第4話
「おはよう 太樹」
「おはよう ケイスケ」
太樹は鞄を机の上に置くとケイスケが立ち上がって話しかけてきた。ケイスケは自分の前の席になったこの学校での友人の一人だ。
「噂が立ってるよ」
「なに?」
「この学校の誰かが ボコボコにしたって」
「だれを?」
「暴走族のメンバーを」
「なに? 暴走族って チームの名前は?それに誰がやったの?」
「あなた」
「なに あなたって ケイスケ」
真面目だなと太樹は思った。
「石井 そうなの?」
「知らない」
「そう・・・俺じゃないよ」
「本当に」
「ミホまでいう。見た目で判断するなよ 俺は優しいんだよ アキナちゃんにも伝えといて」
「自分で伝えなよ」
キツイ目つきを感じる。石井だ。太樹がミホと話すと機嫌が悪くなる。わかりやすい男だ。
つまらない授業が過ぎていく。
「先生 熱がありそうなんで保健室に行っていいですか?」
「また お前か ・・・わかった静かに後ろのドアから行きなさい」
「はい」と答えると太樹は教科書とノートを机にしまい、ゆっくりと席を立ち教室を後にした。
校舎の端にある教室を出ると、太樹は笑顔になった。圧迫感のある教室 沈黙と全ての人が黒板を見つめノートを見るその状況がたまらなく嫌だった。
太樹は我慢できない。閉じ込められたり、支配されたり、管理されるのが我慢できない。
実際に体調も悪くなっていく。その前にいつもてをあげるのだ。
階段を降りて中央の校舎に出て保健室のドアを開けた。
ガチャと音をたてて開くドア。
ドアを澄ました顔で開けた先に、なにその顔と言いたげなアキナの顔があった。
澄まし顔が一気に微笑む。
「また 熱?」
「そう アキナは?・・・アキナさんは?」
「私のことはいいけど・・・太樹 あなた 目立ちすぎだよ」
「例の暴走族って話?」
「電車中で二人をやっつけたでしょう」
7・・・あっ 思い出した 確かに でも
相手が軽かったから」
「太樹 理由なんていい しばらく学校に来ない方がいいよ」
「・・・先生 熱が出てきた」
保健室の先生が体温計を持ってきた。太樹は受け取ると「太樹 貸してみな」と先生に聞こえないような声でアキナは声をかけると
アキナは体温計を大きく振ってから机のに下に隠して体温計(水銀型)の先をつま先で二度強く指先で弾いた。
「はい お大事に」と太樹に手渡した。アキナは立ち上がる。
「アキナ ありがとうゴンザレス」
「なに?ゴンザレスって」
「誰だろう?」
「・・・はいはい 太樹 気をつけなよ」
「ありがとう アキナちゃん」
「・・・またね」アキナは太樹に指を二本曲げてお別れの挨拶をした。
アキナがドアを開けて出ていく。太樹は振り返り、両手をダラリと下げてため息をついた。
「大丈夫? 太樹くん」
「大丈夫じゃないです それと心配ことがあって」
「担任に相談してみたら?」
「僕 男の子なんで 泣き言はいいません」
そういうと、太樹は脇から体温計を取り出した。
「まじで 39.8」
「本当に 貸してみて」保健室の先生は太樹から体温計を取り上げると大きく振った。
「もう一回測ってみて 」ゆっくりと手を近づけて太樹のおでこを触った。
「少し熱いわね はい」と先生なら手渡された体温計を受け取るとすぐに脇にいれた。
「まだ熱いようなら 救急車を呼ぼうかしら 太樹くんの両親の連絡先を担任に聞かないと」
矢継ぎ早に言葉を繰り出す慌てている。保健室の先生の慌てぶりに、『まずいなとアキナちゃん』って心の中で太樹は呟いた。
滅多に起きないことらしく、まだ右に左に彷徨い歩いている。時間が経つのが遅いのか、保険室の先生は時たま腕時計を見つめていた。
器用な太樹は脇に右手を入れて、手のひらに体温計と包むと先生の視線が外れた時に脇から右手を出して右の膝上に甲を上に置いた。
隙を見て体温計の温度を見るとナイロンでできたクジラと呼ばれるボンタンズボンの上で擦って温度を上げるとチラッと温度を見て脇に戻す。
とても手慣れたモノだ。
「もういいかしら」
「37.8度です 家は近いんでなんと帰れます」
「そう そう 見せて
本当ね これなら早退届を書いて早退させても・・・問題ないわね 気をつけてね」
「はい ありがとうございます」
そう言って太樹から体温計を受け取った。
太樹は指示された早退届に必要事項を書くと
「私が担任の先生に渡して置くから 気をつけて帰りなさい」
りょうひざに両手を置いてゆっくりと立ち上がった。クラクラする感じがしたが、気のせいだと保健室を出ていった。
一旦教室に戻って鞄を持つと
「どうしたの? 太樹くん」
「ケイスケ 熱がある 早退届を出したんで帰るわ」
「そうなの?」
「優しいね ありがとう アキナちゃんによろしく」
「自分でいいなよ」
「病人にキツイね」
そういうと大股で歩いて教室の後方のドアを開けた。
数学の担当の先生にすれ違う。
「どうした?」
「体調が悪くて」
簡単に言葉を交わして階段をスタスタと太樹は降りていった。
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