5-86 予言4







ハルナは、夜中に体験した話をみんなの前で話して聞かせた。

ステイビルも最初は信じられなかったが、途中から現れた風の大精霊の存在によってその話の真実味が増した。




「この世界が……」



「……崩壊するの!?」



エレーナもクリエもその言葉を口にするだけで、いまひとつ実感がわいていない。

それは衝撃の大きさを心が抑えて、精神を崩壊させないように自己防衛をしているためだった。




「それで、どうすればいいのですか?ラファエル様……」



ローリエンの言葉に、途中から参加したラファエルにこの場の視線が集まってくる。



『いいえ、いまのところその手立てはありません。……もしあるとすれば、サヤという者の行為を止めることなのでしょうけど、どこにいるのかわかりません。それに……』



「……それに?」



『……それに、止められるかどうかわかりません。今までの歴史の中で、この映像から外れたことは何一つないのです』




この世界の頂点に立つ大精霊が、ここまで自信のない姿を見るのは初めてだった。





ハルナはあの後、ラファエルがここまで何もできないことに自身を責めていた姿が今も頭に残っている。

この世界に来てからあの暴走を止めてくれた存在、この世界の人々から頼られなんでも知っておりなんでもできる存在であると思われていた。


だが、その裏には強い悲しみを抱えていた。

これまで誰にもこのことを話すことが許されず、長い間ずっと一人だけでその苦しみを耐え抜いてきた。



(――あんなものを見てしまわなければ)


幾度となくラファエルが繰り返した言葉だった。

そんなことを悔やんでも何も変わらないことは判っていたが、その思いを口にしなければ自分という存在が崩壊してしまいそうな程だった。





ハルナはもしも反対の立場であったなら、その重圧に耐えきれる自信がなく途中で投げ出してしまうだろうと考えた。

そんなラファエルに、ハルナは優しい声をかけた。


「もう大丈夫ですよ……私がみんなに伝えますし、私やみんなで考えましょう。そうすれば、小夜ちゃんを止めることができるかもしれません。それにラファエル様が知らせてくれたおかげで、この世界の人たちが助かる可能性も生まれてきたと思いませんか?」



ラファエルも今までそんな言葉をかけられることもなかった……自分が一人で背負っていた荷物をハルナが手伝ってくれると言ってくれたことに、ラファエルはハルナに感謝の言葉を告げた。







そのことを思い出し、ラファエルの目に再び力がよみがえる。



『――しかし、こうしてあなた方に伝えられたことは幸運でした。皆さんで力を合わせて、この世界を救いましょう!』



「「――はい!」」




その言葉に、この場にいる者たちは力強くラファエルの言葉に応じた。



このことは、この場にいる者たちだけで留めておく必要があるとグレイネスが告げる。

他の人々に、無用な恐怖を与える必要はないと判断したためだった。

失敗は許されないが、サヤを阻止できなければ同じ結果になる。

その間に自暴自棄を起こし、国が混乱することを避ける目的でもあるとグレイネスは告げた。


そして、この判断の責任は、全て自分がとるということも。




この判断に異論を唱える者はおらず、その判断が適切であることもこの場にいる者たちは理解をしていた。






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