6-15 ”精霊と自然の恵み”停










「失礼します!……遅くなって申し訳ありませんでした」



ハルナとサヤがいる部屋に、この町での協力者である材木屋の店主が戻ってくる。

その後ろには、サヤとハルナに見覚えのある男が立っていた。




「遅くなりました……私がこの店の責任者の”ブロード”です」




ハルナはまたしても知っている人物に対し声を出しそうになったが、この世界はまた別な世界であると思い出してそれを止めた。




「……どうかしましたか?私に何か?」




ハルナはずっとブロードのことを見つめていた、それが気になってブロードはハルナに声をかけるがその雰囲気は初めて会った人に対するソレだった。




「い……いえ。知り合いに似ていたんで……あの。”フライヤ”さんっていう女性はご存じないですか?」



「フラ……イヤ……ですか?申し訳ありませんが、存じ上げないですね。あなたの国の方ですか?」



「え?えぇ……そうです。やはり違う方ですね……失礼しました」




そう言ってハルナは照れ笑いを作り、その裏であんなに仲の良かった二人の姿を思い出し、あの二人がいないことを思うと胸の中がチクチクと痛んだ。





「で、ステイビル王子はいま?お身体の調子が良くないと聞き、裏で薬草師を待機させておりますが」



「うん、ステイビル……っと。ステイビルさんは、落ち着いたよ。ただ、今までの長旅と病気で体力が落ちているだろうから、少し休みが必要だね」



「落ち着いた……?それはもう、治ったのですか?」



「それは判らないね。私たちも知っている中で、できる限りのことはやったけど、後はどうなるかはステイビルさま次第じゃない?」



「あなた方は……一体?ステイビル王子は、かなり闇の力に犯されているとオリーブ様から聞きいておりました。それが改善したとは……どのような方法で!?」




サヤは”しまった!?”と感じた。


ステイビルの症状はあまり知られていないと思っていたため、適当なことを言ってこの場を誤魔化すつもりでいた。

その背景には、この世界でサヤとハルナの能力は隠しておきたいという考えがあった。


他所の国からやってきたものが、普通の人間の力以外の能力を使えるとなれば、怪しまれたり利用されたりすることになるだろうとサヤは考えた。

それに、二人はこの世界とは全く違う世界から来ていることも、この世界ではまだ誰も知られずにしておきたかった。



「あ、あぁ。アタシたちの国には……そう!特別な祈りがあるんだよ!効けばラッキーだし、効かないこともあるけどね。今回はうまくいってよかったよ!!」




「ほぉ……貴女の国にはそんな秘術があるのですね。ぜひ、その力お見せいただきたいですね」



「それがね、他の国の人に見せちゃいけないっていうルール?決まり?があるんだよ。その儀式を人に見らえれたら、その力は消えてしまうんだ。残念だけど……ね?そうだよね!?」




サヤはハルナに視線を送り、この意見に賛同するように求める。

ハルナ自身も、サヤが何を言っているのかわからなかったが、この場はウンウンと頷いて見せた。










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