第8話

金曜日の放課後。

私は校舎を出て、校門の近くで呼び止められた。

「あのっ倉見先輩ですよね...」

「ふぇっ。あっああ、そうだけど。君は」

私は一瞬自分のことだと思わず恥ずかしい声を出してしまった。

「弟さんに仲よくしてもらってます。見川東生と言います。倉見先輩のことはよく聞いています」

「そうなんだ。リョウから聞いてるのかぁ。見川君、リョウをよろしくね」

私は歩きだそうとすると見川君にとめられた。

「ちょっと待ってください、倉見先輩。あのーあなたと友達になりたいです。どうかお願いします!」

頭を下げる彼。

「かしこまらなくていいよ、見川君。可愛いリョウの友達なんでしょ。これからよろしく、見川君」

「ありがとうございます、倉見先輩。やはり聞いてたとおり優しいですね」

「リョウがそんなこと言ったんだ。見川君に。じゃあ、またね」

「はい...倉見先輩」

私は彼に向かい手を振り歩き出す。手を振り返してくれる。

色が少し抜けたピンクの髪で肩につくぐらいの長さで、少しチャラい感じだったが優しい言葉遣いの男子だった。

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