M03-04

「T07より本部へ。アクティブソナーで巨大な物体を確認。こちらに近づいてきています。全長約50メートル。ソナーデータを送ります」


久我透哉(くがとうや)のBMD-T07より送られたデータを園部志穂(そのべしほ)は本部のAIに流して解析に回してから告げた。


「本部より各員へ。模擬戦はいったん中止。各員、戦闘態勢を維持してその場て待機」


「クジラにしては大きすぎるわ。小魚が集まってソナーに巨大な影をつくり出すこともあるし、いったんは小休止ね」


陣野真由(じんのまゆ)はポケットからタバコを取り出して、口にくわえて火をつけた。


「中継ブイのパッシブソナー反応と合わせて確認。AIは巨大な呼吸器官による推進音と断定。未知の『カイラギ』です。全長53メートル。20階建てのビルに相当する大きさです」


園部志穂がモニターに映し出されるAIからの解析データを伝えた。陣野真由は火をつけたばかりのタバコをコーヒーカップの中に投げ入れた。


「シロナガスクジラでもせいぜい30メートル前後。地球上にそんな巨大な生物が存在できるとは考えにくい。複数の『カイラギ』と言う可能性もあるわ。再確認して」

陣野真由の指示に、山村光一(やまむらこういち)が反論した。


「陣野教授らしくないですよ。『カイラギ』が宇宙生物ならありえるんじゃないですか」


「『カイラギ』の遺伝子パーツは人間がもともと持っていたもの。山村刑事、あなたは説は人類が宇宙人だって言うのと同じことよ」


園部志穂が二人の議論をさえぎって告げた。


「再解析終了。間違いありません。全長53メートルの『カイラギ』です」


その時、20階建てのビルと同じくらいの巨大な『カイラギ』が海面を跳ねた。


「ドローンの搭載カメラを最大望遠にします」


オペレーションルームのモニターに、映像が映しだされる。背中に巨大な渦巻き貝の形をした呼吸器官を、いくつもくっつけた潜水艦のような生物がそこにいた。


「そんな。・・・」


陣野真由は絶句した。


「本部より、BMD各員へ。現場より退避。撤退してください」


「ほらね」


山村光一は当然と言うような顔をした。陣野真由がマイクをとる。


「本部より、BMD各員へ。撤退は中止。これより、未確認の『カイラギ』の調査を開始します。BMD各員は『カイラギ』に接近してゴーグルに搭載したカメラを使って記録をとりなさい」


「陣野教授、危険すぎます」


園部志穂が叫ぶ。


「巨大生物はその巨大さゆえに、外敵から襲われることはないわ。映像をみても攻撃をしかけるような器官は見当たらない。あんな巨大な形態が存在しなければならない理由を知りたいわ」


陣野真由は園部志穂に答えてから、山村光一にたずねた。


「山村刑事。アニメらなあれをどうやってたおすの」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る