40話:バイトデビューは甘くほろ苦く PART5

「!?!?!? み、未仔ちゃん!?」


 走馬灯があるのなら、夏彦の脳内は未仔だらけに違いない。

 けれど、ジャグジープールうえから見下ろす未仔は、まごうことなき本物。


 タンクトップビキニ、略してタンキニ姿。普通のビキニより露出が少ないとはいえ、恥ずかしがり屋な未仔としては頑張って冒険したのだろう。


 タンクトップからは、たわわな胸は勿論、深々とした谷間も零れ落ちんばかり。長めの丈からは可愛らしいお尻がチラっと見えている。

 体型を隠すためのタンクトップにも拘らず、かえって男たちの想像力を駆り立ててしまう、小柄な彼女のワガママボディ。男たちの下半身を殺す、歩く戦場兵器。


 そんな最終兵器彼女を目のあたりにした夏彦は何を考えているのだろうか。

 抱きしめたい? 水着姿を褒めたい? 他の男に見せたくはない?


 答えは真っ白。


 当たり前だ。水着女子たちに囲まれ、ハーレム状態の真っ只中なのだから。

 さらに問題なのは、『未仔とのデートを断り、レジャープールに来ている』ということ。

 この事実が組み合わさってしまえば、彼女には内緒で、クラスの女子たちとのプールを楽しんでいたようにしか見えない。


 夏彦同様、未仔も頭が真っ白。


「え、えっと……。私は中学時代の友達と一緒にプールに来たんだけど、……ナツ君はクラスの人たちと一緒に来た、の……?」

「あ、い、いや……」


 咄嗟に機転の利いた発言など、今の夏彦にできるわけもない。

 一難去る前にまた一難。



「そーちゃん、これはどういうこと?」


「! ……奏」



 草次がこの場所で最も会いたくなかったであろう奏まで姿を現してしまう。

 夏彦と未仔が真っ白だとすれば、奏は真っ赤。

 怒っているのは火を見るより明らか。拳を強く握り締め、唇はきつく結ばれている。

 力めば力むほど、くびれたウエストまで真っ直ぐ伸びた黒髪が逆立つのではないかという不機嫌ささえ醸し出している。


 心配する彼女みこ、憤る彼女かなで。気まずげなクラスの女子たち。

 剣呑な雰囲気が周囲に漂えば、草次は大きく溜め息づく。

 アクシデントやハプニングが重なったものの、キッカケは自分。夏彦や未仔、自分や奏との関係性にヒビを入れてまで秘密にするような事ではない。


「あのな。俺と夏彦は別に遊びに来たわけじゃ――、」

「最近、土日に遊んでくれないのって、こういうこと?」

「は?」

「クラスの子たちと遊んでも別に怒らないよ。けど、毎回コソコソ遊ぶ必要なんてないんじゃない?」

「いや、だから――、」

「私が誘ってもプールとか海に絶対行かないくせに! そーちゃんのむっつりスケベ!」

「はぁ!?」


 草次、むっつりスケベの称号獲得。

 さすがの草次も、不名誉すぎる称号に異論を唱えずにはいられない。

 何ならちょっとピキっている。


「胸の有る無しが原因でプール来たわけじゃねーって」

「有る無しって言い方止めてよ! 私だって小さいだけで有るもん!」

「子供かよ……。てか、胸のサイズ気にしてるのは、俺じゃなくて奏のほうだからな?」

「~~~~っ! ほんっと! そーちゃんにはデリカシーがない!」

「お前にはモラルがない」

「草次!? 話が大幅にズレて――、」

「夏彦君は黙ってて!」

「ひゃい!」


 夏彦、二人の間に割って入ろうとするが、割って砕かれる。

 通常時の未仔ならば、夏彦と一緒に結託して仲裁に入っていたに違いない。

 しかし、今現在の未仔は、通常時とは程遠いセーフモード。


「……。……ナツ、君……」


 脳内メモリは現状把握に努めることで精一杯である。


「もうすぐ私の誕生日なのに! そーちゃんはそんなことも覚えてないんでしょ!」


 草次の目が見開く。

 けれど、直ぐに物憂げな表情、退屈そうな表情に変わってしまう。


「……おう。覚えてねー」

「!? な、何言ってんだよ草次!」


 今の今までバイトに励み続けた理由や、彼女に渡すプレゼントを必死に考え続ける姿を知っているだけに、夏彦は慌てずにはいられない。

 夏彦が慌てたところで、過去には戻れない。


「嘘……」


 内心では否定して欲しかった。にも拘らず、草次は肯定してしまった。

 振り切れるには十分すぎた。


「~~~~っ! そーちゃんのバカァァァ―――――!!!」


 涙目の奏がジャグジープールへと右足をツッコむと、豪快にも水を蹴り上げる。

 引き締まった体幹、細くしなやかな脚線美から放たれる水塊すいかいが、草次の顔面にピンポイントに直撃。


 水も滴るいい男を完成させるが、一向に怒りや悲しさは収まらない。

『これ以上、ここにいても腹が立つだけ』と、奏は未仔の手を握り締める。


「未仔ちゃん、もう行こ!」


 未仔もハッ! と、ようやく我に返る。

 そして、丸くて大きな瞳を、夏彦と奏を行ったり来たりさせた後、


「そう、ですね……。皆のところに戻りましょうか……」

「み、未仔ちゃん……!」


 未仔が選んだのは奏。

 小柄な彼女の背中がみるみる遠のいていってしまう。夏彦は届かないと分かっていても手を伸ばしてしまう。

 声を大にして叫んでしまう。


「み、未仔ちゃ~~~~~~ん!!!」


 まるで、今生の別れ。

 未仔が振り返っていた。けれど、離れ過ぎた今では、どんな表情や気持ちで見ているかまでは分からない。






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【告知①:いよいよ発売!】 ※近況ノートにも以下の文章を載せています。

本日12/26(土)、ついに『おぱもみ』の先行発売が開始!

本屋さんや通販サイトで並んでいると思いますので、おっぱいフレンズは是非是非お手に取っていただければと!

未仔の愛くるしさに胸やけしちゃえʅ(◔౪◔ ) ʃ


そして、気付かれてる方もいるかと思いますが、『おっぱい揉みたい~』の略称は、

『おぱもみ』でいこうかと!

おっぱい揉みたい⇒おぱもみ

シンプルイズベスト(笑)!


Twitterでも色々な情報を公開していますので、是非ともご覧ください。

白クマシェイク先生が発売記念のイラストをUPしてくれてまっせ。



【告知②:おぱもみ&新作投稿】

発売を記念して、本日から『おぱもみ』の1週間連続投稿をします。

新シーズンも残すところあと少し。楽しんでいただければ幸いです(`д´)ゝ


そして、もう1作。

以前、執筆していた短編、『構って新卒ちゃんが、飲みやホテルに毎回誘ってくる。』の長編版もデデンと投稿開始! ※コチラは不定期連載。

新キャラを踏まえてパワーアップしたZ《ざんぎょう》戦士たちをどうぞよろしく!


長らくお待たせしたお詫びに、短編のほうでも1話追加で執筆したので、そちらも是非是非。


どうぞよろしく!


‐連載版はコチラから‐

https://kakuyomu.jp/works/1177354055408420052/accesses

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