6-16 勘違い
ブロードがサヤの言葉に納得し、次はサヤからブロードに質問を投げかけた。
「この国……いまどんな状態なの?確か……王選は終わったんだよね?」
「はい。王選はステイビル様の双子の弟、キャスメル王が王座に座られております」
「フーン……さっきそこの男に聞いた話だと、アンタたちはステイビルさんを支持してたってことだよね?それにはなんか理由があったの?ほら……今までステイビルに金をつぎ込んできたとかさ」
少し煽り気味な言葉も混ぜながら、サヤはこの者たちがなぜステイビルを支持しようとしていたのかを聞いた。
「ステイビル様に支援をしていた……そういう面では間違ってはいません。ですが、それは理由があってのこと。そのために我々は出来る限りの支援をステイビル様に行って参りました。ですが、それは……この国をきっと……ステイビル様ならば……良くしてくれるだろうと……我々は……」
「ブロードさん……」
ブロードの声は、本当に悔しそうでこの王選の結果を受け入れられなさそうな感情が含まれている。
それを感じ取ってか、隣にいた男がブロードを気遣うように声をかけている。
「キャスメルさ……いえ、キャスメル王はそんなに……えーっと……悪い人なんですか?」
「あなた方は……そうですね。他の国から来たのであればある程度の事情は知っておられるかもしれませんが、キャスメルる王についてお話ししましょう……」
そう言ってブロードは近くにあった木でできた丸椅子を引き寄せて、腰掛けてハルナたちと向き合った。
「初めはキャスメル王はお優しいお方でした……双子ではありますが、ステイビル様を慕いいつも後ろに付いて回っていたのです。そのお姿はほほえましいものでした」
ハルナはその話を聞き、この部分は前と同じだと判断した。
そのまま話しは続き、徐々に知っているものとは変化をしていく。
それは、”ハルナ”の存在が出てこなかったからだと気付いた。
ハルナが知る記憶は全て自分が見てきたものであり、”もしも自分があの場所にいなかったら”などということは考えたこともなかった。
(この世界はもしかして……アタシがいなかった場合の世界!?)
だとすれば、ハルナはオリーブに対してはその地位を奪ってしまったことになっている。
しかし、こんな未来が待っていたのなら……果たしてそれはオリーブやエレーナ、ステイビルたちのために良かったのだろうか……
「あの……大丈夫ですか?具合が悪くなったのですか?」
ブロードの声にハルナは、自分の思考の中から呼び戻された。
「あ、いえ。大丈夫です……はい」
「そうですか……ならば、その続きを。そして、ステイビル様はキャスメル王の妨害を受け、全ての精霊の加護を受けることは適わず……」
「ちょっとアンタ。そういうけど、そのキャスメルってやつが妨害したっていう証拠はあるの?あるんだったら、それを元に異議申し立てすればいいじゃないの」
「いや……それは……」
その反応で、ブロードが言う妨害がキャスメルのものによるかは不確定であることが分かった。
だが、住人がステイビルたちに偽の情報を流したりしているところまでは掴んでいた。
しかし、それが住人の意思によるものか、誰かに指示をされたことかははっきりと分かっていない。
王選に関する情報で嘘を告げる事は重罪とされているとハルナも記憶している。
だが、それに関しては逃げ道がないわけではなかった。
――勘違いしていた
そう言って、そのことが証明されれば罪には問われない。
今までは、そういったものはいなかったが、今回は勘違いしている住民が多数いたとのこと。
「そ……そんなぁ」
ハルナは、そんなことが行われているとは信じられなかった。
「そんな……ステイビルさんが……一体何をしたっていうの」
ハルナの口から、そう言葉が零れ落ちた。
勿論ブロードたちも、ハルナと同じ気持ちだったがこれは戦っていかなければならないことだとステイビルに期待する者たちが団結をした経緯だった。
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