5-87 それぞれの使命
「ハルナ……うぅ……身体には、気を付けるのよ……ハルナぁ……」
「エレン、そんな最後の別れじゃないんだ。もう少し……」
「だって!今まで一緒に……ずっと一緒にいたのよ!?悲しくないわけないじゃない!!」
「大丈夫……すぐ戻れるように頑張るから……エレーナ……ほら、涙を拭いて」
ハルナは、一人だけ別行動することになった。
それはラファエルからの一言から始まった。
『ハルナ……あなたは、我々から加護を受ける必要はありません。そうでなくてもあなたは既に特別な力をもらっているでしょうから』
その言葉に、サナの言葉を思い出していた。
モイスから加護を受けた際に他の者たちは、生命力が上昇したがハルナはその効果が得られなかった。
ラファエルはハルナの身体に、この世界の者たち以上の能力があることを見つけた。
「で、でもラファエル様……加護を頂かないと王選の資格が……」
『それはもともと、私が提案したことなのです。加護によって人間の能力を向上させることによって、来るべき日に備えてとのことだったのです』
『フン……そういうことだったのか。あの時は気にもしなかったが、ガブリエルをワシの傍に付けたのもお前の指示なのであろう?』
シュナイドはそういって低い音で喉を鳴らした。
ラファエルはシュナイドの言葉に肯定も否定もせず、笑顔だけでシュナイドに返した。
確かにあの時は、シュナイドの暴走を押さえつけるために水の力を持つモイスかガブリエルが見守ってくれることが最善であると判断した。
最終的にラファエルは、サヤの中に見た記憶の中に従って行動することに決めただけだった。
そして、ドワーフの魔法により凶暴な火の竜は落ち着きを得ることができた。
『まさか……あの死闘もすでに決められていたことだったとは……な』
モイスは自らが行った行為でさえ、誰かのシナリオの上のイベントの一つに過ぎないことに複雑な思いが過った。
だが、それに対してそれ以上の感情は持たない。
例えそれが予め決められていた者だったとしても、あの時の自分の行動はそれ以外のものはあり得なかった。
さらには、事後でそのことを知ったとしても今は何も変えることができないし、いまが最善な選択を続けた結果であると、モイス自身は疑っていなかった。
『ですから、ハルナは特別な力を身に着けていただきます……それがこの世界を救う最後の機会と信じて』
ハルナがこれから行うことについては、サヤの記憶の中には見られないことだった。
そのため、この結果がどのような結末につながるのかはだれも予測ができないことになる。
あの剣が何らかの鍵の役目を持ち、それが世界崩壊につながっていると考えていた。
サヤは、あのオスロガルムを倒すほどの実力者であることも考えられる。
そうなれば唯一、この世界の特別な存在と思われるハルナに何とかしてもらうしかないとラファエルは判断した。
その思いを告げた時に、ステイビルたちも二匹の竜神たちも同意した。
こうしてハルナは神々の持つ力をできる限りハルナに渡せるようにと、個別に訓練の場を設けることにした。
他の精霊使いもその場に参加できないかと、ハイレインはラファエルに申し出たがその話は却下された。
他の者でハルナと同じほどの能力を持つ者はいないため、その時間を全てハルナに費やすべきだという結論になった。
『さぁ、ハルナ。そろそろ行きましょうか』
「気を付けるんだぞ、ハルナ。そして、絶対に……この世界の崩壊を止めてみせるぞ、私たちの手で!!」
『ハルナのことは任せるがいい……ラファエルも付いておるしな。何かあったらまた水晶で連絡をする』
「それじゃあ……行ってきます!」
こうしてハルナはステイビルたちと離れて、行動することになった。
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