33話:新事実 PART2

 夏彦があまりにも真剣だったからか。はたまた、夏彦の言っていることが事実だからか。

 HRまで少しだけ時間があることから、夏彦と草次は教室からベランダへと移動する。


 開いた窓からはクラスメイトたちの喧噪が聞こえてくるが、中にいるよりはずっと互いの声が聞き取りやすい。

 青々とした空を眺めることなく、草次は単刀直入に尋ねる。


「で、何で理由が別にあるって思ったんだ?」

「だって、草次の両親って土日は休みなんだよね?」

「? ……確かにそうだけど、そんな話した覚えないぞ」

「話してなくても大体分かるよ。奏さんがこの前、『平日は私たちでミッちゃんとサッちゃんの面倒見てる』って言ってたし」


 疑問から驚きへと表情を変える草次に、夏彦は続ける。


「土日は両親たちが面倒見てるってことでしょ。となれば、草次は基本フリー。にも拘らず、俺や未仔ちゃんとのWデートとか、塩谷や逆瀬からの誘いも断る。何か裏があるとしか考えられないよ」

「……。お前って、小さいことに気付くの得意だよな」

「人を小姑みたいに言うの止めてくれません……?」


 空気を読み過ぎる故に研ぎ澄まされた洞察力は、お人好しな男の特技といっていい。

 今の今まで、学校生活に馴染むため、平々凡々な自分を全うするために、人々の顔色を夏彦は窺い続けてきた。

「今は喋らないほうが良いな」とか、「困ってるのかな? 俺に何かできることはないのかな?」とか、「誰もしたくないなら俺が立候補しよう」とか。

 自分でもウンザリするぐらいのキョロ充っぷり。


 しかし、1人の少女との再会によって、夏彦の価値観は大きく変わった。自分の行動に自信を持てるようになった。


 そう、未仔だ。


「ナツ君は人の気持ちを誰よりも汲むことができる」と、とびっきりの笑顔で言ってくれるのだ。

 大好きな未仔の言葉を否定なんてできないし、仮に違うとしても、彼女が想う理想像を目指すに決まっている。

 だからこそ、距離の計り方が難しい友にも臆せず歩み寄りたい。


「彼女の奏さん、家族のミッちゃんやサッちゃんよりも大切な用事って一体何なのか教えてくれよ」

「……」


 夏彦の熱っぽい眼差しを浴び続ければ、草次は大きくため息づいてしまう。

 そして、そのままベランダの手すりをゆっくり握り締めると、か細くも呟く。


「……誕生日」

「へ?」

「誕生日だからバイトしてんだよ」

「……へ?」


 何ギレなのだろうか。


「~~~っ! もうすぐ奏の誕生日なんだよ! だから、プレゼント買うために短期バイトで金貯めてんだって!」

「ええっ!?」


 予想外すぎる発言に夏彦が素っ頓狂な声を上げる。

 衝撃の真実もさることながら、『あの』草次が、耳が真っ赤になるくらい、息が乱れるくらい恥ずかしがっている。カメラに収めたら、草次ファンたちに高値に売れること間違いなしのレア顔。


 夏彦はハッとする。


「彼女よりも大事な用事じゃなくて、彼女を喜ばせるための用事ってこと?」

「……そうだよ」

「昨日、駅前の雑貨店で足を止めてたのって、奏さんに渡すプレゼントを探してたとか?」

「……悪いかよ」

「秘密にしていたのって、面倒なんじゃなくて恥ずかしいから――、」

「お前もう黙れ!」


 これ以上喋ったら殺すと、草次が夏彦の頬を力いっぱいつねる。

 痛いことは痛いのだが、つねられればつねられるほど、睨まれれば睨まれるほど笑みが零れてしまう。大人っぽいはずの草次が、あまりにも可愛すぎるから。

 そんなことは口が裂けても言えないのだが。


「いいか? このことは絶対誰にも言うなよ?」

「りょ、了解!」

「奏は勿論、琥珀には絶対だからな……?」

「も、勿論ですっ!」


 関西女に機密情報が流れれば、どうなるかくらい夏彦にも容易に分かる。


「草次が彼女にサプライズ? ケラケラケラ! 行動イケメンすぎやろ! って、元からイケメンやないか~~~い! ケラケラケラケラ!」


 何と分かり易い悪友なのだろうか。


「くそ……。誰にも言うつもり無かったのに……」


 自分でも柄にもない行動と分かっているだけに、草次は愚痴ることしかできない。

「もっと打ち明けてくれていいんですよ?」などと言えば、頬を千切られるだけでは済まされないだろう。


「何か、考えれば考えるほど腹立ってきたわ」

「ははは……。申し訳ない……」

「お前も働け」

「へ?」

「お前も一緒にバイトしろ」

「…………。ええっ!?」


 まさかの労働の強制。







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次回、久々に彼女降臨。

イチャイチャ増し増し。


【雑談】

発売日の告知もでき、ようやく『おっぱい揉みたい~』が書籍化するんだなぁと、しみじみ思う今日この頃。



おっぱいフレンズからの「発売おめでとう」という温かい言葉も大変ありがたいです。


「アマゾンでポチる際、『おっぱい揉みたい』だけの検索ワードだと、成人向けの警告が出た」


といった情報には、思わず検索しちゃいました。

「あ。ほんまやん……」となっちゃいました(笑)



書店で買うのが恥ずかしいフレンズたちは、ネット予約推奨(☝ ՞ਊ ՞)☝

店舗特典のSSもネット通販でGETできるっぽいので、そこら辺の告知も許可が下り次第させていただきまっす。



今後もマイペースに更新していきますので、よろしくどーぞʅ(◔౪◔ ) ʃ

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