第9話 私と罪
私はミグさんを連れて医者へやってきた。
「ふむ、そこまで大きい症状は無い、後遺症も無いだろうから、安心しなさい」
「そうか、良かった」
とりあえずミグさんの命に別状がない事が分かっただけで一安心である。
私とミグさんは外へ出る。
「本当に申し訳ありませんでした」
「いいよいいよ、まだ子供だしね」
ミグさんは明るく言うがそうでは無かった。
クヨは魔族だ。
数百年前は魔王軍の幹部として、魔物達を率いていた危険な存在である。
そんな危険な存在である彼女を私は、禁忌を破り、この世に蘇らせた。
それだけでも大罪なのに、それが原因で人が亡くなっては償いきれないだろう。
危険は承知の上だったのだが、私はとんでもない過ちを犯したのかもしれない。
今になって、そんな事を考えてしまった。
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ミグさんの家まで付き添った後、私は研究所へと戻った。
「クヨ、いるか?」
研究所には助手を待たせてある。
クヨは助手の事は仲間だと思っているし、大丈夫だと思うが……
「あら、お帰りなさい、ミズミ博士」
助手が迎えてくれた。
「クヨは?」
「帰ってくるなり、部屋に入ってしまいました?私が目に入っていないみたいでした」
「そうか……」
「ミズミ博士……何かあったんですか?」
助手が心配そうな顔で訊いてくる。
「ちょっとトラブルがあってな…人を襲いそうだったんだ」
「そうだったんですか…まあ、魔族ですしね……」
「うむ……」
「やっぱり一回ちゃんとクヨちゃんと話した方が良いですよ。彼女もいきなり目覚めてまだ理解出来ていない事が沢山あると思いますし」
「ああ、そうだな。話さないといけないな」
私自身にもクヨに対しての罪悪感というのはあった。
クヨは死んだのだ。
それを私は私情で蘇らせた。
クヨの意思とは無関係に。
クヨだって理解出来ていないだろう。
自分が何者なのか、なぜ生きているのか?
やはりクヨに真実を伝えるべきだろうか?
それを知った時、クヨはどうなる?
一体どう解釈し、どうする?
魔王軍の記憶が蘇り、かつての力や思想を取り戻したら、人類を滅ぼすかもしれない。
それがクヨの意思ならば……
私はそんな事を考えていた。
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