第6話 魔族と痛み

朝食を食べ終わった私(腹痛であまり食べていないが)とクヨ(殆ど食べたのはコイツだが)は、一緒に片付けをする。


「クヨ、食べたお皿をこっちに持ってきてくれ」


「ミズミはかせ、わかった」


 クヨがお皿を持って、調理場へとやってくる。


「おお、クヨ出来たか、えらいぞ!」


「えへへ、クヨうれしい」


 クヨは褒められると機嫌が良くなる。

 人に認められた時、自身の価値を認められた時…か。

 これも機嫌が良くなる時の一つだが、過去のクヨの経験、記憶が影響を与えているのだろうか?


「おお嬉しいか……私も嬉しいぞ……いててて……」


 朝食の食あたりによる腹痛がまだ続いていた。


「ミズミはかせ、いたいの?」


「大丈夫だ、すぐ治る」


「でもいたいのはつらいよ、だめなことだよ」


「ああ、そうだな。痛いのは辛いし、駄目な事だな」


「クヨはミズミはかせの気持ちがよくわかるよ」


 痛い事が辛い事、駄目な事…その気持ちが良く分かる…か。


「いたいっていうのはね、からだがまっぷたつにわれたり、きりきざまれたり、ごうもんかれたりしたときにかんじるかんじょうだよ、クヨ、ミズミはかせの気持ち、わかるよ」


 例えが妙に物騒だな。


「ミズミはかせは、いまなんでいたいの?ごうもんされたの?うでをきりおとされたの?ころされたの?」


「いや、拷問されていないし、腕もあるし、まだ生きている」


「ならなんでいたいの?」


「ちょっとお腹が痛いだけだ」


 原因は私の作った料理にあるのだが。

 外に出るのを嫌う私を心配して、近所のおばちゃんが沢山お裾分けをしてくれるが、それを放置して腐らせたのが原因なんて言えない。

 しかもそれを料理したのが原因なんて言えない。

 私は研究に没頭する余り、何日も食事を取らない事もざらにある。

 いつか死ぬかもしれないけど。


「なんでおなかがいたいの?けんでつらぬかれたから?」


「胃の調子が悪いだけだよ、大丈夫」


「い?」


「とにかく、心配しなくていいから」


 クヨはとにかく痛みに対して興味があるらしい。

 これはやはり……



「そうだ、クヨ。久しぶりに目覚めたんだ、何かしたい事はあるか?」


「クヨ、そとにでたい」


「外か……」


 大丈夫だろうか?

 クヨが生きていた頃とは随分違っている。

 クヨは自分が死んだ事を認識しているのだろうか?

 分からないが、発達した社会をみて何を思うのかは興味があるな。

 だが、ナグナ王国にクヨが魔族だとバレたら厄介な事になる。

 それは、気を付けなくてはいけないな。


「分かった。少し散歩に行こうか」


「うん!」


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 クヨがもし真実に気づいた時、私は殺されるのだろうか?

 クヨはその時、何を思い、何をするのだろうか?

 世界を支配する?

 クヨの力なら可能か?

 そんな世界も興味がある。

 今は平和すぎる。

 もしかしたら、クヨなら退屈な日常を、世界を変えてくれるかもしれない。

 私はそんな事をかんがえていた。

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