48話:彼氏彼女の心情 PART2
どれくらいの時間が経過しただろうか。
「信じられないよね! 休日に会ってくれないどころか、用事があるの一点張りなんだよ? 友達だけでなく、彼女にまで!」
奏、不平不満のオンパレード。
「『いちいち理由を聞くな、お前は俺の母親か』だって。酷くない!? 私は貴方の彼女でしょ!」
酔ってます? いいえ、コーラなので素面です。
OL女子が立ち飲み屋でビールをグビるかの如く。日頃の
「夏彦君、コーラおかわりっ!」
「奏さん……、もう5杯目――、」
「飲まなきゃやってられませんっ! おかわりください!」
「は、はい喜んで!」
クソ雑魚
グラスから零れ落ちそうな泡ごと、奏はグイッと一飲みし、
「ふぅぅぅ~……っ。しゅわっしゅわっ!」
「本当にアルコール入ってませんよね……?」
「入ってませ~~~ん♪」
テンションの高いお姉さんを、ちょっといいなと思えてしまうのが悔しいところ。
アルコールが無くても、人は酔えるのかもしれない。
絡み酒もとい、絡みコーラ。
「私も未仔ちゃんみたいにおっぱい大きかったら、そーちゃんもフラフラしないのかなぁ」
「「へっ!?」」
まるでショーウインドウに飾られたトランペットを眺める少年のよう。
ぐで~と机に突っ伏す奏が、対面上に座る未仔のボリューミーな双乳をガン見。
八つ当たりというか乳当たりというか。
「夏彦君は知ってる?」
「な、何をですか……?」
「未仔ちゃんのおっぱいって、プールに浮いちゃうレベルなんだよ?」
「!!!???」「か、奏先輩っ!?」
夏彦は驚愕。未仔は羞恥。
ちっぱい奏にとって、立派な胸を両手で隠そうとする未仔の行動が理解できない。
それどころか、
「この子、本当にすごいのっ! 浮き輪もおっぱいでギュウギュウつかえちゃうくらいだし、プールから上がる度に毎回谷間に水たまりができるんだよっ!」
「浮き輪でギュウギュウ……! 谷間に水たまり……!」
奏のエキサイティングは止まらない。
「ジャグジーに入ったときなんて、ブクブクでポヨンポヨン! でねでね! くすぐったいから、ずっと両手で抑えながら入ってるんだよ? すっごく可愛いよね~~♪」
「ブクブクでポヨンポヨン……! 両手でホールディング……!」
脳内再生余裕。下から湧き出るバブルが、未仔のボリューミーな胸を容赦なく跳ね上がらせている。そんなエッチなバブルに抗おうと、小柄な彼女が己のマシュマロおっぱいを一生懸命抑えている。
フィニッシュブロー。
「未仔ちゃんが普通のビキニじゃなくて、タンキニを着てた理由は分かる?」
「??? えっと……、恥ずかしがり屋さんだから?」
「う~~ん、50点!」
夏彦が首を傾げてしまえば、ニッコリ笑顔の奏が両手を差し出す。
未仔へと。
「未仔ちゃん、正解をどうぞっ」
「わ、私ですか!?」
MCからの唐突なフリに、未仔がてんやわんや。
当然、拒否権や黙秘権はあるのだろう。
しかし、
「えっとね……?」
彼氏LOVEな乙女が拒むわけがない。
モジモジと忙しなく手指を動かしつつ、隣に座る夏彦へと向き直す。
そして、生唾を飲み込む夏彦へと未仔はカミングアウトする。
「……ナツ君以外の人に、裸を見られるのは恥ずかしいから、……です」
「!!!」
ナツ君以外。
それすなわち、『大好きな貴方になら、裸を見られても平気だよ』と同義。
(~~~~っ! この子の可愛さがもうっ……!)
内なる夏彦、未仔を今すぐ抱きしめたい衝動が爆発寸前。2人きりなら間違いなくハグしちゃっていただろう。
対して未仔はどうだろうか?
恥ずかしいから席を外してしまう? 耳を真っ赤にしてその場で悶えてしまう?
