6-8 発見







「あんた……カネは持ってるのかい?」




女主人はハルナの手から商品を奪い取り、明らかにハルナのことを汚いものをみるような疑いの視線を投げかける。




「あ、はい。おカネなら……銀貨五枚ですよね。二つ頂きたいので……これで」





ハルナはあらかじめポケットの中に用意していたお金をつまみ、主人が出した受け皿の上に落とした。




「……これ?どこのおカネ……え、嘘っ!?」




主人は、驚いてその硬貨を摘まみ上げる。

そして、目の前に持っていきかけている眼鏡を下げて、自分の目で確かめた。




「どうですか?多分足りてると思うですけど……」




オスロガルム討伐後の世界でいろいろと変化がみられる中、ハルナが王選の精霊使いとして受け取っていた報酬だが、その価値も変わっていることが考えられた。

だが、マーホンが言うにはこの金貨は金の密度がかなり高いため、他国でもそれなりに価値があるものだと教えてくれたことがあった。

素材の価値は変わらない物だろうと、ハルナは様々な角度から考慮したうえで金貨を渡したのだった。




「あ?……あぁ。足りてるっていうか、おつりがあるね……ちょっとお待ちよ。ほら、そっちのも貸しな、包みに入れてきてやるから」





ハルナはサヤの分の布を手に取り、そのまま店主に渡した。

店主は金貨と品物を持って、店の奥へと姿を消した。




「なんとか、無事に買えてよかったね、サヤちゃん」



「ん?あぁ……そうだね、ハルナちゃん」



「なにそれ?……どうしたの急に私を”ちゃん”付けなんかして」



「ちょっとアンタ、もう少し気を引き締めなよ……今までの世界とは違うって判っただろ?何が起きるかわからないんだ、油断してると痛い目に……」





サヤは途中で人の気配を感じ、言葉を止めた。

奥から、紙に包まれた商品とおつりを手にしてやってきた。




「はい、これ商品。で、これがおつり……」




ハルナは掌の上の銀貨が自分が想像するよりも多い枚数が返ってきたことに気付いた。



「あの……これ?多いですよ?金貨ならおつりは銀貨十枚のはずですが……」



ハルナの手の中には、十五枚の銀貨が乗せられていた。

その銀貨は、エレーナとモイスティアの町の中で買い物をしたときに使ったものと全く同じものだった。

だが、主人はそれで問題ないという。




「いいえ、それで合っていますよ。とにかくそれはおつりです。じゃあもいいでしょ?早く行ってください……」




ハルナとしては、客に対する態度とは思えない扱いをされていると思った。

普通ならそこまで気にならないはずだが、最初の態度と買ったあとの態度が異なっている。

どちらにせよ、ハルナたちはこの店主にとって、早くどこかに言って欲しい存在なのだろう。



ハルナはふぅっとため息をついて、店主にお礼を言ってから店を後にした。




「……何なの、あれ?」



「アタシが知るはずがないだろ?今までずっと人とは関わってこなかったんだ。アンタの方がよく知って……」





サヤの言葉はまたしても中断された、今回の原因はハルナにあった。




「あ!ステイビル王子!?」




表通りから再び裏通りに入ろうとした時、道路の反対側にある裏通りにステイビル似た人影をハルナは見つけた。






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