35話:帰り道

 公園でたっぷり愛を交わし合った帰り道。


「ごめんっ! どうしても外せない用事ができちゃったんだ!」


 毎週のお楽しみイベント、デートができなくなってしまったことを、夏彦は全力で未仔へと謝罪していた。

 どうしても外せない用事とは、草次と短期バイトに行くこと。

 必死に手を合わせる夏彦に、未仔は首を横にふるふる。


「そんなに謝らないで大丈夫だよ」

「未仔ちゃん……」

「『お休みの日は絶対デートしなきゃダメ』って決めごとを作ってるわけでも無いもん。ね?」


 ウサギは寂しければ死んでしまうというが、同じ小動物系の未仔は、一日二日の愛が不足したとしても生きられるようだ。


「あっ。でもね?」

「でも?」

「ナツ君の用事が終わった後とか、お休みの前でもいいから、ちょっとだけ声が聞きたいなーって……」

「!」

「10分、ううん。5分だけでもいいから電話したいです。……しちゃダメ?」


 照れ気味にも催促する未仔は、やっぱりウサギなのかもしれない。


「ダメなわけないよ! 1時間でも5時間でも電話しよう! 何なら今からしよう!」


 夏彦はバカなのかもしれない。本気でポケットからスマホを取り出し始めるのだから。

「今は普通にお喋りしよ?」と未仔にクスクス笑われ、ようやく我に返る始末である。

 怒られたり、咎められたりすることは有り得ないと思っていた夏彦だが、断りを入れることができ一安心。


「どこかお出かけするの?」

「え、あっ……。う、うん!」

「???」


 夏彦の声が裏返る理由。

『いいか? このことは絶対誰にも言うなよ?』

 草次に釘を刺されているから。


 もし、草次とバイトに行くことを未仔に教えてしまったら、仲の良い奏に伝わってしまう可能性大。

「奏さんには内緒だよ?」と未仔にコッソリ教えるのも1つの手ではあるだろう。

 しかし、秘密を秘密にしてもらうのは寝覚めが悪い。それに自発的ではないにせよ、自分を信じて秘密を教えてくれた草次にも悪い。


 というわけで、


「ちょ、ちょっと野暮用があってね!」

「そう、なの?」

「そうなんです! ははっ! ははははは!」


 夏彦は誤魔化すことを選択。

 琥珀がいれば、「何がそんなにオモロいねん」と頭をはたかれるくらいの白々しさ。

 とはいえ、「ナツ君、何ワロてんねん」と未仔がツッコめるわけもなく。


「そっか……」


 野暮用の内容が気になるが、ナツ君にも事情があるのだろうと深い詮索はせず疑問を胸に留める。


(未仔ちゃんが寂しそう……! めっちゃネタバレしちゃいたい……!)


 彼女の奥ゆかしい態度に、夏彦は暴露したい気持ちに苛まれてしまう。

 永遠に内緒というわけではない。草次が奏にプレゼントを渡すまでの辛抱、そのときが来るまでの我慢だと、罪悪感を無理矢理に奥へと詰め込む。

 そして、今の自分にできることに専念する。


「祭り!」

「祭、り?」


 少しでも彼女を安心させたい、喜ばせたい。

 未仔の両手を握り締め、夏彦は誓う。


「来週のみなと祭りは、未仔ちゃんと絶対行くから! 何が何でも!」


 みなと祭りとは、夏彦や未仔たちの住む市内でも1番と言っていいくらい大きな夏祭り。

 ずっと夏彦と未仔が、一緒に行こうねと約束していたデートである。


「その日は夏祭りデートを絶対に優先するから。ダンプカーに轢かれても、不治の病に侵されていても! たとえ隕石が直撃したとしても絶対行くから!」


 お前は不老不死かというくらいの滅茶苦茶ぶり。

 あまりにもオーバーな発言に、未仔は横断歩道を渡ることすら忘れて、大きな瞳をパチクリ。


 そして、


「ふふっ……! あはははははっ!」

「み、未仔ちゃん?」

「隕石が落ちてきたら、夏祭りどころじゃないよ!」


 未仔は腹から大笑いし、大真面目に発言した夏彦は面を食らう。

 そんなポカンとする夏彦の腕へと、甘えたな未仔はくっついてしまう。惜しげなく腕へと頬や胸を触れ合わせてしまう。


「えへへ……。安心しちゃった」

「安心?」

「うんっ♪ 私だけじゃなくて、ナツ君もお祭り楽しみなんだなって!」

「!!! う、うん! 超楽しみに決まってるよ!」


「決まってるんだ♪」と未仔にニコニコされてしまえば、当然夏彦にもニコニコが伝染うつってしまう。

 いつもの軽やかな足取りに戻り、青になった信号を2人して歩いていく。

 夏彦は改めて思う。


「やはり、未仔ちゃんには何時でも笑顔でいてほしい」と。








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【雑談】

もう今年も最後の月ですねー。

子供の頃は、「M‐1だ! オールザッツだ! ガキ使だ!」とはしゃいでいましたが、ここ数年はちゃんと観れてない(*_*)


去年は『おっぱい揉みたい~』を執筆していたと思います(笑)

前にも書いたと思うのですが、当初は30ページくらいの短編を想定しており、大勢の方に読んでもらえるとは予想外。

というわけで「年末年始なんて知ったこっちゃねー。おっぱいだ、おっぱい」と、急いで長編用の原稿をせっこらせっこら。


もうすぐ1年経つなんてなぁ。

おっぱいフレンズ、今後もどうぞよろしこ。



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