5-150 伝わらない声






(あ!私、またやっちゃった!?)





ハルナは、視界の閉ざされた闇の世界の中で自分の軽率な行動を反省する。

しかし、これは性格だから治らないだろうな……とすぐに自分が起こした行動の結果を正当化した。



その後すぐに、また新しい映像がハルナの意識の中に広がっていく。



ハルナが見たものは、また違う場所でサヤが目の前にいた。

そこから、ハルナはこの映像はヴェスティーユの視点であると判断した。

これは、最初にあの場所で映像を見た後にモイスと出した結論から同じものであると判断したためだった。


見える映像には色も音も付いておらず、所々画像が揺らぎわかりづらいところがあった。

だが、これも自分しか見ることができないのだろうと判断し、ハルナはこの場面を見落としが無いように見続けた。

ヴェスティーユは、サヤと何かを話していたが、それが終わるとヴァスティーユは外へ出た。

森の中にいるヴェスティーユは、小さな悪魔を数体創り出した。




(あ!これがさっきの一体なんだ!)




その悪魔たちはそれぞれの方向へ散らばっていき、空に向かって上昇していった。


その後、ヴェスティーユは再び歩いて行く。

何か目的地を知っているかのような、自信を持った歩の進め方だった。


そしてたどり着いた場所は、ハルナたちも上空から見つけて降り立ったあの場所だった。

ヴェスティーユはハルナと同じく、地面に付いた爆発によって作られた線を気にしていた。

そのまま、その線をたどり中心部まで何かに導かれるように進んで行く様子は、何かに誘導されているようにも見えた。




(あの時、私も……まさかね)




ハルナはいま体感しているヴェスティーユの行動が、全く同じことに何かの力や意図が働いている気がしたが、そうであればモイスがすぐに指摘してくれただろうとその考えを頭から消した。


中心まで来たヴェスティーユは、身をかがめて地面を擦る。




(――あ!!)





ハルナは自分が見たヴァスティーユの映像は、本来はヴェスティーユかサヤが見るべきものではなかったのかと後悔していた。

だが、これでヴァスティーユが見せたかったものへ情報が届けられることにホッとした。

……だが、ハルナが期待していたようなことは起こらなかった。


ヴェスティーユは何事もなくその場に立ち上がり、別なことに考えを巡らせていた。




(……あれ?もしかして……私だけ?まさか、私が見ちゃいけなかったんじゃ!?)





ハルナは自分が見てしまったことに自責の念に駆られる中、この場に新たな人物が現れた。





(え?ヴァスティーユ!?消えたはずじゃ……いや、違う!!オスロガルムがヴァスティーユさんを乗っ取ったんだっけ!?)





いくら叫んでも、ハルナの注意はヴェスティーユには届かない。

これはヴェスティーユが見た記憶の映像のため、ハルナはただこの先を黙って見守るしかなかった。



ヴァスティーユとヴェスティーユがあの爆発を起こした場所で何か会話をしているところだった。


最終的には、ヴェスティーユはオスロガルムの瘴気に取り込まれ意識を失ってしまっていた。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る