5-151 ハルナが見たもの







映像が終わると、ハルナは再びモイスの背中の上に戻ってきた。



「ふぅ……ただい……ぅっ!?」





ハルナは意識が戻ってきたと同時に、お腹の奥から激しい嘔吐感が生じてこみあがってきた。

それを必死に抑えるハルナを心配したフウカが、ハルナの身体の様子をチェックする。

この能力も、あの特訓の中で水の元素を扱えるようになってから、フウカも人や生き物の中に流れる体液の流れを見ることができるようになっていた。




「ハル姉ちゃんの頭の中に、あの黒いのがあったけど……もうほとんど消えちゃったけど……一応消しとく?」





フウカの言葉に対し、ハルナは言葉で返すことができずにただ頷いた。



ハルナはモイスの背中に跨ったまま、立ててくれた首の上に伏せていた。

そして後頭部から、瘴気を消す光を当てられながらじっとこみ上げてくるものを堪え続けた。






「ふぅ……ありがとう。フーちゃん、助かったわ」



「うん、もう大丈夫。黒いのは見えないよ」



『何が起きたのですか?ハルナ様黒い瘴気に触った途端に、瘴気がハルナ様の中へと入って気を失われたのです』



「え?結構長い間意識失ってました、私!?」



『人の世界で扱う時間ですれば、数分と言ったところですな……ハルナ様が意識を失われていた時間は』




聞けばその時間はあの爆発地では一瞬であったが今回は、フウカも心配するくらいの意識が失われていたようだった。




「もう!もう少し慎重に行動してよね!?」



「ご……ごめんなさい」




ハルナはフウカに怒られて反省をする、それを見ていたモイスはハルナの気持ちをフォローするように話題を変えた。




『……で、今回は何を見たのですか?あの悪魔は、我々に何かを伝えたかったのではないですかな?』



「そ、そうです!?ヴァスティーユが生きてたんです!!」





そう切り出すと、ハルナは気を失っていた間に見た映像のことをモイスとフウカに聞かせた。


始まりは、モイスが使えた異次元の空間から映像は始まった。

そこにはサヤと、この映像の持ち主であるヴェスティーユがいた。


何かを話しているようだったが、映像の”質”が悪く音もないためその内容までは判らなかった。


ヴェスティーユは外の世界へ出て、爆発のあった場所へと向かい爆発の中心地までいった。

ハルナと同じようにその場所を触っても、何も起きている様子はなかった。



何かを見つけて行動を起こそうとした時に、ヴァスティーユがその場所に現れ最終的には意識が取り込まれていった。





「……きっとあのヴァスティーユは、オスロガルムだと思うです」






ハルナは自分が見てしまったあの映像と、悪魔から見せれた映像と合わせて仮説を立てた。





『ふむ。確かに、その映像が起きたことで間違いがないのであれば……その可能性が高いですな』



「ということは、やっぱりヴァスティーユとヴェスティーユを使って……サヤちゃんを!?」



『ハルナ様、急ぎましょう。ヴェスティーユが隠れていたその場所は覚えておられますか?近くまで行けばその能力を感じ取ることができるでしょう』



「はい、まず先ほどの場所に戻って下さい。そうすればあの映像からどちらの方向からやってきたのかわかります!」






そう決まると、モイスは引き返してあの爆発のあった場所まで戻っていった。







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