34話: 思い出巡りは恋人と

 本日の放課後は、夏彦と未仔の2人きりで帰る日。すなわち、放課後デートをする日。


 2人にはMYブームというか、OURブームがある。

 ブームの内容は、2人が幼いときに一緒に遊んだ公園や広場、神社の境内など、思い出の土地へと足を運ぶこと。


 今現在は、住宅街の中にある小さな公園へと来ており、まったりリラックスムード。

 夕焼けの柔らかな陽光を遮る、屋根付きベンチにて、


「ナツ君っ、ふわふわで美味しいね♪」


 隣に座る未仔が、移動販売車で買ったメロンパンにご満悦。

 夏彦としては、「君はふわふわで可愛いね」と叫びたいところ。それくらい、小さな口でメロンパンにパクつく未仔にキュンキュンしてしまう。もっとメロンパンを頬張って、食いしん坊なリスのような姿も見せてほしいくらい。


「??? ナツ君、どうかした?」

「い、いや! メロンパン可愛いよね! ははははは!」


 未仔と半分こしたメロンパンにかぶりつくが、色ボケすぎて味が分からず。


「ここ最近、リーズナブルな散歩デートばっかりだけど、未仔ちゃんは本当にいいの?」

「うんっ。私、ナツ君とお散歩デートするの、すっごく好きだもん」


 ニコニコした表情を見てしまえば、ハキハキした声音を聞いてしまえば、本心で言っていることは容易に分かる。

 お金の掛かる彼女は苦労するに違いない。けれど、全くお金も手も掛からない彼女も、それはそれで困ったちゃんなのかもな、と夏彦は考えてしまう。


 そんな心配は、無用なのだろう。


「ナツ君となら、行ったことのないお店や場所に行っても絶対楽しめるよ。けどね? こうやって一緒に過ごした、小さい頃の記憶をなぞる時間も掛け替えないの」

「! 未仔ちゃん……」

「当たり前なことだけど、『懐かしいね』って言いながら笑い合えるのって、2人一緒に過ごした日々が必要でしょ? それって一朝一夕で手に入るものじゃないから」


 最後に、未仔は元気いっぱいに言うのだ。


「だから、高校生なのに共有する思い出を持ってる私たちは、すっごく贅沢だなって!」


 彼氏として、今すべきことは心配? 黙り続けること?

 そんなわけがない。


「俺も!」

「!」

「俺も未仔ちゃんの言う通りだと思う! うん……っ! 俺たちは贅沢な体験ができる幸せ者たちだ!」


 大好きな彼女が、ここまで心を温めてくれたのだ。

 溢れ出る気持ちを我慢する必要などない。


 夏彦が目一杯の笑顔を返せば、未仔のクリッとした瞳が見えなくなるくらい表情が和らいでいく。笑顔と笑顔が合わされば、より一層な笑みが生まれてしまう。

 互いの考えが別々だからこそ仲の良いカップルや夫婦もいるが、夏彦と未仔に関しては一緒の考えだからこそ、仲睦まじくあり続けるのだろう。

 贅沢な幸せ者たちは、特権である思い出を共有していく。


「未仔ちゃん、あのブランコで靴飛ばし大会したの覚えてる?」

「勿論っ。ナツ君の飛ばした靴が、散歩中の大きなワンちゃんに取られちゃったんだよね」

「そーそー! フリスビー遊びと勘違いしたみたいで、スニーカー咥えたまま俺へとタックルしてきてさ!」

「そうそうっ! ナツ君、宙に浮いちゃうくらい吹き飛んじゃったんだよね!」

「あのとき、『あ……俺、死んだ……』って本気で思ったよ!」

「私も! 『ナツ君がワンちゃんに轢かれちゃった……?』って本気で青ざめちゃった!」


「ははははは!」「ふふっ……!」


 衝撃的な事件も、今となっては笑い話。

 それは何気ない話も変わらない。


 四葉のクローバー探しをしていたら、未仔が五葉を見つけてしまったり、

 できもしない縄跳びの三重飛びに夏彦が挑戦して、足をぐねってしまったり、

 鍵を失くした新那のために公園中を3人で探し回ったが、ランドセルの中にしまっていたのを忘れていただけだったり。


 同じような公園や広場で、似たような遊びや経験をした。

 けれど、1つ1つの土地には、違った思い出が詰まっている。


「私たちが今座ってるベンチの下から、仔猫が出てきたのは覚えてる?」

「あ~、あったあった! 白い仔猫だったよね」

「うんっ。擦り寄ってきて可愛かったよね。にゃ~~んって」

「!」


 思い出に浸っていた夏彦だが、彼女の猫真似の愛くるしさにハートをズッキュン。


「も、もう1回! もう1回鳴いてみて!」

「??? にゃ~ん?」

「3回連続短めに!」

「にゃん、にゃん、にゃん?」

「今度は長めのを――、」


 余りにも夏彦の催促がしつこかったから?


「にゃ~~~ん♪」

「み、未仔ちゃん!?」


 否。

 夏彦の期待に応えたかったから。

 そっちがその気ならと、未仔猫、夏彦の膝へとダイブ。そのまま、膝枕攻撃を決め込む。


「にゃん、にゃん、にゃ~~~ん♪」

(か、かわええ……!)


 ねんねんころりとミコニャンニャン。

 夏彦の膝に、頬をスリスリとマーキングしたり、喉を鳴らす代わりに鼻歌を歌ったり。 

 小柄な身体を駆使して、未仔はスキンシップに勤しみ続ける。


 仔猫を演じるのは少々恥ずかしいのか、大好きな彼氏に膝枕できるのが嬉しいのか、はたまた、彼氏に自分の髪を愛撫されるのが落ち着くのか。

 きっと全部なのだろう。


「こうやってナツ君に沢山甘えられるのも、お散歩デートの特権だよね♪」

「あはは……。俺としても、最高の特権としか言いようがないよ」


 思い出話と同じくらいの特権に気付かされ、夏彦の表情は緩むばかり。

 幸せは止まることを知らず。


「っ!」


 夏彦の鼓動がさらに早まってしまう。

 自分の膝でくつろいでいる彼女が、ゆっくりと手を広げてきたから。

 まるで、「いーよ?」と言わんばかりに。


 お誘いを受ければ、行動はただ1つ。

 夏彦、手を広げる未仔へとゆっくりと近づいていく。

 そして、唇を交わし合う。


 夕焼けに染まる静かな公園は、2人のためだけにあるような。

 まだまだスマートにはできないし、恥ずかしさも感じてしまう。けれど、未仔を好きだと思う気持ちは日々募るばかり。今できる最大の愛情表現で、夏彦は未仔を感じ続ける。


 キスをし終え、顔を離せば、


「えへへ……。今日はメロンパンの味だね……♪」

「う、うん……。すっごく甘い」


 メロンパンが甘いのか、未仔が甘いのかは分からない。

 分からないので、夏彦はもう一度、未仔を手繰り寄せる。







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久々の未仔登場。

そして、丸々1話分使ってイチャイチャ&糖度マシマシ。


この作品ならではのストーリーをお届けしましたʅ(◔౪◔ ) ʃ



【雑談】

ここ最近、受信ボックスが『おっぱい揉みたい~』の件名ばかりに埋め尽くされています。

上から下まで、おっぱいまみれ。

僕としては幸せの一言なのですが、万が一、隣の人に見られた日にゃ……。

\(^o^)/


スリルある毎日を楽しんでおります。



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