「!? みみみみみ未仔ちゃん!?」
「ジロジロ見ちゃ、やぁ……!」
答え。夏彦に全力ハグ。
『恥ずかし顔を見られたくはない。だったら、距離を詰めるまで』と、まさかの抱き着きを選択してしまう。
ダウン寸前。相手選手へとクリンチするボクサーと同じ発想。
夏彦と未仔はボクサーではない。恋人同士である。
抱きしめられてしまえば我慢できるわけがない。いつもどおり、ベストポジションにある彼女の頭をイイ子イイ子してしまう。バカレシの宿命である。
「ああ……。俺、幸せ過ぎて死んじゃうかも……」
「私は恥ずかしくて死んじゃいそうだようっ……!」
幸せムード、リア充は死んでも治らない状態に、奏はニコニコと微笑まし気に眺める。
思わずポロリと本音が零れてしまう。
「いいなぁ。そーちゃんも夏彦君くらい、ハッキリ愛情表現してくれたらいいのに」
夏彦と未仔がハッ、とする。
自分たちが知りたい情報を今まさに聞いてしまったから。
愛し合っている場合ではないと、2人は奏のほうへ向き直る。
夏彦は恐る恐る尋ねる。
「あ、あのっ! 奏さんは今も草次のことが好き、……ですか?」
嘘を見破るのは難しい。
けれど、真実だと確信するのは簡単なことなのかもしれない。
「うん。大好き」
そう思えてしまうくらい、奏の言葉、笑顔には説得力があった。
説得力があるからこそ、未仔が身を乗り上げてしまう。
「だ、だったら!」
「ただ怒ってるわけじゃないよ? けどね。うーん……、どういう言い方が正しいんだろ」
テーブルに突っ伏したままの奏は、右頬に空気を溜めつつ、グラスから流れる水滴を指でなぞる。
行為の1つ1つに意味はないのだろう。にも拘らず、とても意味のあるものに感じた。
「『大好きだからこそ許せない』って表現が一番しっくりくるかも」
聞き入る2人に奏は続ける。
「私がプールで、そーちゃんに誕生日について聞いたの覚えてる?」
「は、はい」「私も覚えてます」
『もうすぐ私の誕生日なのに! そーちゃんはそんなことも覚えてないんでしょ!』
草次が否定したことも含め、特に夏彦は鮮明に記憶している。
「私ね、そーちゃんが『覚えてない』って言ったのは多分嘘だと思うの」
多分嘘。
その表現に夏彦は引っ掛かってしまう。
表情が分かりやすかったからか。はたまた、奏の察知する能力が高かったからか。
「100%嘘って言えない時点で、私も情けないよね」
「い、いや! そんなことは……」
「ううん。ちょっと前の私なら、『多分』なんて言葉使わなかったもん」
奏が苦笑えば、感受性豊かな未仔は、まるで自分のことのように心を痛めてしまう。
心が揺らいでいることを知った夏彦は、ようやく全容を知れた気がした。
要するに、奏は心配なのだ。不安で仕方ないのだ。
大好きな草次に大好きと言われたい。安心したい。
ただそれだけ。
しかし、愛情の表現は人それぞれだし、誰しもが夏彦や未仔のようにストレートな表現ができるわけではない。
草次が最たる例だ。ここ1ヶ月ほどで、草次が大人っぽく見えて実は子供っぽい一面があることは分かっている。器用に見えて不器用な男だということも。
このこじらせ具合をどうすれば、元の関係に導くことができるのだろうか。
三者三様、思いを巡らせていると、
「「カナデねーちゃん、カナデねーちゃん」」
テレビ前、幼児番組に夢中になっていたはずの双子が、奏のもとへとやって来る。
「ミッちゃんとサッちゃん、どうしたの?」
「「お腹空いた」」
掛け時計を確認すれば、時刻は18時手前。
「わっ。もうこんな時間か。じゃあ、そろそろ夕飯の支度しようかな」
支度は草次の家でするようだ。エプロンを締め直した奏が立ち上がれば、双子たちも左右にぴっとり寄り添う。
「2人とも今日はありがとね」と言われてしまえば、それはお開きの合図。
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【感謝】
最近、感想をいただいているのに、返事を中々返せず申し訳ないです _○/|_ ゴメンナサイ
勿論、ばっちり拝見しており、ばっちり僕のエネルギー源となっております!
感謝の気持ちでおっぱいです( ̄^ ̄ゞ ケイレイ!!
執筆、今後も頑張っていきまっす!
【暇つぶしにどうぞ】
もう1つの作品、『構って新卒ちゃん』もよろしくどうぞ。
社会人さんだけでなく、学生さんでも普通に楽しめるので是非是非―。
-作品はコチラから-
https://kakuyomu.jp/works/1177354055408420052
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