5-52 反撃






ボーキンは自分では見ていないが、逃げてきた二人から情報を伝え、自ら体験したことをステイビルに伝えた。

だが、新たに分かったことは何一つなく、西の王国が魔物に責められているという情報がさらに集まっただけだった。



次に、ステイビルはここに来た理由をボーキンたちに告げた。

ニーナが東の王国へと逃げてきたこと、東の王国へと助けを求めてきたこと、第一隊は既に王国に向かって出発していることを話した。


ボーキンはその話の中に出てきた、東の王国からの第一隊は宿屋の前を通過したのを見ていないといった。

となれば、別ルートで王国内に向かっていった可能性が高い。

しかも王都に近付くほどに、魔物数は多くなるため危険度は高まる。

迂闊な行動はとらないとは思うが、助けるように命令をされているため住民が襲われている状況では交戦状態に入っているだろう。



今すぐにでも助けに行きたいが、ここの宿屋が拠点として最適なためこの場所は死守したいとステイビルは考えた。

シュナイドによって、魔物の手先が殲滅させられたことは直に気付かれる。

あれだけの手先を殲滅した者がいることは、相手にとっても危険な存在であるためすぐに追っ手を差し向けてくるだろう。

だがそれまでの間、ここで動きを止めることは西の住人たちを見殺しにしてしまうことになる。


東の王国への増援の要請と、この場所の死守と、西の住民たちの救助……どこから先に手を出すべきか迷う。

数で襲われた際に抵抗できなくなる可能性があるため、できればこの戦力を分散させたくはなかった。



(キャスメルたちがいれば……)


この場にいない者たちのことを考えるより、今いる中で何とかしなければならないとステイビルは頭を振って思考を元に戻す。



とにかく、いま思いつく全てのことを行わなければ間に合わなくなる可能性が高い。

そして、ステイビルは決断をした。



「よし、これからの行動を支持をする……」



ステイビルはまず最初に、これから行っていく三つの行動を話す。

初めに東の王国への増援依頼、次にこの拠点の死守、そして最後に西の王都内の偵察。


増援は来ることになっているが、やみくもに向かっていっては撃破されていく可能性が高い。

ここで作戦を整えていくようにするために、集合場所をここにすることも伝達してほしかった。



「ではこれをエルメト……お願いできるか?内容は書面にしても渡しておく」


「はい!お任せを!!」


「……王子、私も行きます!!」




そういったのは、妹のアーリスだった。

だが、ステイビルはその申し出を断る。


「すまぬが、今回はエルメトだけでお願いしたい。それは、一人の方が見つからずに行動しやすいということだ。それに……」



「……それに?」



ステイビルは、言葉を詰まらせたがゆっくりとしている時間はないため、思っていることを告げる。


「うむ、それにな……もしエルメトに万が一のことがあった場合は、アーリス。次はお前にお願いしたいと思っている」



その言葉に作戦の重さを感じ取り、警備兵に所属していた時の感覚が戻ってきたようだった。

アーリスの表情が、一段と引き締まった。



そして、次にブンデルとサナに視線を送る。


「二人には、ここを守ってもらいたい。もちろん、シュナイド様にもお力を貸していただきたいのですが……」


『ふん!任せておくがいい、サナのことはワシが傷がつくことなく守ってみせよう!……ついだ。他の者たちも、任せるがいい』



その返事にステイビルはホッとした。

ステイビルの願いが、シュナイドには伝わっていたようだった。



「そして、残りの者たちで王都に接近をして情報を集める……いいな!?」



「「はい!!」」



ハルナたちはステイビルの言葉に対し、力強く返事を返した。



「それでは時間もない。早速行動を開始するぞ!!」











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る