5-147 追跡者









『こうして私は、オスロガルム様に助けられたのよ』



「……」




ヴァスティーユは、そのことに対して”嘘”と言いたかった、その話を否定したかった。

だが、ヴェスティーユの目の前にいることと、そこから発せられる声は間違いなくヴァスティーユのものだった。



「もう一つ教えて……お姉ちゃん」



『いいわよ?なにかしら?』



「お姉ちゃんは、お母様の目的を知っているんでしょ?それなにどうしてお母様を裏切ることにしたの?」




『そうよ……ね……そうなのだ……肝心なところをコイツもワシに明かそうとはしなかったのだ。身体を乗っ取られてもコイツはワシに抵抗し続けた……本当に馬鹿な奴らだ……お前も含めてな、ヴェスティーユ!!』



「まさか!?お前は、オスロガ……!?」




ヴェスティーユの口には黒い塊を詰め込まれ、身体も同様のもので縛られ身動きが取れなくなり倒れ込んだ。



「――っ!?」



ヴェスティーユは姉の姿をしたオスロガルムに、頭を踏まれ地面に押しつぶされる。



『お前はこの姿をしていれば簡単に騙されると思っていたがな…ここまでこのワシに手間をかけさせるとは……まぁよい。これで、サヤを呼び出して今度こそ奴を始末してみせよう。そしてあの身体の全てを頂いて見せよう……くくく』




(ま、まずい!?このことをお母様に……あ!)



ヴェスティーユは、悪魔が追っていたハルナたちの映像に切り替えた。

先ほどよりも距離が開いてしまったが、まだその存在は認識できる距離にいた。


次第にヴェスティーユの思考の中に、オスロガルムの気配が入り込んでくるのを感じる。

黒いモノが全身をゆっくりと、まさぐるように内側から這っていく感覚は決して良いものではない。

次第にヴェスティーユの意識は、オスロガルムに侵略され気が遠くなっていく。


サヤにこのことを伝えにいく時間はない……それよりもハルナたちに伝えて何とかしてもらう方が良いとヴェスティーユは考えた。

自分には、ヴァスティーユのように記憶を探られないようにする方法はわからない。

サヤの目的を知られる可能性がある、その前にこのことをだれかに伝えお母様に知らせて欲しい。



サヤは、その悪魔このことを伝えるように命令した。

低級の悪魔のため、言葉を話すことはできないがこの記憶が繋がってくれることを信じて……サヤと同じ世界から来たハルナの力を信じて。



そして、オスロガルムの侵略に抵抗し続けたヴェスティーユの意識はそこで途切れた。








「……何も見つかりませんね」



『そうですな、しかし気を抜いてはいけませんぞ。いつどこから攻撃してくるやもしれませんのでな』



「そうですね。一応風と水の力で見えない壁は作っていますが、これもどのくらい持つかわかりませんしね……フーちゃん”たち”も異常ない?」



「「うん!今のところ大丈夫」」




四属性に分かれることのできたフウカは、それぞれが意識を持っているわけではなく、全てが”フウカ”だという。

ハルナは一つ一つに呼び名を付けようとしたが、フウカからそういう理由で要らないと断られていた。




そんなことを思い出していると、フウカが何かを発見した。





「あ、何かくるよ……でも、モイス様の方が早くて追いつけないみたいだけど」






指定された方を見ると、小さなサイズの悪魔がこちらに向かってきていた。














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