5-85 予言3
ハルナが見た映像も、サヤがオスロガルムを討ち取ることによって世界が崩壊した様子を見ていた。
サヤが斜めに振り下ろした剣が、オスロガルムの右肩から左側の腹部まで切り裂いた。
次の瞬間、オスロガルム身体から光が発し世の中が真っ白な光に包まれていく。
その光は言葉を発することが許される間もないまま、この世界を無に帰していった。
ラファエルから見せられた映像は、そこで終わっていた。
「この世界を……小夜ちゃんが……早く止めないと!?」
ハルナは足元に掛かっていた毛布をはぎ取り、急いでどこかに出かけようとしていた。
だが、その行動をラファエルは片手を上げて抑えた。
『お待ちなさい……ハルナ。あなたが一人で行っても、どうにもならないでしょう?』
「ですが……あの剣はすでに小夜ちゃんが!?」
『大丈夫です……人間の時間であと一年は、問題がないはずです……その間に何とか対策を立てなければなりません』
「それじゃ、早く……ステイビルさんに伝えて」
『申し訳ありませんが、そのことはハルナ……あなたから伝えていただけませんか?』
「え?どうしてですか?先ほどの映像を、皆に見せてあげれば」
『それができないのです……今までにもガブリエルや他の精霊たちにも伝えようとしました……ですがそうなると、なぜか言葉が出てこないないのです』
「それって……モイス様たちがオスロガルムに攻撃できなかったと同じ現象?」
『かもしれません……このことを初めて伝えることができたのは、ハルナ……あなただけなのです』
「そ……そんな。……あ、でもなにか話すと罰が起きるとかないですか?」
『罰……ですか?』
「こういうのって、何か秘密があって人に話せないようになっているっていうのが、元いた世界の空想の話であったんですけど、それと同じじゃないかって」
ハルナの世界では精霊や魔法など、その空想の話でしかなかった現象だった。
この世界にとっては当たり前のことかもしれないが、それでも知らないことも多くある気がしていた。
その一つとして、人の身体の構造が全く同じであるということ。
ハルナの世界では医術や医学が進み、全てではないが身体の仕組みについて、細かなところまで解き明かされつつあった。
それによって病気を治せたり、病気になる前に対処ができたりすることができた。
この世界では、そういったものは薬草や魔法などの力で解決をしていると聞いた。
だが、薬草では当然効き目のないことも多かったという。
それでもこの世界の人々は、運命を受け入れ抗うことなく生きてきていた。
ハルナの元いた世界の知識――例えそれが空想の世界で不確定なものだったとしても――が、この世界には当てはまることがあるのではないかと今までもそれを口にしてきた。
『ハルナの話で今まで、この世界の知識としてはなかったことを広めた時に、あなたやそれを聞いた誰かに何か起きたことがありましたか?』
その言葉にハルナは、今までの行動を振り返ってみても自分の身に何も起きていないことを確認する。
『……であれば、ハルナの口からこのことを告げて頂いたとしてもあなたの身には何も起きないと思います』
ラファエルのその言葉に納得し、ハルナは明日ステイビルたちにこのことを告げることにした。
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