M03-03

 頭上を進む陣野修(じんのしゅう)のBMD-Z13に向けて神崎彩菜(かんざきあやな)のBMD-A01は水中銃を二発はなった。細長い棒状のモリが軌跡を描きながらBMD-Z13に向かう。陣野修のBMD-Z13はそれに気づいて小刀でそれを弾いた。体勢が崩れて速度が落ちる。陣野修のBMD-Z13は真下からせまる神崎彩菜のBMD-A01に向けて水中銃をかまえるが、頭から猛スピードで向かってくるので、的がせまく一瞬だが照準に手間取った。


「いただき」


神崎彩菜のBMD-A01はロールしながら減速せずに陣野修のBMD-Z13のはなったモリを回避した。さらに泳ぎを加速しながら水中銃をたて続けに二発はなった。モリがBMD-Z13の胸へと吸い込まれていく。


「うそ」


神崎彩菜のBMD-A01の2本のモリは陣野修のBMD-Z13が抱える水中銃のグリップ部分に突き刺さっていた。


 陣野修のBMD-Z13はくるりと反転し、逆立ちをするような形で彼女のBMD-A01を迎え撃つ。2体のBMDはすれ違いざまに小刀を交えた。


「ちっ」


やり損じた神崎彩菜のBMD-A01は海面に向かって加速し、そのままジャンプした。6メートルもの巨体が海上を十数メートル以上もはねた。ドローンがその姿をとらえて映像を送ってくる。


「うぉ」


指揮車のオペレーションルームで観戦している山村光一(やまむらこういち)が、人魚のような姿をした神崎彩菜のBMD-A01を見て声をあげた。


「カッコイイ。神崎さん頑張って」


山村光一の声援がひびいてくる。神崎彩菜のBMD-A01はイルカのように空中で一回転してからわざと背中から落下して、尾びれで海面をたたいた。水しぶきが高く舞いあがり、海中が泡に覆われた。神崎彩菜のBMD-A01は体をひねって泡のかたまりから抜け出ると、泡に包まれている陣野修のBMD-Z13の背後に回った。


「やるわね」


水中カメラの映像は視界がきかないうえに、さらに泡に包まれてなにも見えなくなった。オペレーションルームでモニターしている陣野真由(じんのまゆ)が解説する。


「泡に包まれたら視界がきかないだけでなく、パッシブソナーはおろか、探査音が吸収されてアクティブソナーもきかない。目と耳を同時に奪う作戦ね」


神崎彩菜のBMD-A01は小刀を握って、後ろから陣野修のBMD-Z13の呼吸器官をつかみにかかる。


「なに」


その瞬間、今度は彼女のBMD-A01が泡に包まれた。陣野修のBMD-Z13が背中の呼吸器官から大量の空気を吹き出したのだ。一瞬、目と耳を奪われた彼女が気づいた時には陣野修のBMD-Z13が背後に回り、片手で体をおさえつけてていた。BMD-A01には小刀があてられており、勝利は陣野修のものとなった。


 オペレーションルームのモニターに陣野修のメッセージが打ち込まれる。


『Z13。A01を制圧』

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