第7話 魔族と助手
散歩と行っても、あまり人通りが多い所は通りたくないな。
厄介事に巻き込まれるのは勘弁だ。
そんな事を考えていると……
「ミズミ博士、いますかー?」
若い女性の声が入り口の方から聞こえてくる。
不味い……彼女にクヨの姿を見られたら…
彼女は研究会から派遣されてきた助手の少女である。
彼女の目的は私の監視と研究成果の報告だが、彼女は余り真面目に仕事に取り組んでいない。
彼女は非常に優秀でよく研究に協力してくれる。
私の日々の生活の中で関わりがあり、唯一信頼出来る人物である。
「あ、こんな所に、ミズミ博士、返事ぐらいして下さいよ」
「す、すまない。ちょっと出掛けようと思っていてね」
「出掛ける……?博士という肩書が無ければただのニートのミズミ博士が?」
「ニートって……私だってたまには出掛けるぞ」
「フフッ冗談ですよ、すいません」
助手が笑いながら言う。
まあでも実質世間一般から見れば、ニートみたいなモノか。
「そうだ、君に見せたい事があるんだ」
「見せたい事…?」
私は助手が来た際に隠れさせておいたクヨを呼ぶ。
「クヨ?来ていいぞ」
「ミズミはかせ、わかった」
クヨがぴょこっと姿を見せる。
やはり見知らぬ人物がいるからか、警戒しているようにも見えた。
「博士……この娘は?」
「以前君にも話しただろう。数百年前に滅ぼされた魔王軍の魔族の少女だよ。私はクヨと呼んでいる」
「わあ、すっごい。本当に成功するとは。計画書は読みましたけど、実現させるのは正直難しいと思ってました、流石天才のミズミ博士」
「ハハハ、私にはそんな事容易いよ」
助手はまじまじとクヨの事を見つめる。
クヨはおどおどと私の後ろに隠れている。
「ほぉ…歴史書の通りの見た目ですね。頭に生えたツノに可愛らしい尻尾…これが魔族ですか……興味深い」
「ミズミはかせ、このひとだれ?」
「私の助手だ。研究を手伝って貰っている」
「じょしゅ……なかまってこと?」
「仲間…か。確かに仲間と言えば仲間かもしれないな」
「なかまならじょしゅもクヨのなかま!」
クヨが嬉しそうに助手の元へ駆け寄る。
仲間と分かった瞬間、警戒が解けたらしい。
「あら、魔族って怖いイメージがありましたが、案外可愛らしいですね」
クヨは助手に飛びついており、助手がクヨを嬉しそうに抱えている。
「可愛らしいと言っても魔王軍の魔族だからな、扱いには気をつけたまえ」
「分かってますよ。ミズミ博士、やはりこの事は研究会には報告しないんですよね?」
「ああ、そもそもナグナ王国では禁止されている事だし、神界の事を信じている連中に知られたら、ただじゃおかないだろうしな」
「ミズミ博士、ただでさえ王族の皆さんに嫌われてますしね」
「それはまあ、仕方ないだろう。この研究所はナグナ王国に建ててもらったのだがら、王族に逆らおうとは思わんよ」
「でもクヨを蘇らせた地点でもう逆らっているような……」
「そこは……君が……ね?」
助手が小さく溜息をつく。
「分かってますよ。研究会には報告しません」
「本当に助かる」
「私もミズミ博士の研究にか興味がありますしね、王族の力で博士の研究が破綻しても困りますし」
「……ありがとう」
私にはある野望…私の生涯を懸けて成し遂げたい目標があった。
その一つが今回のクヨを蘇らせる事なのだが。
王族達の名目上はナグナ王国の歴史研究だが、私の目的は違った。
私の研究によって最悪人類が滅びる可能性も有るのだが、そんなのどうでも良かった。
私の最終目標は助手にだけ話している。
その話をした時、助手は大変驚いていたが、助手も興味があるようで、私の本当の研究については、王族や研究会な他言しない事を約束してくれた。
その目標を達成する為には、何度も言うが、まずはクヨの信頼を得なくてはいけない。
「それじゃあ、留守は頼んだ、クヨと散歩に行ってくる」
「分かりました」
私はクヨの方を見る。
「じゃあ、クヨ、行こうか」
「わかった、ミズミはかせ」
私はクヨを連れ、部屋を出る。
「バイバイ、じょしゅーー」
クヨが可愛らしい挨拶をしながら、助手に手を振っている。
私とクヨは外へと出た。
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