なんだよな?さらにその上があるのか?」


「幹部より更にうえ!最高幹部になれるのっ!そしたらね、もっといいものがたくさん貰えるの!!」


「なるほどな……」


「もっといいもの」がどんなものなのかは、気になったが、クヨが折角過去について話してくれているのだ。

 あまり、こちらから詮索して、クヨの機嫌を悪くする可能性もある。

 それは避けたかった。今はやめておこう。


「フナーラマはね、元幹部なんだけど、まおうさまを裏切ったからね、死罪なの。だからクヨとサリアはね、フナーラマのとこにいってね、死んでって言ってね、殺そうとしたの」


「それで……成功したのか?」


「うんん。クヨもサリアもフナーラマに負けちゃった。その時にサリアは死んじゃったの。クヨは大丈夫だったんだけどね」


「そうか……」


「まおうさまは裏切り者にも厳しかったけど、まおうさまの命令を遂行出来なかった人にはもっと厳しかった。クヨもまおうさまの罰を受けたの」


「罰……?」


「ミズミはかせは、どうしてそんなにクヨのこと知りたいの?」


 唐突にクヨが聞いてくる。


「私は研究者だ。クヨを蘇らせたのも、正直に言えば、興味本位だ」


 あと、クヨの顔が可愛かったという小さな下心もない事はなくも無いが。


「けんきゅうしゃ?ミズミはかせは、何の研究をしているの?」


「私は歴史学が専門だ。この国で過去に起こった事を研究している。最近はそう……クヨがいた時代について興味があるんだ。魔王軍に支配されていた人類の時代だ」


「れきし……クヨがいた時代のはなし……うーん。よくわかんない」


「分かりやすく言うと、クヨに興味があるんだ」


「クヨに?それってミズミはかせがクヨの事好きってこと?」


「え?ああ、そうだ。クヨの事を知りたいってことは、クヨが好きってことだからな」


「えへへっ。そっかー。ミズミはかせはクヨの事が好きなのかぁ。じゃあ、しょうがないなぁ」


「……クヨ……」


「罰はね!魔王軍の『地位』と『権利』のはくだつだよ」


「地位と権利の剥奪……」


「クヨはね、まおうさまから信頼される強い強い魔族だったの。強くて、強くて、誰にも負けないぐらい強かったの。だけど負けちゃった。クヨは負けちゃったの。だからね、まおうさまははおこった。サリアは死んで、クヨは罰を受けた」


「その罰が地位と権利を剥奪される事なのか?」


「うん」


 クヨは小さく頷く。


「クヨちゃん、少し聞いてもいいかな?」


 助手がクヨに聞く。


 クヨは「いいよ」と答える。


「魔王様の命令に失敗して、クヨちゃんは罰を受けたけど、サリアちゃんは、フナーラマっていう人に殺されたってことだよね?」


「そうだよ。でも、フナーラマは人じゃない。足や手が沢山はえてるばけものだよ」


「足や手が沢山……ほお、気になるな。ぜひ、詳しく話を……」


「ミズミ博士!」


 詳しく聞こうとしたところ、助手に制止させられてしまう。


「す、すまない……」


 地位と権利の剥奪か……

 地位はクヨの幹部としての座なんだろうが、権利とは何だろうか?

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