第14話 何はともあれ依頼件数
あいつらちょろ過ぎでは?
とは言え、寄って来る数を調整出来る訳でもないから、簡単に捌ける自信が無かったら、反対に窮地に陥るだけだと思う。
後、もっと強い魔物が居た時には危険過ぎる。
なので基本に忠実に。森は静かに歩きましょう。
耳を澄まして、辺りを伺って。いわゆる索敵という奴をマスター出来る様に頑張りましょうと、妖精達が口を噤んでくれているのは分かるんだけど、目配せし合ったり、頷いたりしているもんだから、気になって仕方がない。
無心無心と心の中で唱えて、バケツ(仮)二杯目の薬草を採取していく。
出来れば自分用に使いたいなーと思うけれど、薬を作るための道具すら持っていないし、作り方も知らない。
調べ物はネットなんて当然無いから、誰かに師事するか、書物で調べるかなんだけど、こっちの世界では弟子入りは簡単な事では無いらしい。一子相伝的なあれらしくて、さすがにそれはなーと思うので、書物を読む事にしたい。
そしてここでも問題です。
図書館に入るにはギルドランクが鉄級以上の必要があるらしい。
またギルドランクか。
とも思うけど、結局は信頼なんだよなー。
印刷技術とかのない世界では、書物は割りとお高い物なので、ギルドランクの他に保証金を預け無ければ建物に入る事も出来ない。
そして基本的に貸し出しはしていない。
汚損破損も弁償で、物によっては保証金所じゃない金額が請求されるとのこと。
まあ、ギルドの資料室は所属していれば利用出来るから……。
冒険者ギルドだけあって、内容に片寄りはあるけど。
後は、初心者のための技能講習をやっている。
有料だけど。
有料なんだ……って思ったけど、無料だと真面目に聞かない奴が出るんだって。
なので技能講習を幾つか受講して、昇級までに必要な依頼件数を稼いで。
討伐は今日ので一応クリアしてるから、直近でやるべき事はそんな感じなのかな。
「よし、帰ろう」
お昼ご飯を食べてから多分
バケツ(仮)二杯目は早々に一杯になって、その後は森の中で色んな植物の種を集めたりしていた。
種があればララが育てる事が出来るらしい。今使わなくても、種は嵩張る物でも無いし、持っていても邪魔にはならないだろう。
薬草と、偶に魔力草と、後はベリー系の幾種類かと。
種を集めるついでに、森の中を探索して回った。
更紙にざっとした地図を描いて、薬草の分布とか水場とか。
この地図が必要になる事が有るかと言うと、分からない。
でも地図を描いて地形を把握したり、植生を確認したりする癖を付ける事は、何れ役に立つ気がする。
ついでに索敵の練習もしていたけど、つい妖精達が見る方向を確認してしまう様になって、あんまり練習にならなかった。
終いには妖精達もこれでは駄目だとフェイントを掛ける様になって来て、何の訓練をしているのか謎な状態になっていた。
そんなこんなしながらも、途中襲ってきた小鬼を討伐したので、手元には魔石が五個ある。
薬草は多分バケツ(仮)一杯で五十本は有るだろうから、二杯分で百本。
んん? 依頼件数これで結構稼げるのでは?
金額的にも何時もの三倍ぐらいじゃないだろうか。
バケツ(仮)は一つは自分で持ったけど、もう一つはエドワードが運ぶと言うのでお任せする事にした。
属性的に重さを調整したりとかするのは得意らしい。
まあ自分も力が強くなっているから、薬草とちょっとの水が入っている程度の重さなんて、大して負担には感じないのだけれど。
太陽の方向と、来た時に見た景色を擦り合わせて、王都の方角を当たりを付ける。
まあ、大幅に間違ってたら眷属達が何か言ってくれるだろうし、そうでなかったとしても、王都近辺は王都に繋がる主要街道が通っているから、交差するように移動すれば何れ突き当たる。
それに徒歩一時間ぐらいなら、ちょっと開けた所に出れば、王城が丘の上に建っているから見えるんだよね。
帰りはさっさと移動すると決めていたので、移動速度を怪しまれない距離までは走って戻った。
全力でという程では無かったのに、十分掛かりませんでした。
地味に俺凄いな。使いこなせて無いけど。
それはそうと、どうせなら飛ぶ練習もしなければ。
宿暮らしで街中だけだと練習する場所が無かったから、これからは採取に出た時にでも人が居ないのを確認してこっそりやろう。
「あ、ジョンさんだ。こないだ振り~」
身分証有の受付に並んだら、担当の兵士がジョンさんだった。
王都に来た時に身分証無しの受付をしてくれた、ちょっとやる気が無さげに見えるけど実は世話焼きで子供好きのおっさんね。
「お、坊主。……それなりにやれてるみたいだな」
上から下まで俺の格好を見て、うんうんなんて頷いている。
相変わらず心配しいだな。
「ちゃんとやってるよー。それよりご飯まだ奢って貰って無いよ~」
ギルドカードを手渡しながら、軽い感じで言う。
「そうだな~。じゃあ仕事終わったら飯でも食いに行くか? 宿に迎えに行くぞ」
「はーい。お薦めされた宿に泊まってるから、お願いします」
そんな会話をしている間も、次々と人がやって来るから、早々に切り上げて冒険者ギルドに依頼の報告に向かった。
バケツ(仮)一杯五十本ぐらいだと思っていたら、それよりもかなり沢山入っていた。
合わせて百五十本ぐらいになったから、依頼件数も大幅に稼げてうまうまでした。
まあ眷属分だと考えると五人でだからそれ程でもないんだけど。
眷属の成果を全て吸い上げる悪い主人です。
まあ、後一回採取に行ったら昇級に必要な要件満たせそう。
街中の依頼はそれはそれで楽しかったけど、昇級しないと出来ない事が多いのだから仕方が無い。
ゴブリンさんには尊い犠牲になって貰おう。
「待たせたな~。何か食いたい物あるか~?」
夕方の鐘が鳴って門が閉まったから、宿屋の受付前に置いてあるベンチに座って待っていたら、緩い感じでジョンさんが仕事を終わらせてやって来た。
軍服から上着を脱いだだけとか、兵士って事を隠す気の無さそうな恰好だけど、まあ門番何かやっていれば隠してもバレバレか。
「うーん。王都に来てからずっと露店で持ち帰りばっかりだったから、シチューとかスープとか汁物が美味しいお店が良いな」
眷属達と食べれないのが寂しくて、ついテイクアウトして宿の部屋で食べていたんだよね。
「お~。じゃあ煮込み料理の美味い店があるから、そこに行くか~」
そう言って出発するジョンさんの後を、出来れば妖精達にも味見させて上げれるような店だと良いなあと思いながら付いて行った。
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