6-7 潜入






突然現れたスーツ姿の男の話を聞くと、この世界はハルナが知っている世界とは全く異なった状態になっていると言った。

誰が、何のために……そういった情報は全く無い。

男はもう一度、ハルナとサヤの知っている世界ではないと言いながら消えていった、二人が窮地に陥ることが嬉しそうだと言わんばかりの表情を残しながら。





町の中で男と別れたあと、ハルナはもう一度頭の中でこの世界で起こっている出来事について思い返してみた。



エレーナとアルベルトの仲は順調であったが、ハルナの知っている関係よりも随分と先に伸展している。

ステイビルの周りを取り巻く状況も、記憶の中のそれとは大きく異なっている。





「何があったの。随分と私の知っているのと違う……」



「でも、アンタの精霊の力も、アタシのオスロガルムの力も失ってはいないだろ?ストーリーだけが改変されてるような……とにかく、ちょっと街の中も調べてみようか。もちろん、目立たないようにね」


「そうね……行きましょ。こっちよ」




こうして、ハルナとサヤはモイスティアの中を歩き始めた。

町の中を進んで行くと、通りの配置や建物位置などはハルナが知っているモイスティアと全く同じだった。

だが、違和感を覚えたのはそれぞれそこにあるお店の内容や、店員たちがハルナの知らない人物がそこには立っていた。




町の人々は、二人にちょろちょろと視線を向けてくる。

始めは町にいないような人物のために、住民たちが気になっているようにも思えた。

しかし、関所方面から来る新しい者たちに対してはそんな気配は感じられなかった。




「ね、ねぇ、サヤちゃん。私たち……何か変……なの?」



「まさか、アンタ……気付いてないの?」



「え!?な、何!?どこか、穴が開いてる……とか!?」


そいうってハルナはお尻の部分や両脇をさすって、穴や破れた箇所がないか探してみる。

幸いにして、そういった箇所はなく肌が見えているということもなかった。




「本当に気付いてないんだね……アンタの服装、汚れてるけど立派過ぎるんだよ。まぁ、アタシの服もボロボロなんだけどね」



ハルナはようやく、ステイビルたちと旅をしてきた自分の服装を思い出す。

確かに汚れてはいるが、つくりやアクセサリーなどは他の者たちとは良いもので出来ていた。



「これじゃ、ちょっと調べるのに困るね……」



ハルナはスカートのすそを広げながらじっくりと自分の着ている服を眺めた。


「ちょっと……どこかで上手く身を隠せるものを手に入れないとなぁ」


「確かこの辺に衣服を取り扱っているところがあったはずだけど……」




ハルナは記憶をたどり、そのお店まで向かっていきサヤもその後を付いて行く。

目的の場所に辿り着くと、衣服を扱う店がそこにあった。




「あ、これなんかいいんじゃない!?」


「あぁ、これならこれ一枚で身を隠せるね!」



手にしたのは店先に飾られていた、旅人用のローブだった。

ハルナは手に取ると、中から怒鳴り声が聞こえてきた。



「ちょっとなにしてるんだい!!汚い手で触らないでおくれ!!!さぁ、あっち行ったあっち行った!」



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