6-6 相違








男の話を聞くと、ハルナが知っている世界とは全く異なった状態になっていた。


現在は王選が終了し、王はキャスメルが王位についていた。

王妃はクリエとなり、ルーシーは王宮精霊使いの長となっていた。



キャスメルは双子だったステイビルのことを小さな頃から恨んでおり、いま自分が王となった今、その恨みを晴らすかの如くステイビルの痕跡を王家から消し去っていっていた。


まずは、ステイビルに協力的であったスプレイズ家とフリーマス家は王家から離されることになり、遠くの町に飛ばされていると言った。



「ついこの前も、王の命令により同じくステイビル王子を支持をしていたと難癖をつけられてエフェドーラ家も貴族枠から外されたばかりだ」



「エフェドーラ……ま、マーホンさん!?」



「あんた……マーホンさんも知ってるか!?何者なんだ……っとそれより、マーホンさんは無事だ。それよりも、現マーホン家を仕切っている祖母様が……モレドーネを取り上げられて、フレイガルの臭気ちかくへと飛ばされた」



「それで……ティアドさんとアーテリアさんは?」




男は、重要な人物を”さん”付で呼ぶハルナのことを、もしかして偉い人なのではないかと思い始めた。




「あ、はい。アーテリア様は、王宮の中で王宮精霊使いの組織に組み込まれまして、ティアド様の消息は……わかっておりません」




「それで、ステイビル王子は?」



「ステイビル王子は……王家から追放され……一緒に回られておられたエレーナ様とオリーブ様と一緒にラヴィーネにおられます」





その言葉にハルナは素直に情報が飲み込めず、そのことを馬車の主に問い質す。





「え?オリーブさん?一緒に回っていたって?」



「え?ご存じですよね?ステイビル様の王選の面子エレーナ様とオリーブ様でしたよね」



「え!?わた……うっ!?」




ハルナはサヤに脇腹を肘で打たれ、その痛みでハルナの言葉は止まり、その言葉を引き継いだのはサヤだった。





「そうですよねぇ……あの時は大いに盛り上がったですよねー」



「その通りです……この王国がステイビル王子の手によって変わると信じておりました。亡きローリエン王女の後を継ぐのは、ステイビル王子しかないないと……」





サヤはその事情を察して、自分たちの目的を告げる。





「私たちは、特別な任務でこの町を随分と離れていたんですよ。だから、こんなに事情が変わって驚いているんです。そのため、あの町に戻ってティアド様の消息を……」



「そうでしたか!?では、私たちもできる限りご協力します!モイスティアのはずれにある、材木屋がありますので何かありましたらご連絡ください!」



「わかったわ。ありがとう」





サヤはそう言ってその場を纏め、二人は無事モイスティアの中に入ることができた。





「ねぇ……ハルナ」



「何?サヤちゃん……さっきのすごく痛かったんだけど?」



「バカ。今そんなこと言ってる場合じゃないんだよ!?……あの男の話、覚えてる?」



「あの……男?あぁ!あのスーツを着た男の人!?」



「思い出してごらんよ……そう、あの男はこう言ったんだ……」







そういってサヤとハルナは、スーツ姿の男が言った言葉を思い出す。








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