第4話 魔族の部屋
クヨに笑顔が戻った。
お腹も満たされて、満足したようだ。
今なら大丈夫だろうか。
私はクヨを蘇らせて、一番やってみたい事が、クヨの過去、すなわち、勇者との関係である。
ナグナ王国の歴史書に残る記述によれば、魔王軍は全員殺されたと書かれている。
その後の”魔族狩り”もあり、魔族が現在存在している可能性は非常に低い。
つまり、クヨが蘇ったという事は、クヨは何者かに殺されたという事になる。
クヨの”ゆうしゃ”という言葉への反応からして、勇者に殺されたと見るのが、妥当なのかもしれないが、真偽は分からない。
私はそれについて詳しく知りたかった。
だが、クヨに勇者について再び言及するとなると、また機嫌が悪くなり、何をやらかすか分からない。
クヨの力は未知数だ。
クヨの怒りの矛先が私に向かえば、一瞬で私は殺されてしまうだろう。
どうすれば……
「クヨ、ねむくなった」
クヨが可愛らしい欠伸をしながら、気怠げそうに言う。
「眠い……か」
クヨはそもそも何百年も眠っていたのだがな。
だが、久しぶりに食事をして、腹が満たされて、本当の意味での、”眠たい”という事だろう。
ふむ、私の研究室には客用の部屋がある。
とりあえず、そこで寝かせるか。
「クヨ、良い部屋がある。私についてきたまえ」
「へや…?ねるばしょ?」
「ああ、そうだ。お前が寝れる場所だ。そこでならいくらでも寝て構わないよ」
「クヨのおへやってこと?」
「ああ、そうだ」
「えへへ…クヨのおへや。わかった、ついてく」
クヨが嬉しそうに言う。
一先ず納得し、理解してくれたようである。
クヨの感情について、推測するて、クヨ自身に何か良い事、メリットがある場合にクヨ機嫌は良くなる。
例えば、先程の経験で言うのならば、食べ物を与えたり、服を与えたり、今回のように、部屋を与えたりすると機嫌が良くなる。
ある意味人間と同じような感覚である。
実際見た目や能力が違うだけで、感情はそこまで人間と変わらないのかもしれない。
「ここがお前の部屋だ、クヨ」
「わあ!ひろい、クヨのへや」
客用の部屋といっても、私は王国公認の天才博士である為、王家の関係者や、研究仲間が使用する場合もある為、それなりに豪華な部屋となっていた。
「えい!クヨここでねる」
クヨが部屋の片隅にあるベッドを見つけると、そこに飛び込み、ごろごろと転がっている。
ベッドが寝るモノだという認識はあるのか。
目覚めてからあまり時間が経っていないにも関わらず、少しずつ記憶は戻り、知能も上がっている。
これならば、早いうちに、勇者の事も聴けるかもしれない。
クヨの機嫌を損わないように最新の注意を払いながら聴くことが出来れば…
「じゃあ、クヨ。ここで大人しくしているんだよ」
「おとなしく……なんで?」
「だって、クヨは眠たいんだろう?ならすぐに寝なきゃ」
「ミズミはかせがいうなら、クヨ、ねる」
もしかしたら、もうクヨは自分が寝たいという意思を示した事を忘れてしまったのだろうか?
自身の部屋を手に入れた喜びを代償に。
とりあえず、私はメモをする為、私の部屋に戻る。
まだまだクヨについて知りたい事は山程ある。
その為には、もっとクヨと親密になり、クヨの信頼を得なくては…
その為にますば何をしようか?
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