第13話 魔族の本性




「ふぅ……疲れましたねぇ」


 ようやく研究発表会が終わった。私と助手の二人は城から出る。


「ああ、今回は疲れた。変に緊張してしまったよ」


「やっぱり……オレメス大臣のせい……ですか?」


「彼は何かを見透かしたような言い方をしていた。私が王国に発表している研究とは別の目的があるんじゃ無いかと、疑っているようだね」


「実際事実ですからね」


 まあ、確かにその通りなんだけど……


「ただ、なぜオレメス大臣はミズミ博士の事を、急に疑いだしたんでしょうか?前回の研究発表会の時にも、オレメス大臣はいましたが、今日みたいな感じでは無かったような……」


「私の顔のせいかな?」


「ミズミ博士、そこまで変な顔じゃ無いと思うけどなぁ。かっこいい顔立ちをしていますし」


「私の顔立ちは問題じゃ無い。彼はこう話したんだ。”何やら今日は顔色が良いじゃないか。何かいい事でもあったのかな?”とね」


「確かに、クヨちゃんを蘇らせてからの、ミズミ博士は生き生きしているというか、ちょっと変わったなぁとは思いますけど……」


「私はオレメスとは長い付き合いでね。若い頃から彼とは交流があったんだが」


「今でもミズミ博士は十分若いですよ!」


「あははっ。ありがとう。話を戻すと、オレメスは元々直系の王族では無くてね。努力であの地位まで上り詰めた人間なんだ」


「オレメスさん、あんなに偉そうにしているのに、王族じゃ無かったんですか!驚きました」


「見た目だけで人を判断するのは良くないよ。その過程で、彼は多くの人間を見て来たんだろう。相手の表情、しぐさなどで、考えを予想出来るんじゃ無いかな」


「す、凄いですね、オレメス大臣」


「あくまで私の予想だよ。彼はそうやって、王国にとって本当に必要な人間なのかを、見極めて来たのだから」


「ですが、ミズミ博士。どうしてオレメス大臣は、あんなにぷんぷんしていたのですか?」


「彼が言っていた通りだよ。ナグナ王国は私の為に、王都に研究所を建設し、私の研究に多額の投資をしているのだ。突然王族の中には投資の必要性や、私の研究成果に疑心を抱いている者もいるかもしれない。オレメスみたいにね。ナグナ王国が認める程の研究成果を提供し続けないと、投資を打ち切る、そう言いたいんだろう」


「なるほど……ですが、ミズミ博士。今回の研究発表会だって、王族たちが認める程度の成果はあったはずですよね?」


「もちろん王族の連中が納得する程の研究はしているつもりさ。だが、オレメス大臣には見抜かれてしまっているようだ」


「それって……クヨちゃんの事ですか?」


「ああ、あんなに素晴らしい研究対象はいない。王国の研究から意識が離れている事は認めるよ。それ程偉大な事を私は成し遂げたんだ」


「ミズミ博士の長年の研究成果がようやく実りましたからね!ようやく……ようやく……ミズミ博士の悲願を達成する事が出来るんですから!」


「私の悲願……か。確かに、私の野望を達成する事は出来た。だが、まだ分岐点に過ぎないよ。まだまだだ」


「きゃあ!ミズミ博士、本当にかっこいいです!私、ミズミ博士の助手で本当に良かったです!」


 助手がはしゃいでいるのを微笑ましいと思いつつ、私はこれから”先”の事を考えていた。

 クヨを蘇らせた、それはいい。さて、その先は?一体何をすればいい?

 まだまだだ。まだ、私は先へ行ける。

 魔族の少女、クヨ。彼女がいれば……!


 ***


 私は城での発表会を終えて、私の研究所へと帰った。

 助手は何か別の仕事があるらしく、別行動となった。

 私は研究所の前に立つ。

 本当に今日は疲れた。ゆっくり休みたいな。



「ただいま、クヨ」


「おかえり!ミズミなかせ!」


 帰ってくるなりクヨが抱きついてくる。

 

「クヨ!お腹空いちゃった!」


「そうか、何か料理でも作れたらいいんだが……私は料理が苦手でな……おばさんから貰ったパンが……あったか?」


「ミズミはかせ?」


「うん?ああ……クヨが……ちょっと……眠い…」


 唐突な眠気で私はその場に立てなくなる。フラフラとした後、壁に頭をぶつける。


「ううっ…」


 私は、そのまま……



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