5-161 目的







『ぐぅっ!?……まさか、ワシは騙されておったのか!?』



「ごほっ……そういうことだよ……オスロガルム……あ、あんたは……アタシの作った映像を……見てたんだよ!」





オスロガルムは、ヴェスティーユの言葉を聞きハルナのことを見る。

ハルナの身体には、自分が攻撃を仕掛けて弱っていた跡が全くないことに気付いた。




「――ヴェスティーユ!!」




心配してその名を叫んだのは、サヤではなくハルナだった。





「な……なんてか……お……してるんだ……。お、お母さ……ま……これ……で」




「あぁ。あんた達のおかげで元の世界に戻れるよ……」




「元の世界……戻れる……ですって?」




「そうさ、この世界が崩壊するれば私たちは元の世界に戻れるんだよ……ハルナ」




「よかっ……た……こ……れ……で」





ヴェスティーユは薄れる意識の中、ヴァスティーユを失った後のことを思い出す。

それは、初めてサヤがこの世界を滅ぼす意味を知ったときのことを。










「……お前には話してなかったね。何でアタシが、この世界を崩壊させようとしているのかを」





その言葉に対しヴェスティーユはゆっくりと頷いて、その先の話をしてもらうことをサヤにお願いした。




「この世界が崩壊すると、私たちは元の世界に帰ることができるんだよ」



「元の世界……お母様がおっしゃっていた、元々お住まいになられていたところ……でしたよね?」



「そうさ……お前たちも何度もアタシに聞いてきただろ?その世界のことだよ」






ヴァスティーユとヴェスティーユは、サヤの元いた世界の話が大好きだった。


生き返った始めの頃は、いつもイライラしていたサヤの態度に怯えていた二人だった。

これはサヤの性格だからと言っても、二人はそれだけで納得できるはずもなかった。


まだ以前の記憶が色濃く残っていたため、主従関係については恐れの感情が強かった。

サヤは仲間……友のような存在を望んでいたのだが、これは最後までサヤの希望が叶うことがなかった。



それでも何とか関係を柔軟にしたいと考えたサヤは、自分が転生する前の世界の話を二人に聞かせた。

しかし、それが二人との関係性の改善に大きな効果をもたらした。


車や電車、飛行機や船、様々な乗り物が存在する世界。

アイスやチョコレート、ジュースにピザ……

二人にとっては夢のような話し、それが自分たちを苦痛の環境から救ってくれた尊敬する人物からの話し。

様々な思いが積み重なっていき、サヤは二人との距離が近付いて行くのを感じた。

そこからは、二人は次第にサヤと近くなり、永い時間の中において言葉通りの”お母様”という関係までになる程だった。



そして、ヴァスティーユがいなくなった後……ヴェスティーユは母親の本当のこの世界を崩壊させる理由を聞いた。

いつもならば、怖くて聞けなかったのだが、これが聞く最後の機会だとヴェスティーユは確信した。

そして、その理由は――”元の世界に戻るため”


その答えを聞いて、ヴェスティーユのないはずの心臓が一つ大きく拍動した。



(あの世界に……いける?)




そう思った瞬間、いままで頭のどこかに芽生えていた思いがヴェスティーユの口から言葉が流れ出ていた。




「お母様……私達も一緒に連れて行ってください!!」





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