第42話 死刑執行①
裁判の全てが終わり早速刑が執行されることになった。
刑の執行は裁判の判決が出た順番であった。
「ひぃぃぃぃ!! 死にたくない死にたくない!!」
刑場に連れ出された貴族が泣きわめいた。この貴族はエミリアが首を落とされたときに閲覧席で拍手喝采を叫んでいたのだが、その事はもはや忘れていたようである。
刑場にはザルブベイルの者達が死刑を眺めている。その目には憎悪と軽蔑の眼差しが多分に含まれている。
裁判が行われるまでの一週間のうちに各領を攻め滅ぼしたザルブベイル領の者達も帝都へやって来ていた。ザルブベイル領の者達は自分達を地獄に叩き落としたフィルドメルク帝国の者達の死刑が行われる瞬間を心待ちにしていた。
「この者はザルブベイルの虐殺に関わった罪でこれより処刑される。なお、この判決は
刑場でやや演技じみた口上を述べる処刑人に観客達から声援がとんだ。その声援の大きさにより死刑囚の慈悲を乞う声は完全にかき消されてしまったのだ。
処刑人は周囲を見渡すと片手を上げる。すると興奮した観客達が少しずつ静かになっていく。
「それでは死刑を執り行う」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
処刑人の宣言がなされると四人の男達が進み出た。その中の一人が戦槌を持ち、もう一人は油の入った木桶を持っている。残りの二人が貴族を押さえつけると泣き叫ぶ貴族の両腕と両足に容赦なく戦槌を振り下ろした。
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
戦槌が振り下ろされ両手両足が潰されると貴族の口から絶叫が放たれた。非常に哀れさを感じさせる絶叫であったがザルブベイルの中から制止を求める声は一切上がらなかった。
「よし、それでは次だ」
処刑人の言葉に四人の男達は頷くと動けない貴族の体に油を塗りつけていく。
「ま、待ってくれぇえぇ!! 止めてくれぇぇぇ!!」
貴族の哀願に処刑人の男は冷たく見下ろしたまま言い放った。
「我らも同じ気持ちだったぞ。貴様らと違って無実だったのだからなおさらだ。お前は冤罪ではないのだから甘んじて受けろ」
処刑人の言葉に貴族は何も言えない。ただ涙を流し慈悲を乞うだけであった。
「ざまぁみろ。俺の家族をあそこまで惨たらしく殺したお前らだ。絶対に許すものか」
処刑人は冷たく言うと容赦なく油が塗られた貴族に火をつけた。かけられた火はあっという間に燃え上がると貴族の体を炎が包んだ。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
火をかけられた貴族は苦しさのあまりに暴れ回る。両手両足を砕かれてもまだあそこまで動けるというのは驚きであった。
その光景を見て観客達は大いに盛り上がった。それは異常な光景と言えるだろうが、灼かれる貴族に同情する者など誰もいない。
貴族の動きが段々小さくなっていきやがて全く動かなくなった。すでに黒焦げとなっており生前の彼の面影などどこにもない。
「さて……と」
完全に動かなくなった貴族に処刑人が瘴気を与えると貴族の体が動き出した。起き上がった貴族は事情がわかっていないようでキョロキョロと周囲を見渡していく。瘴気が貴族の体を覆い生前の姿を形成すると貴族は絶望の表情を浮かべた。
「ようこそ、死後の世界へ」
処刑人が嫌味たらしく言うと事情を察した貴族は口を開いた。
「うわぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁああっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
貴族の絶叫は音程が大きく変化しそれが貴族の絶望の大きさを示しているようであった。
死が決して救いでない事を貴族は本能的に察したのである。
「次を連れてこい!!」
処刑人がそう言うと次の死刑囚が姿を見せる。その顔は完全に絶望に染まったものであった。
それから三時間もの間、粛々と刑が執行され、死刑囚はザルブベイルの憎悪の視線に晒され、地獄の苦しみを受けて絶命した後にアンデッドとなったのである。
そして、いよいよ皇妃と側妃が登場することになったのである。
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