6-5 同志









二人は、なるべく人目に付かない様に道をたどり、店の前までやってきた。

そして、店頭に並べられたフードの付いた全身を羽織る衣服を手に取り眺める。



「ちょっとちょっと!!汚い手で触らないでおくれ!さぁあっち行った……シッシッ!!」


店の中から一人の女性が飛び出してきて、ハルナが手にした衣服を奪い返した。



「あの、これ……売って欲しいんです……けど」



「売って欲しいって……アンタ、お金持ってるの?」




店の主人はハルナのことを、完全に疑った目でみている。

この町で短い間ではあったが、ハルナはエレーナと生活をしていたことがあった。

大きな騒動があったことで、ハルナの存在を認識しているものも多かった。






モイスティアに入る、少し前のこと。


この町に入る時、厳しかった警備を抜けるため馬車の中に隠れさせてもらう人を郊外で探していた。



サヤは”こいつら消して入ればいいじゃない”などと言っていたが、ハルナは問題を大きくするのは良くないとサヤを叱りそれを止めさせた。

ハルナも、サヤがすんなりということを聞いて驚いた。


何度もハルナはモイスティアに向かう荷馬車に声をかけたが、誰もハルナのことを知らないようで止まってくれるものもいなかった。

ようやく一台止まってくれて、中に入ることを手伝ってくれた。




馬車の主は、ハルナとサヤを乗せた後話しかけてきた。



「あんたたち、見かけない顔だけど……一体、モイスティアに何しに行くんだい?」


「あ、はい。ティアドさんのところに用事があって……」


「――えぇ!?」



馬車を運転していた男は、明らかにティアドの名を聞き動揺する姿を見せた。

それを不思議に思ったハルナは、恐る恐るその理由を聞いてみた。



「ど……どうかしましたか?ティアドさんに何かあったのですか!?」





馬車の主は、道のわきに外れて一旦馬車を止めた。

そして御者台からおりて、馬を馬車から外し近くの気につないで馬を休ませた。

荷台の周りを点検し、荷台の幌を被せて中が見えないようにし、そのままその中に自分も身を隠した。






「な、なんだいアンタ!狭いところにいきなり入り込んで……!?」



「お静かに!?……声を落としてください。誰が聞いているかわかりませんから」



「は、はい!?……でも一体、どうしたんですか?」





男の顔は真剣になり、ハルナとサヤの顔を見並べた。






「あなた達は……”ステイビル王子派”ですか?」



「……え?ま、まぁそうなりますか……ねぇ。それが、どうしたんですか?」



「そうですか……同じ志を持つ人がまだいたんですね、よかった……私も同志です」



「なんなんだい!?その、同志ってのは!?」






サヤは自分だけが判っていることが当然相手にもわかっていると勘違いをし、こちらのことを考慮せずに話す相手が嫌いだった。





「何も知らないんですか?ステイビル王子は王家を追放され、ステイビル王子を支持していた者たちは全て迫害をうけていることを」




「えぇ!?なんでそんなことになってるんですか!!!」




ハルナは注意された大声を出して、今の現状を驚いた。








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