第7話
並木道を歩く。歩く。「ここかな」と太樹は脚を止めた。
まだ誰もいない。もちろんアキナはいない。腕時計を見つめた。
8:14 秒針が回っている。とてもゆっくり回っている。まだ45分もある。その時の想いが時間の流れを変える。
太樹は学校まで行こうかなとゆっくりと歩き出した。20分ほど行ったら戻って来よう。
時計を見つめた。8:16→8:36だなと決めて歩き出す。散歩ではない。ただ太樹は前を見えて歩く。
祖父のものとはまるで違う。景色に想いを乗せて見つめることはなく。太樹のは本当に時間潰しだ。
時計を見つめるもうひとりいた。ただ太樹と違うのは時間があっているか不安なアキナだ。
「なに? お姉ちゃん どこに電話してんの?」
「いいでしょう わからなくなるから 話しかけないでよ」
アキナは117に電話をしている。腕時計の時間合わせだ。
末っ子の妹には優しい両親。立ち回りがうまい妹に時々嫉妬する。
「ミホの言う通りだよ 電話代高いんだから 長くかけないで」
「わかったよ もう少し」
「・・・」
「うるさいな寝てられないだろう」
リビングで寝ていた父が突然怒り出す。そんな時代だ。
「ほら お父さんが怒ってるから電話切りなさい」
仕方なく電話を切るとアキナは時計の時間合わせをすることなく家をあとにした。
説明をしない人が多かった時代。
80年代。
アキナは黒のワンピに赤いスカーフを首に巻いて友達から借りた赤のパンプスを履いている。
誰が見てもデートだ。妹のミホはそれがわかっている。誰となのかも。
「お姉ちゃん 最近全然なにをしているか?わからないよね
」
「そうね」
すぐに時間が遅れていく電池時計。買って何年もすれば尚更遅れていく腕時計。
スマホも携帯もない時代。時計は必需品だった。待ち合わせは少し早めにいくものだった時代。
仮面ライダーか 宇宙戦艦ヤマトの乗組員 不動明ぐらいしか首元に赤いスカーフと思いつかない太樹。
黒のワンピに赤いスカーフを巻いたアキナを見つけるとその場でジャンプする。
太陽を背に受けて黄色く染まる髪。
アフロマンの太樹。そもそも髪の毛が細い上にアフロヘアーにしているから太陽光で金髪に染めているようにみえるのだ。
「お母さん あの風船ほしい」頭にナレーションが入る「お姉ちゃんだから 我慢しなさい ミホも欲しくなるでしょう」
「アドバルーンだ」と口に出すアキナ。
『あれが欲しい』とアキナ
「
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