第17話 私と助手2
マッヒは女性に手を出す癖があった。
それは助手も例外では無かった。
マッヒは以前にも、別の助手を雇っていたが、彼女もどうやら、マッヒから被害を受けて、助手を辞めたらしい。
研究会で、マッヒの不適切な所業については、話題に上がってものの、マッヒ自身の存在価値に考慮してか、結局何らかの理由で揉み消されてしまった。
助手はその後にマッヒの元で、働く事になったのだが、度々マッヒに性的行為を要求されたらしく、助手は懸命に拒否していたらしい。
助手は研究仲間や、尊敬する恩師などに、マッヒの件を相談するのだが、どうやら研究仲間でもマッヒの女癖は有名らしく(私は全く知らなかったのだが)、研究仲間が何度か注意する事はあったらしいのだが、マッヒは人間性はともかくとして、天才的な頭脳を持つ、優秀な研究者だった。
私と同じく、国の重要な研究を任せれている為、マッヒが地位を獲得する度に、研究者たちは彼に逆らえなくなっていった。彼無しでは研究出来ない事案もあったからだ。彼がナグナ王国で研究を続けてくれるのならば、それが人類の発展へと繋がるのならば、多少の女癖の悪さなど些細な問題だ、最終的に黙認される原因となったのは、以上の事らしい。
やがて、助手は誰からも相手にされなくなる。マッヒは助手を非常に気に入っていた。
自身に逆らう者がいなくなったと理解していたマッヒは、ついに助手を無理矢理暴力で押さえ込み、性的暴行を加えようとする。
だが、マッヒの思惑は失敗した。理由は勿論私だ。
たまたまマッヒに用があった私が研究上を訪れだ際に、私はマッヒが助手を襲う現場を目撃する。
怯える助手を私の背にやり、私はマッヒを問い詰めるのだが……
結局、事が明るみになる事は無かった。それは、私も助手もマッヒも同意しての事だった。
私はマッヒを失う事の損失を理解していたし、助手も同じくだ。
この問題は、私とマッヒが決別し、助手を私が受け入れる事で終結した。
私は丁度、国から研究の為の、施設を貰っていたのもあったからだ。
研究所はそこそこ大きかったし、丁度大きな研究に取り掛かろうとしている最中だったので、丁度良かったかもしれない。
***
「心配ご無用です。私もクヨちゃんと同じく、この先どんな事があっても、ミズミ博士と運命を共にするって決めてますから」
「これはクヨちゃんの言う”仲間”や”約束”じゃなくて、私自身が決めた事です。ミズミ博士には死んでも返しきれない恩がありますから」
「ミズミ博士が忘れても私は一生忘れません。ミズミ博士から受けた恩を。私が今生きていられるのも、あの時、ミズミ博士が私を救ってくれたからです」
「ミズミ博士、不安なんですよね?ずっと夢見ていた実験の第一歩なんですから。私もミズミ博士の夢にお供させて下さいよ」
***
これが、私と助手の出会いだった。
良い出会いか、悪い出会いかで言えば、最悪の出会いだったのかもしれないが、私も助手も何とかやっていけてる。
それだけで十分だろう。
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