M05-10

『そうか、それが答えか』


宮本修(みやもとしゅう)の声とともに金色の『カイラギ』は剣を持ち上げて構える。陣野修(じんのしゅう)のBMD-Z13は間合いを取りながら足を運び、打ち込むタイミングをはかった。一羽のハトが二体の間を割って飛んだ。BMD-Z13は『ライキリ』を大きく振り上げて駆ける。


「うりゃー」


振り上げた『ライキリ』に渾身(こんしん)の力を込めて振り下ろす。


『おりゃー』


金色の『カイラギ』は受けの態勢をとらずに剣を横に引いてからBMD-Z13の胴に向けてなぎはらった。


 二体が交差した瞬間、陣野修はBMD-Z13の腕が伸びたように感じた。『ライキリ』が金色の『カイラギ』の左肩から左わき腹へとぬけた。金色の『カイラギ』の剣がBMD-Z13の胸を切り裂いた。BMD-Z13は金色の『カイラギ』の脇を走り、互いに背中を向けた姿で静止した。


グフ。


陣野修は血の塊を吹き出す。BMD-Z13のコックピットを覆う胸の外殻が大きく裂けてパックリと口を開き、陣野修の体をおおうBMD-Z13の胸の筋肉がそぎ取られていた。BMD-Z13から流れ出る鮮血を浴びた陣野修の顔が露出していた。


 BMD-Z13は金色の『カイラギ』の方へとゆっくりと振り向いた。斜めに切り取られた『カイラギ』の上半身がアスファルトに向けて下半身の傾斜をすべり落ちる。


ドスン。


二つに割られた『カイラギ』の噴き出す大量の血液が金色の体を赤く染めあげていた。


 陣野修はBMD-Z13の切り裂かれた胸のハッチを蹴り上げる。神経接続子を手で引きちぎって外にでた。金色の『カイラギ』のもとへと歩み寄る。


「・・・」


そこに宮本修の遺体はなかった。


戦闘における勝敗は一瞬にして決まる。互いの運動性能や武具のスペックによるところもちろんだが、それだけではない。ことに生身の人間においては。気の力が勝るものが生き残る。陣野修はそのことを学んだ。彼は血塗られた自分の手を見つめる。


「宮本修」


心を持たない体は存在できない。考え、動けるなら彼は最初から『宮本修』だった。ちっぽけな14歳の少年。それが今の彼の姿だった。あふれる感情が涙となってほおをつたう。彼は声を上げて泣いた。

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