5-88 罠







『サヤのヤツめぇ……ワシを騙しおったか!?』




オスロガルムは怒りに任せて壁を叩き付ける。

その時、地上では大きな地震が生き物たちを恐怖に震えていた。

そんなことはオスロガルムにとってはどうでもよいことだった。


西の王国に目的の剣があると知らされていたオスロガルムはその成果も得ることができず、さらには最後の下僕にさえも裏切られていた怒りが収まらない。

あの日以降、サヤとは連絡が取れなくなっていた。


そこからオスロガルムは、サヤに嵌められたと気付いた。

ハルナという人間が、サヤと同じくこの世界にはない力を持っていた。

そしてその力は、この自分自身を消し去ることができる素質があった。


この世を全て汚すことのできるブレスが、不思議な盾の力によってはじかれたことを思い出す。

あの力はこの世界で最強と思っていた能力を掻き消すことができる性質の能力だった。

それを不思議な光によって、自らよりも弱い人間達はその命を守ってみせた。








そこからオスロガルムが考えたことは、サヤが主人を裏切ったということだった。


西の王国には、サヤの分身であるフェルノールを送り込んで剣のありかを探り、あわよくば強奪する手筈となっていた。

そのフェルノールが人間に討たれたと聞き、手に入れることはできなかったがその在処については西の王国の国宝として保管されていることが判明した。


フェルノールを討った人間は、サヤと同じ世界からきた人間だといった。

その人間が自らの計画を阻む存在になる、そのためにこちらに引き込むか消してしまう必要があるとサヤは言ってきた。

そうしてサヤ以外の二人の僕を使い、その人間……ハルナを捕獲または消すように仕向けた。




それも、全て失敗に終わっていた。



元諜報員出会った人間は同じ諜報員に消され、闇に落ちたエルフはある日突然存在を消した。

その近くには、人間ではない……魔物に近い存在がその近くにいたことは覚えている。




そこからだった、サヤが色々なところで行動を起こし始めていたのは。

オスロガルムはサヤにそのことを問いただすと、失った戦力を強化するためだと言い、同じ世界の人間を一人確保したと言った。

サヤはオスロガルムから与えられた魔力とその人間の身体を使い、ヴァスティーユのような兵を新しく用意するために行動をしていると説明した。


そうして、再びサヤはこの世界から気配を消した。

その直前には、あの水竜と接触していたこともわかっている。



それ以降は、どういう力を使ってかこの世界からサヤ自身の存在が感じ取れなくなっていた。

しばらくして、サヤの僕であるヴェスティーユが訪れた。

いまサヤは、新しい力を生み出すためにとある場所で準備をしているという。

その力のためにはやはりあの剣の力が必要となるため、早くオスロガルムが手にして欲しいと言って西に王国の襲撃をけしかけた。



そうしてオスロガルムは、西の王国へと向かっていった。

結果、そこには剣はなく、自らの力を打ち消すことができる盾が待っていた。


そのことが偶然なのかどうかはわからなかったが、サヤが偽の情報を渡してきたことは間違いなかった。

今までに反抗するような行動は見せたことはあったが、ここまで貶めるようなことはなかった。

これは、自分を何かから引き離すためにおこなったのではないかという考えがオスロガルムの中で確かなものになった。




『くくく……サヤめ。楽に死ねると思うなよ』









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る