6-14 やさしいちから







ハルナはサヤの指導のもと、ゆっくりと目を閉じて呼吸を整えている。




「……はぁっ!?何これ!?」




すると意識の奥に、ハルナの知らない感覚が眠っていることに気付いた。




「こ……これって?……フーちゃんの!?」





ハルナはほんの数日前まで一緒に過ごしていた、契約精霊のことを思い出した。



世界が変わってから精霊の力は消えてはいないが、いつも騒がしく可愛かったパートナーがいなくなって寂しさを感じていた。

初めにその事実を知ったときは、涙があふれて止まらなかった。

あのスーツの男が一体何をしたのか分からないが、オスロガルムを倒した後から今までの全てがあるようで無くなってしまっていた。


そんな中で、フウカが残してくれた感覚……ハルナは胸の前でかすかに感じたそのぬくもりを両手で包み込んだ。




「ほら……何ぼさっとしてんの。使い方分かったんなら、あの光当ててくれない?ピカっとさ」




サヤは、横たわるステイビルの身体をうつ伏せにさせて背中の瘴気を魔素へと還していた。

その成果か、酷いホクロのような黒い痣はうっすらと肌の色を取り戻していた。


サヤのそんな言葉にハルナのいい思い出は、霧のように消えていき今やるべきことを思い出した。




「ちょっと待って……なんとなくだけど、わかった気がする」





ハルナは、サヤが薄くしてくれていた痣の上に掌を近づけて、フウカのやっていたことを再現しようとした。

だが、そこから出てきたものは光の粒が詰まった砂時計の砂のように落ちていくだけだった。




「……あれ?」




ハルナは同じようなことをしている”つもり”だが、フウカのような光のシャワーが出てこない。




「ちょっとハルナ、ふざけてる場合じゃないんだよ?あんた、本当にこいつを助けたいと思ってんのか!?」



「も、もちろんよ!?あっ……そういうこと……ね」





ハルナは何かに気付いたように、一度手を引き再び胸の前に手を当てて目を閉じた。

そして胸の中に集まる温かさが、身体を駆け巡り伝わっていく。

その温もりが全身に巡ったとき、ハルナの身体がほんのりと淡い光で包まれた。



「フン……やればできるじゃないのさ……じゃあ、後は任せたよ」



「え?アタシ一人で!?」



「あんたの方が力が強いんだよ……それに”ソレ”をやってるアンタの傍にいると、その光でジリジリと焼けるんだよ」



「あ、ごめん」





そう言いながら、ハルナはステイビルの身体に光を当て続けた。

その途中で、ハルナはサヤに言葉をかける。




「サヤちゃん……いろいろとありがとうね」



「ん?……何が?なんかお礼言われるようなことしたっけ?」



「この光が使えるようになったのは、サヤちゃんのおかげだよ。これでフーちゃんとまだ繋がっている感じもするし……アドバイスもくれたじゃない」



「あぁ、アンタもその力を持ってるってことね。それはずっと精霊使いの取り込……ゴホン。精霊使いのことを調べてたからね……でも使えるようにしたのは、アンタだよ」



「さっきのね……”助ける気があるのか!”ってやつ。あれが大きなヒントだったみたい。この光は”優しさ”でできてるんだよね。それに気付かせてくれたのは……サヤちゃんのおかげだよ」



「アンタ……光を纏って頭をやられたんか?……まぁいい、アタシに感謝しなよ……ってほら、次反対側だよ」



ハルナは久々に温かい気持ちになり、エレーナやサヤなど窮地になった際に助けてくれる人がいる幸運に感謝した。







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